ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~

2012-12-20 23:34:08 | さ行

もっとベタかと思ったのですが
意外に拾いものでした。


「シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~」72点★★★★


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若きシェフのジャッキー(ミカエル・ユーン)は
いわゆる“料理オタク”。

有名シェフの料理を完璧に記憶しているが、
しかし勤め先の大衆レストランで
三ツ星料理を出してしまうような不器用さでクビの連続だ。

そんな彼が偶然、
憧れの三ツ星シェフ(ジャン・レノ)と出会い――?!

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85分、サクッと楽しめて
味もしっかりしてる、美味しいフレンチ・コメディ。

テンポよく、多少の“はしょり”があっても、
「まずはおおらかに、楽しませたい」という作り手の気風が伝わってきます 。


軽快な描写のなかにも料理界の事情や悲喜こもごも
――伝統を維持するのか、流行を追うのか
その料理には、人真似じゃない創作性があるか――などがスラスラと描かれる。


思ったほど料理シーンはメインじゃないんですが、
シュヴァル・ブラン61年モノとか
ペトリュスとか(えっ、50万円とかするの?!)とか
有名ワインのシーンもあり

まあ食いしん坊にはたまりません(笑)


それにしても
エル・ブリブームを皮肉った
試験管やら液体窒素やらの「分子料理」には、笑っちゃいました。
キューブになったカモ料理てどーなの(笑)

年末年始、ぽっかり空いた時間に
サクッと一口おすすめです。


★12/22(土)から銀座テアトルシネマほかで公開。

「シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~」公式サイト
コメント (2)
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もうひとりのシェイクスピア

2012-12-19 23:11:48 | ま行

完全に洗脳されました。
そうかシェイクスピアって別人だったのか・・・。←単純。


「もうひとりのシェイクスピア」71点★★★★


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史上最高の劇作家シェイクスピアは、
自筆の原稿を何一つ残していない。

実は彼のほかに、本当の作者がいたのではないか――?!
という説に基づいたお話。

16世紀末のロンドン。

売れない劇作家ベン・ジョンソン(セバスチャン・アルメストロ)は
ある男から奇妙な依頼を受ける。

その男とは
由緒ある伯爵家のエドワード(リス・エヴァンス)。

彼は自分の書いた芝居を、
ベンの名で上演して欲しいという。

わけもわからず引き受けたベンだが
彼の芝居は一般大衆に大当たりする。

しかし作者として名乗り出たのは
しがない役者である
ウィリアム・シェイクスピア(レイフ・スポール)だった――。

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「シェイクスピア別人説」は
フロイトやチャップリンも支持したとされ、かなり信憑性あるそうです。

しかし
まったく知らなかったんで
いや~すっかり洗脳されました(笑)

「インデペンデンス・デイ」などの
ローランド・エメリッヒが監督でけっこう意外な感じですが、

監督は10年前にこの説に出会って、
ずっと温めていたそう。


まあとにかく
話が見事に作られてるんですよ。

ただし、
やたら込み入っているので、最初の1時間は
正直退屈です。


本物のシェイクスピア、その媒介役、さらにいままでシェイクスピアとされてきた男……と
三重のウソを構成する登場人物たち。

そこに
エリザベス女王の政治と情事の秘密が絡まるという、
めちゃくちゃ手の込んだストーリーなんですね。
時代背景の知識も多少は必要だし、
なにより、とにかく人物整理がひと苦労だった(笑)

しかし、あまりわからなくても
ラストまで頑張れば
まさしくシェイクスピアかギリシャ悲劇か!というほど
カタルシスに満ちた物語が味わえることは保障します。


最初の「??」を乗り越えられるかが勝負ですね。

しかし
これ、ホントなんだよねえ・・・。←信じてる。


★12/22(土)からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「もうひとりのシェイクスピア」公式サイト
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理想の出産

2012-12-17 23:35:20 | ら行

子ナシが見てもおもしろく
出産経験者におすすめしちゃいました。

いい度胸?(笑)


「理想の出産」73点★★★★

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フランス、パリ。

妊婦のバルバラ(ルイーズ・ブルゴワン)は
アパルトマンで暗~くなっていた。

数ヶ月前、ニコラ(ピオ・マルマイ)と恋に落ち
同棲→妊娠。

しかしニコラは
映画監督志望のフリーターで、経済的にも超不安。

バルバラは大学の助教授を目指して
論文を書かなきゃならんのだが、ホルモンバランスの乱れのせいで
全然集中できない。

それでも確実に
出産の日はやってきて――?!

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独身&子ナシでもなぜか
共感できて笑えるフランス製・妊娠ムービー。

お国柄もあるんでしょう
描き方が“女女”してないし、
主人公のキャラもサッパリ。

軽やかで、笑いも多い。

しかし
どうしようもない女の生理だけはしっかり捉えているから
共感できるんでしょうね。

女性作家が自身の妊娠・出産経験を描いた
ベストセラー小説が原作だそうで

「妊婦って、マジ大変なのよ」の中身が
ここまでキチンと描かれた映画って初めてじゃないか?

しかも出産までの話じゃなく、
出産後がしっかり描かれているのが
ポイント高い。


「妊娠したの」っていうと
まー世の中って無条件に花柄のパステル~な感じで
「おめでとう!」ってなるけど

現実はちっともメルヘンじゃなく

ケンカばかりな母親とのギクシャクも
解消されるわけじゃなし、

仕事にも集中できず
キャリアまで台無しに――?のピンチ。


出産後は
赤ん坊中心の生活で母子一体化し
男(ダンナ)との関係がビミョーになったり(苦笑)

不感症になったり――とか
妊娠を描いた最近の本とか漫画にもよくあるもんね。

彼氏との出会いがビデオ屋だったり、
映画好きには「んふ(笑)」となるシーンもありました。

まあ男性におもしろいかは保障できないけど(笑)
女性にはおすすめできますねー。

やはり妊婦のホンネ満載の
「恋愛だけじゃダメかしら?」と連動企画で
どちらかを見て、半券を持ってくと
もう一方が1500円で見られるそうですよー。


★12/22(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「理想の出産」公式サイト
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レ・ミゼラブル

2012-12-16 23:23:43 | ら行

この冬、一番の注目作でしょ。

「レ・ミゼラブル」68点★★★☆


*************************

1815年。フランス、ツーロン。

パンを盗んだ罪で19年服役した
ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は
監督官(ラッセル・クロウ)から仮釈放を言い渡される。

しかしムショ帰りの彼に、世間の風は冷たく
バルジャンの心はすさむばかり。

ある司教の助けで
ようやく宿にありついた彼は
夜中のうちに、教会から銀の食器を盗んで逃げ出す。

翌朝、捕まったバルジャンに
司教は驚くべき対応をするのだった――。

*************************


物凄いスケール感と高揚感ある
超ド級のミュージカル。


話もうろ覚えだったので「ああ、こういう話だっけ」と新鮮で

ミュージカル素人のワシでも
さすがに聴き覚えのある曲多く

俳優たちもみな歌うまく(ラッセル・クロウは少々苦戦?笑)

素晴らしいんだけど

ホントに“マジミュージカル”なんで
そこまで入り込めなかった。

歌、長いな~とかちょっと思ったし
普通のドラマのほうがワシ的にはうれしかったかも。


しかし
クリスマス公開だし、華やかな娯楽作と思いきや、
貧困の描写はそこまで必要か?というほどのリアリズム。

特にアン・ハサウェイは
その激ヤセっぷりとともに、かなりの悲壮感です。

仕事を失うことの怖さや、
一度堕ちてしまうと再生が難しい社会・・など
描かれているのは、いまにダブる社会事情。

「いま、こんな時代だからこそ!」という
意図なのかもしれないけど

なんだか「明日は我が身」的で
どうにも気分が沈んでしまった(失笑)


ただ舞台のファンのかたなどはハマると思う。

小さめの試写室で見たのですが
エンディングの曲をかすかに一緒に口ずさんでる方もいたし
あちこちからすすり泣きも聞こえました。

アマンダはキレイなソプラノだけど
思ったより印象薄く、

意外に主役でない脇キャラ(エポニーヌ役のサマンサ・バークス)が
心に残ったりしました。

あと雨粒の見えない雨のシーンが印象的だった。
細か~~い霧状なのかしらん。
どうやって撮っているんだろう・・・。


★12/21(金)から全国で公開。

「レ・ミゼラブル」公式サイト
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グッモーエビアン!

2012-12-15 22:20:28 | か行

タイトルは
「グッドモーニング・エブリワン!」が
主人公(大泉洋)にはこう聞こえたという(笑)

「グッモーエビアン!」49点★★★

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中3のハツキ(三吉彩花)は
名古屋市内のアパートで
母アキ(麻生久美子)と2人暮らし。

アキは17歳でハツキを産んでおり
二人は友達みたいな母娘だ。

そんな二人のそばに常にいるのが
パンクロッカーのヤグ(大泉洋)。

家族のように暮らしてきた3人だったが
しかし年頃のハツキは
ノーテンキな大人たちに苛立ちが募る日々で――?!

************************

まず
大泉洋×麻生久美子って
主役キャスト渋すぎないか(笑)

まあ、ワシは好きなんですけどね大泉洋氏。

しかし中身はうーん
なんか20年前の児童向け小説みたいな感じ?

無職のダメロッカー(大泉洋)に
17歳で娘を産んだ母(麻生久美子)。

ゆるい大人に囲まれ、しっかり者にならざるを得ない
カワイイ中3の娘(三吉彩花)――と
ベースがありがちすぎる凸凹家族像。

いまこんな状況を描こうとすれば
すわ、子どもの貧困?義父の虐待?とか
果てしなくシビアになりそうですが

そこを徹底的にお気楽に
「さむい」ほどの笑いでやりきろうとしていて
その姿勢はいいんですが
結局、すべってるんだよなーという。(苦笑)


ただ、主演の女の子は可愛くて
主観でしか物事を考えられない中学生が、
視界を広げる成長物語として、形にはなっている。

彼女を完全主役にして
青春ストーリーに徹すればよかったのに。

友人役の少女(能年玲奈)も存在感ありで、
え?そうか「カラスの親指」に出てた彼女?!
うわ~わからんかったわー。

監督は女の子発掘が巧いのかも。


しかしラストのライブシーンは
どう考えてもいらないだろ?(笑)
大泉洋ファンへのサービスなのか?

年の近い身としては
ステージでジャンプする
彼の翌日の腰の具合が心配でしかたありませんでした(苦笑)


★12/15(土)からテアトル新宿ほかで公開。

「グッモーエビアン!」公式サイト
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