「ル・コルビュジエの家」監督作。
やっぱりこのコンビ、おもしろい!
「笑う故郷」71点★★★★
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アルゼンチンの作家ダニエル(オスカル・マルティネス)は
ノーベル文学賞に輝いた有名人物。
しかし、それから5年たっても
彼は1本も新作を発表できずにいた。
そんなダニエルに故郷の小さな町から
「名誉市民にしたいので、ぜひ式典に出席して!」と知らせがくる。
すべての招待を断っているダニエルだが
ふと、40年ぶりに故郷に帰ってみる気になる。
だが
そこで彼を待ち受けていたものは――?!
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故郷を捨てたノーベル賞作家が
40年ぶりに帰郷することで
巻き起こる騒動を描いた作品。
「ル・コルビュジエの家」監督コンビで
あの映画、めっさおもしろかったんで期待していましたが
期待どおりでした。
この、人の心を遠慮なく描くズケズケさ(笑)。
誰もがルーツという重さから逃れることはできない、ということを描いてもいて
昨日の「サーミの血」と
微妙に被るところも、興味深い。
そして
「あ~あるある、こういうこと」「あ~いるいる、こういう人」という
描写力が優れているんですねえ。
故郷を捨てて成功した
皮肉屋で反骨な主人公ダニエルに
正直、序盤はなかなかノレなかったんですが
中盤~後半、グンとおもしろさが加速する。
というのも
明らかに高慢でイヤな男なダニエルと
彼を「名誉市民」と崇める無邪気な地元の人々の構図が
映画が進むにつれて次第に変化をきたしていくんですね。
「久しぶりに帰ると、なーんかやっぱり故郷っていいよな」とか
一瞬思う気持ちが
地元の人々の粗野で“文化的でない”さまに触れて
「ああ、やっぱり……」となる(苦笑)
視点の肩入れ具合が逆転するんですよ。
「ブルックリン」のシアーシャ・ローナンをすごく思い出したけど
自分自身を振り返っても、なんか共感できるというか(笑)
故郷、田舎との複雑な関係、感情を
この映画はうまく突きつけてくる。
ただ、さらに、この映画には笑いがあるんです。
そこがいい。
主人公のかっこ悪さを笑うもよし、
そこにかつての自分を見て失笑するもよし。
故郷って、ルーツってなんだろう?と
いろいろ思ってしまうのでした。
★9/16(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
「笑う故郷」公式サイト