カミュのバックグラウンドって
初めて知りました。
「最初の人間」67点★★★☆
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1957年。
40代半ばの作家(ジャック・ガンブラン)は
故郷アルジェリアに向かう。
当時、仏領アルジェリアでは
独立を望むアルジェリア人と、フランス人の間で
激しい紛争が起きていた。
そんななか、作家は
自身の少年時代を回想する。
貧しくも、光に溢れていた時代
アラブ人の友人との邂逅……
そして大人になった作家は
「アラブ人もフランス人も共存すべきだ」
と発言する。
しかし、このメッセージは波紋を呼び――。
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『異邦人』で知られるノーベル賞文学賞作家アルベール・カミュ。
46歳で交通事故で亡くなった彼の
カバンから見つかった未完の遺稿であり、自伝的な同名小説を
「家の鍵」(04年)の
ジャンニ・アメリオ監督が映画化したものです。
実に知性的な作品ですが
正直「ガツン」とくるタイプではないんですね。
「家の鍵」もそうだった気がする。
でも、すごく深みがあるのはわかる。
この深みを、知りたいと思う。
そんな映画です。
ワシ、原作は未読なんですが
未完だけあって、
もっとまとまりがなく、やや読みにくい作品だそう。
映画はそんな原作のエッセンスと
カミュ自身の話を混ぜ込んでいるので
作家自身を知るような感触もあって、見やすい。
さらに映画的には
少年時代の描写が見事。
おっかない祖母に折檻されたり、いたずらで大人を困らせたり
大人にとっての淡い記憶を
みずみずしく思い出させるような感覚が愛おしい。
子どもがふとした出来事で、
人生の真理(――例えば正義や正直さについて)を実体験のなかで学んでいく
その「瞬間」が見事に描かれている点も
よかったですね。
よーく噛むと
いい作品かと思います。
★12/15(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
「最初の人間」公式サイト