ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期

2016-10-24 23:18:18 | あ行

これは見てよかった!

「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」73点★★★★


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前作(2005年)から11年。
43歳になったブリジット・ジョーンズ(レニー・ゼルウィガー)は
相変わらずのおひとりさま。

思いがけず元カレ・マーク(コリン・ファース)と再会するも
彼にはすでに妻がいた。

複雑な心境のまま
ロック・フェスに参加したブリジットは
見知らぬイケメン(パトリック・デンプシー)とノリで一夜をともにしてしまう。

だがその翌日。
彼女は再びマークと再会し
彼が離婚協議中だと知るのだが――?!


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レニー・ゼルウィガー=ブリジット・ジョーンズというくらいの
ハマり役のシリーズが
11年ぶりに復活。

さすがに
「恋に男に体重にダメなヒロインが
40代になった状況ってどうなの?」
思ったんですが

これはですね、見てよかった(笑)

まず
レニー・ゼルウィガー。
痩せた分、かなり老けちゃったのには驚いたけど
でも動き出せばやっぱりキュートさがある。

ドタバタや下ネタはさすがに抑えめになり
でもしっかり“女の本音”は冴えている。

それに
コリン・ファースがいい!
惚れ直しましたよ(笑)


生真面目なキャラだからこそ、笑いが生まれる
彼の持ち味も効いてるし
内気キャラだったのに
意外に積極的になられると「ドキッ」としたり(笑)。

なにより彼が登場すると、
がぜんブリジット・ジョーンズも映画も、生き生きするんですよ。

これが昔のよしみ、のよさかなあ。

結局「腐れ縁」じゃないけれど、
悪いところも知っていて、受け止めてくれる人っていいよね、とか

若い時はうまくいかなかった人とも、
ひと回りして、また始めれば、うまくいくかもしれない、とか。


そんな愛と相性、“時間の経過”というものを
ブリジット・ジョーンズと同じく11年を経過させた我々に
ちゃんと体感させてくれました。

もちろん初見でも楽しめるけど
シリーズ知っている人には
特におすすめです。


★10/29(土)から全国で公開。

「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」公式サイト
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インフェルノ

2016-10-23 23:13:56 | あ行

予告編を見て
「犯人を最初にバラしちゃって、どう見せるのかしらん?」と思ったけど
なるほど、こういうことね。


「インフェルノ」70点★★★★


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ハーバード大学の宗教象徴学者
ロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は
イタリア・フィレンチェの病室で目を覚ます。

彼はここ数日の記憶を失っており
担当医師のシエナ(フェリシティ・ジョーンズ)の問いかけにも
あいまいだ。

だが、そのとき病院に
何者かが教授を殺そうと忍び込んでくる。


シエナに導かれ、病院を抜け出した彼は
自分がある謎を託されていると知る。

それは
人類の半数を死に至らしめる
「ウィルス」拡散を止めるためのキーだった――。


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ロン・ハワード監督作、
「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続く
トム・ハンクス=ラングドン教授シリーズ第3弾。

このシリーズはすべて原作を先に読んだけど
今回は未読のまま、映画先にしました。

で、どうだったかというと。

小説もそうらしいですが
今回はラングドン教授が記憶を失っているところから始まるので
最初の10分はフラッシュバックがしつこくて
正直「見づらいなあ」と思ったんです。


でも
ラングドン教授が回復するにつれ、
やっぱりハラハラに引き込まれて
2時間集中しました。

毎回、若い美女とパートナーになってる教授だけど
この展開は初めてだし

犯人が最初からわかっているなかで
「人類滅亡までの1日」のタイムリミットを
よく見せたと思いました。


ただ名画や古典に隠された
謎解きの見せ場は少ないかなあ。

昨日、「世界ふしぎ発見!」(TBS系)で
本作の舞台となったフィレンチェの美術紹介をしていましたが
今回「絵画ネタや謎解きが足りない!」と不満の方には
より詳しく知るならこの映画を併せてみるとよさそうです。

「フィレンツェ,メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館」



★10/28(金)から全国で公開。

「インフェルノ」公式サイト
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奇蹟がくれた数式

2016-10-20 23:56:21 | か行

苦手科目だからこそ
理数ネタの映画は大好き。


「奇蹟がくれた数式」70点★★★★


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1914年。
イギリスの植民地であるインドで暮らす
ラマヌジャン(デヴ・パテル)は
数学の才能に溢れた青年。

彼はケンブリッジ大のハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)に
自らの数学の“発見”について手紙を送る。

彼の才能に驚いた教授は
ラマヌジャンを大学に呼び寄せるが
彼は「ひらめき型」の天才だった。

しかし数学には「証明」が重要。

教授はラマヌジャンに
辛抱強く「証明せよ」と教えるのだが――?!


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アインシュタインに匹敵する、と評される
実在した天才インド人数学者の物語。


映画はその彼の研究を世に出した
ハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)の回想、というスタイルで
進んでいきます。


ワシは理数が全く不得手だから、
もともと数学ネタは好きなジャンル。
この手の話は何をしているのかわからなくても
「どこがすごいのか」をどれだけ描写できるかがカギですが、

この映画では、数学がよく「芸術」に例えられる
その意味がわかったのが大きな収穫でした。

教授がラマヌジャンの才能をたたえる演説が必聴で
「数式はすでに存在し、それを神が、彼のような人物に託すのだ」――って。
なるほどねえ!と思いました。


“コミュ障”なハーディ教授とラマヌジャン青年とのすれ違いや悲運は
もどかしすぎて、若干イラっとすることもあるけれど

実話の重みもあり
映画としては非常に正統派の作りでした。


しかしジェレミー・アイアンズは
天文学者に建築家、数学者――と
とにかく学者が似合いますなあ。


★10/22(土)から角川シネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国で公開。

「奇蹟がくれた数式」公式サイト
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ハート・オブ・ドッグ

2016-10-18 22:44:43 | は行

もっと“アート”かと思ったんです。
でもワシにはこれ、「映画」だった。


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「ハート・オブ・ドッグ」71点★★★★



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アーティストのローリー・アンダーソンが
2013年に亡くなった夫ルー・リードと飼っていた
愛犬ロラベルとの日々を通して
愛と死を綴るドキュメンタリーです。

冒頭、ローリーが描いた自画像から始まり、
彼女のナレーションと、美しい映像で
愛犬との日々が語られる。


個人的な内容のようでいて
9.11後のアメリカへの警鐘なども盛り込まれているのがさすがで
「映画」として、しっかり見応えがありました。


全編を貫くのは
「愛するものとの別れの儀式」。

この映画は、ルー・リードがまだ元気なときに撮り始められて
彼の死で、中断していたそうなんですね。
でも「後悔しないように」と友人に後押しされて
再開し、まとめたんだそうです。

「愛するものとの別れ」は
もちろんルー・リードのことでもあるんだけど
彼は映画にはほとんど登場せず

年老いていくロラベルの様子に
その思いが重ねられていく。

ああ、まだ、整理仕切ってないのかもしれない
そこが、また切ないんだけど(涙)


でも
チベット仏教を信仰するローリーは
「チベットの死者の書」をひもときながら
死との向き合い方、死にいく人や犬との向き合い方を
優しく、静かに、教えてくれているんです。

それを経て
切ないけれど、悲しみばかりじゃない、という
鑑賞後感が生まれる。

これ
けっこう、貴重な体験でした。


年老いて視力を失ったロラベルが、
キーボードを弾く様子なんて、たまらなく愛おしくて(笑)
さすがアーティストの子だなあと笑ったり。

誰もが向き合う「そのとき」への、心の準備の一助として
ぴったりな映画だなと思いました。


★10/22(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「ハート・オブ・ドッグ」公式サイト
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何者

2016-10-14 22:50:24 | な行



「桐島、部活やめるってよ」の
朝井リョウ氏、原作。


「何者」68点★★★☆


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大学生の拓人(佐藤健)は
ルームメイトで同級生の光太郎(菅田将暉)とともに
就活をスタートさせる。

そんなとき
拓人は同級生の瑞月(有村架純)と再会し
就活に燃える彼女のルームメイト、理香(二階堂ふみ)を紹介される。

“意識高い系”な理香から
「じゃあ私たちの部屋を“就活対策本部”にしよう!」と提案された拓人たちは
一丸となって就活を始めるのだが――?!


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いやあ
SNS時代の就活のしんどさが
マジでよ~くわかりました。

それだけでも、けっこう収穫かもしれません。


ここに描かれる就活の大変さは
実際に汗水垂らして、100社を回って・・・というのとはちと違う
(実際はそうだろうけど)。


「一緒にがんばろうね!」とか言っても
結局はライバルである学生同士の現実や、
ツイッターやFacebookなどSNSの時代こその
就活の苦しさ、怖さがメインなんですね。

「私は学生時代、こんなことをやってました!」
「友達、こんなにいます!」
「こんなに充実してます!」
そういうツールでアピールしないと、なんか負け、みたいな。

そこが、ヒヤリと怖い。

でもこれが現実なんだろうな。

いまでは企業の4割が(いや、実際はほとんどだと思う)
学生のSNSをチェックしてるっていうし
まあワシが人事部長でも
やると思う。ハッキリ言って。


そんな時代に、まだ「何者」でもない若者たちが
どうやって「自分」を演出していけばいいのか。

その迷いや大変さが、よくわかるし
その中でダークサイドに墜ちていってしまう主人公の気持ちも
わかるわ。

しかも
企業に自分が値踏みされるしんどさや
不採用の通知をもらったときの
自分の存在が否定されたような絶望感――

これは時代が変わっても、同じなんですよね。

そこがまた辛いつうか。


基本は若者向けの
共感&就活映画なんだろうけど
終盤に向かって
「ホラーか?!」となっていく展開も怖かったなあ(苦笑)


最後が尻切れっぽかったのが惜しいけど
“いま”を知ることができて、ありがたかったす。


★10/15(土)から全国東宝系で公開。

「何者」公式サイト
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