ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ファインディング・ドリー

2016-07-16 15:46:52 | は行

最近、懐かしい映画の続編が多くて
「え!あれから20年??」
「え!13年前?!」

作品よりも、そのインパクトがでかい件(笑)



「ファインディング・ドリー」3D 吹き替え版 68点★★★★



************************************


人間にさらわれた息子・ニモ(声・菊地慶)を探し出した
父マーリン(声・木梨憲武)の冒険から1年後。

なんでもすぐに忘れてしまうドリー(声・室井滋)は
二人と一緒に幸せに暮らしていた。

が、ある出来事から
ドリーに昔の記憶がよみがえる。

それは、両親と一緒だったころのこと――。

「家族を探しに行く!」と旅に出ようとするドリーを
慎重なマーリンは止めようとするのだが・・・。


************************************


前作「ファインディング・ニモ」(03年)から13年(!)ぶり
あの忘れんぼうのドリーが主役になったアニメーション。

めちゃくちゃ期待、高まります。


で、実際のところ。
クオリティは期待通りだし、
小さい頃のドリーが登場するのもカワイイ。

新キャラのタコのハンクも
いい味出してて
十分に楽しめる作品だと思うのですが

あえて、ワシが気になってしまった点をあげてしまうと・・・

(1)まず、ニモたちの造形が
「こんなにリアルだったっけ?」という違和感。

技術の進歩なんだろうけど
毛穴(魚肌?)のボツボツまでしっかり見えて
質感も生き物というより、触ると硬そうで、ビニールっぽい感じ・・・?(笑)

水の描写も、ものすごく変化に富んでいて
天然のサンゴ礁、下水道など
透明感の違いも実に細かい。

でも、その分
キレイな海のシーンばっかりじゃないってことで。

まあ、このリアリティ具合は単に鑑賞者の
好みかもしれません。


(2)ストーリーの“品行方正”さ。

前作にはもっとシニカルなテイストがあった気がする。
(子どものかわいくなさとかね)
すっかりそういう雰囲気じゃないのが寂しい。

かと思えば、なぜか執拗に“はぶんちょ”にされるアシカが出てきたり
笑いのツボがよくわからない。


(3)ドリーの忘れん坊ぶりに、本気で「大丈夫?」と思ってしまう。

前回は笑える範囲だったんだけど、
なんだか今回は
無邪気な「忘れんぼうさん」と思えないというか
「だ、大丈夫?」って(苦笑)。

自分が歳取ったんでしょうね。
いろんな疾患を想像できちゃうからでしょうか。

あれから13年。
素直じゃなくなった自分・・・。
ああ、歳取ったなあという体験でした。

でも
おまけの短編ムービー「ひな鳥の冒険」は
超!かわいかった!(笑)


★7/16(土)から全国で公開。

「ファインディング・ドリー」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハリウッドがひれ伏した銀行マン

2016-07-15 23:06:52 | は行

この人がいなければ
「ターミネーター」も「眺めのいい部屋」も生まれていなかった!


*****************************


「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」70点★★★★


*****************************


1980年代、
「パラマウント」や「20世紀フォックス」などの
メジャースタジオでなく
貧乏な独立系スタジオに融資を始め、

現在も受け継がれている映画作りの仕組みを作った
オランダ人銀行家フランズ・アフマン氏のドキュメンタリー。


もともと映画好きだった氏は
「プリセールス」という
作品の配給権を完成前に販売し、その対価を事前に受け取り、
それを制作費に当てることで、
お金のない小さなスタジオでも、映画が作れる!という
システムを開発したんです。

これによって
「ターミネーター」(84年)や
「ランボー/怒りの脱出」「眺めのいい部屋」(85年)
「薔薇の名前」「プラトーン」(86年)など
名作が生まれることになったんですね。

まさに“ハリウッドがひれ伏す”存在になったわけですが、
氏はそれでもずっと
品行方正な“いちビジネスマン”であり続けた。


そんな“すごい人”の人生を
彼が50歳のときに生まれた娘が
記録した映画なんです。


映画は父へのインタビューで始まるんですが、
センチメンタルさはなく、
対象へのと距離がしっかりある。

尊敬できる“成功したビジネスマン”の顔を客観的に写し取っていて
とてもいい。

どうしたって
砂田麻美監督「エンディング・ノート」を思わせますしねえ。


ハリウッドの裏側って
金や欲望、ドラッグなどに彩られることが多いけど、
その渦中にいて、ずっと自分のスタンスを持ち続け、
誰もに「品がある人物だ」と言われるのって
限りなく、カッコイイなあと。

映画関係者に限らず、
働く人たち誰もに「こうありたい」と思わせる
お手本かもしれません。


★7/16(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生きうつしのプリマ

2016-07-13 23:54:51 | あ行

「ハンナ・アーレント」監督×女優が再タッグ。


「生きうつしのプリマ」73点★★★★


*******************************


ドイツのクラブで歌うゾフィ(カッチャ・リーマン)は
ある日、父(マーティアス・ハービッヒ)に呼び出される。

父は切羽詰まった様子で
ネットのニュース記事をゾフィに見せる。

そこには1年前に亡くなった最愛の母に
生き写しの女性が写っていた。

彼女の名はカタリーナ(バルバラ・スコヴァ)。
有名なオペラ歌手だという。

「どうしても、彼女のことが知りたい」と父に懇願され
ゾフィはしぶしぶニューヨークへ飛び、
彼女の公演を見ることにするが――?!


*******************************


もはや伝説といえるほど
単館系久々の大ヒットとなった「ハンナ・アーレント」(2013年)

その監督と、主演女優バルバラ・スコヴァが
再タッグを組んだ話題作です。

父親が偶然見つけた
死んだ母親に生き写しのオペラ歌手。

一体、彼女は何者なのか…?!
それを娘が探っていくという、実にそそられるミステリー。


まずは
バルバラ・スコヴァが歌い上げるオペラといい、
やはり歌手という設定の
娘役のカッチャ・リーマンといい、

主演二人の歌のうまさにびっくり!



マルガレーテ・フォン・トロッタ監督は
けっこう独特のリズム感を持った人で、

本作もシーン変わりが唐突だったり、
いい意味でサバサバ、サクサクッとしてる。

ミステリーなので
あまりにサクッと進まれて
「え?シーンひとつ飛ばした?」くらいに
アタフタするところもありましたが(笑)

感傷的でなく引きずらない、という感じが好きでもある。

それに「ハンナ~」もそうだったけど
家やインテリアのセンス、空間使いがうまい!
引っ越したくなります。


それにしても
実はこの話、監督の実体験から来ているんだそうです。

ドラマチックだなあ。


★7/16(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「生きうつしのプリマ」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

AMY エイミー

2016-07-11 23:53:13 | あ行

これは見応えありましたぞ。


****************************


「AMY エイミー」77点★★★★


****************************


2011年に27歳で世を去った
歌姫エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー。

第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作です。

128分、ドキュメンタリーにしては長尺だけど
それだけのことはあるな、と。


グラミー賞を5部門受賞した彼女の
歌もたっぷり聴かせながら
その人生を描いていきます。


こうして聞くと
その歌声の素晴らしさに改めて感動するんですが

やはり衝撃的なのは
「才能ある人が破滅していく」、いや薬物に「壊されていく」
その過程が詳細に記録されていること。

彼女を喰い物にしたのは誰か、悪いのは誰かも
しっかり映っているんですよ。


その元凶となるのは、ハッキリ言って
元ダンナと、彼女の父親。

その
すべて明らかになっていることに驚きます。


エイミー・ワインハウスの奇行は
ずっと現在進行形で
日々パパラッチのネタだっただけに
関係者の行状も、全てのカメラに捉えられ、
言い訳しようのない状況だったんでしょうね。


最近だとビーチ・ボーイズの話「ラブ&マーシー」のように
ミュージシャンとドラッグにまつわる“実話”は
たくさん映画になってるけど

いままで“証言”としては明らかにされてきた
「有名人の転落」「破滅への道のり」が
ここでは「ドキュメント」のケースとして、記録されている。
それがすごい。
「やっぱりそういうことだったのか・・・」と学ぶこと多し。


さらにホームビデオや、本人の近影から
人としての繊細さ、愛への異常な依存性も見えてくるもんだから
つくづく
生き急いだことが残念でなりません。


デビュー当時から
その歌のうまさから
「老成している、成熟している」
あらゆる人に言われ続けてる映像を今見ると、

それが
“予言”とも取れてしまうのが、つらいですねえ。


★7/16(土)から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国で公開。

「AMY エイミー」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シング・ストリート 未来へのうた

2016-07-09 15:44:47 | さ行

これ好きだ!2回観ちゃった(笑)


「シング・ストリート」81点★★★★


***************************


1985年、
大不況下のアイルランド・ダブリン。

14歳のコナー(フェルディア・ウォルシュ・ピーロ)はいま
人生のどん底にあった。

父の失業で、公立の荒れた学校に転校するハメになり、
初日から校長のイジメに遭い、
さらに不良に目をつけられてしまう。

そんなある日、学校の前で
大人びた少女ラフィーナ(ルーシー・ボイントン)に
一目惚れしたコナーは

バンドを組んで、彼女を
ミュージック・ビデオに出演させようと決意するが――?!


***************************



「ONCE ダブリンの街角で」「はじまりのうた」
ジョン・カーニー監督作品。

ずっと音楽を題材にしている監督の
自伝的なストーリーだそうで
餅は餅屋、じゃないけど、うまいですねやっぱり。


まずは
デュラン・デュランにa-haに、ザ・キュアーに・・・と
登場曲の懐かしさに悶絶(笑)

主人公たちが作る
バンドの曲も超グッド。


学校のはみ出し者たちが集まって、バンドを組み
ミュージックビデオを作り、
少年たちの成長、アドバイスをくれる良き兄貴・・・と

青春や友情のキラキラが詰まっていて
グッときます。


また彼らが作るミュージック・ビデオが
素人丸出しながら
「あったあった、こういうショット!」的な
当時の“ナウ”のツボを押さえていて、最高(笑)

掃除機ホースに口を突っ込んで
エフェクトかけたりとかも
抱きしめたくなるほど笑えました。


特に曲作りを担当する
エイモン君(マーク・マッケンナ)が80年代男子っぽい。好みだわ~。


系統からすると「ウォール・フラワー」とか、
昨年なら「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」にハマった方に
ぜひおすすめしたいです。


★7/9(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、シネクイント渋谷ほか全国で公開。

「シング・ストリート 未来へのうた」公式サイト
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする