ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

search/サーチ

2018-10-23 23:56:02 | さ行

 

アイデアが傑出!

「search/サーチ」73点★★★★

 

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デビット・キム(ジョン・チュー)は

妻に病気で先立たれ、

高校生の娘マーゴット(ミシェル・ラー)と暮らすパパ。

 

思春期の娘とは、最近まともに会話もせず

連絡はFacetimeかメールだ。  

 

その日も娘に連絡を入れると

「今日は友達の家で勉強会。徹夜になるかも」とすげなく言われる。

 

が、翌朝からデビッドは

娘とまったく連絡が取れなくなってしまう。

 

娘を探すため、奔走するデビッドが目にしたのは

まったく知らなかった娘の一面だった――!

 

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サンダンス映画祭2018で、観客賞を受賞!

斬新!フレッシュ!と話題の映画です。

 

たしかに、これは斬新。

1時間42分、スクリーンに映し出されるのは

ホントにPCの画面の中のみ、なんだもの。

 

なのにこんなにスリリングなサスペンスが成立するなんて!

 

しかも展開も練ってあって

しっかり怖いんですわー。

 

27歳のインド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティ監督、

新しいツールを、それを使う理由と意味をちゃんと踏まえて、存分に利用してて

旧人類にも、やるう!と思わせるあたり、うまいです。

 

ただね

途中で、知らないSNS「ユーチャット」?ってのが出てきて、

「主人公の娘マーゴットは顔出してチャットしてるのに

相手がアイコンのみ、って、なんで?それで成立するの?」とか

よくわかんなくなった(苦笑)

 

でも、見終わったあと

大大先輩の映画評論家・渡辺祥子さんに

「あの本人の顔映像は、自分のPCのカメラに写ってたものが残っていただけで

会話はアイコンのみのチャットだったんじゃなーい?」と言われ

あーそうなのかー・・・・・・とか(だいじょぶか、ワシ!笑)

 

映像の転換スピードも速いし、

あと10年経ったらついていけるかしら・・・・・・と一抹の不安が。

いや、もうすでに、ついていけてない?!

 

★10/26(金)から全国で公開。

「search/サーチ」公式サイト

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テルマ

2018-10-20 14:39:05 | た行

 

やっぱこの冒頭、衝撃的だよね。

 

「テルマ」70点★★★★

 

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ノルウェー、オスロの大学に通うため

一人暮らしをはじめたテルマ(エイリー・ハーボー)。

 

引っ込み思案でなかなか友達はできないが

両親のもとを離れての大学生活をドキドキ満喫していた。

 

そんなある日、テルマに異変が起こる。

図書館で勉強をしていたとき

窓の外に真っ黒な鳥の群が飛び立ち、突然、発作に襲われたのだ。

 

助けてくれたのは、同級生のアンニャ(アヤ・ウィルキンス)だった。

 

大人びたアンニャと友達になったテルマは

彼女のアパートに遊びに行くようになるのだが――?

 

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ラース・フォン・トリアー監督の甥っ子で

「母の残像」(16年)ヨアキム・トリアー監督の作品。

 

はい、たしかに、ラース・フォン・トリアーの遺伝子、ありますね。

 

まず冒頭、

凍てつく北欧の森に、狩りにきた幼い娘と父のシーン、

「一体、なに?!」とめちゃくちゃ惹きつけられるオープニング。

 

 

無垢な少女に、異常に過干渉な両親、発作、ワケありっぽい過去、

そして少女の「目覚め」――と、ドキドキ素材が満載。

 

得体のしれない「力」の存在を、

音と空気の不穏な振動で感じさせる演出、

蛇、カラス・・・・・・などの暗示の不気味さがうまく

 

ヒロインも音楽もひんやり冷たく、

美しい北欧ホラーです。

 

 

欲をいえば、「芯」がちょっと弱いというか

結局は「抑圧からの解放」というところにオチるのかなあと思うと

あと一押し、ほしかった気もするけど

意外とラストの解釈もさまざまで、あとに残る。

 

異次元に閉じ込められる、的な感覚をプールの底で表現したシーンとか

新しい映像表現にも驚かされました。

いやあ、あのシーン、ホントに残るわあ・・・・・・。

 

★10/20(土)からYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。

「テルマ」公式サイト

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マイ・プレシャス・リスト

2018-10-19 23:53:36 | ま行

 

また新しいタイプの、空回りヒロイン誕生!

 

「マイ・プレシャス・リスト」73点★★★★

 

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主人公キャリー(ベル・パウリー)はIQ185の超天才。

ハーバード大を飛び級で卒業したものの、

周囲と話が合わず、コミュ力はゼロ。

 

仕事もせず、引きこもりの日々。

 

見かねたセラピスト(ネイサン・レイン)はキャリーに

「幸せになるためにするべきこと」のリストを渡す。

 

ペットを飼う、友達を作る・・・・・・

なんだかフツーのことに見えるが、キャリーにとっては一大問題。

 

そんな6つの課題をクリアすべく、

しぶしぶ行動を始めたキャリーだったが――?!

 

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ちょっと世間からズレてる

“空回り”ヒロインものは多いけど、

クレバーで道徳心もある、極めて「まとも」な要素が

なぜか「おかしい」ヒロインは珍しい(笑)

 

主人公キャリーの

飛び級でハーバード大卒という頭のよさと、

年相応な幼さのアンバランスがおかしくて

 

で、意を決して、引きこもりから外に出てみると、

実は世の中には自分と同じような

「おかしな人」がフツーにいるものだ・・・・・・という展開が、またあったかい。

 

同じく飛び級したMIT卒のイケメンだったり、

人に会わずにすむという理由で、夜中のバイトをする仲間だったり。

 

そんな人々との関わりのなかで

ヒロインは、自然にもう一歩、おとなの階段を登る――というお話。

 

ちょっとヘンな人々の“ヘン”の加減が

憎めず「あるある」な感じもいいし、

 

ベル・パウリーって

「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」(16年) の女優さんかあ!

なんかビミョーな感じがあったんだけど(ごめんなさい!笑)

本作でも、やっぱりビミョーに老け顔なんだか

でも、可愛いんだか、判別しにくいところが、この役にはピタリ合っていた!

 

さらに

「マイ・インターン」(15年)プロデューサーによる作品だけに、

「暴走系のおかしなヒロイン」にも、ウェルメイドさと品が失われずにあるところが

Goodポイントだと思います。

 

映画com.さんでもレビュー書かせていただきました~☆ご参考くださいませ~

 

★10/20(土)から新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「マイ・プレシャス・リスト」公式サイト

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ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

2018-10-17 23:52:51 | な行

 

189分!

でも、寝なかったぞ!(笑)

 

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「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」73点★★★★

 

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巨匠フレデリック・ワイズマン監督が

ニューヨークのクイーンズ区北西に位置する

“ジャソンハイツ”の街を映したドキュメンタリ-。

 

189分!の長尺とあって、やはり身構えるんですが、

うん、これはちょっとした旅行に行く気分で臨むのがいいと思う。

 

ジャクソンハイツをフラリと訪ねて

一週間ほど滞在した気分になれるんです。

 

 

ジャクソンハイツは世界中からの移民が暮らし、

167もの言語が飛び交う「多様性」の街。

 

ワイズマン監督はおなじみ「観察映画」の手法で

街のモスク、教会からレストラン、集会所、コインランドリーと

さまざまな場所を「観察」していく。

 

その静かな視線のなかに、

異なる宗教を持つ人々、不法滞在者、セクシャル・マイノリティなどなど

そこに暮らす人々の横顔が、立ち現れてくる。

 

やっぱり「人間」を見つめるのって、

おもしろくて飽きないんですよねえ。

 

そして同じ道、同じ角、同じ店を見ているうちに

我々も、この街に滞在したような気分になれるのが楽しい。

 

旅先の土地のスーパーが次第に馴染みになる楽しさ。

日がな一日、ぶらりと街を歩き、店を冷やかし、

普通なら入るのに躊躇しそうなタトゥー屋や夜のクラブにも潜入できちゃう。

 

でも、この個性的な街でも

昔ながらの個人商店が徐々に消え

大企業(例えばGAPのような)に取って代わられる“再開発”が進められている。

 

それは「現代アメリカ」の姿を映すと同時に

 

東京都内のさまざまな沿線駅に

ルミネができ、スタバがあり、便利でキレイだけど

なんか、どこも画一的――というような状況と

まあそっくりだよなあと思うわけです。

 

街を見ることが、いまを考えることにつながる。

そんな映画体験でした。

 

★10/20(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」公式サイト

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ハナレイ・ベイ

2018-10-16 11:27:07 | は行

 

なんだろう、何かがジワジワと身体に沁みてくる。

 

「ハナレイ・ベイ」73点★★★★

 

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シングルマザーのサチ(吉田羊)のもとに

突然の知らせが舞い込む。

 

息子のタカシ(佐野玲於)がハワイのハナレイ・ベイで

サーフィン中に亡くなったというのだ。

 

サチはハナレイ・ベイに向かい、

物言わぬ息子と対面する。

 

そして息子を奪った海辺へと向かったサチの胸に

去来するものとは――。

 

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村上春樹氏の同名短編をもとに

「ピュ~ぴる」(11年)「トイレのピエタ」(15年)の松永大司監督が映画化。

松永監督、うまいなあ。

淡々と、抑揚なきようでいて、

流れる時間に

ゆったりと、ゆるゆると観客をひきずりこんでいく。

 

感情の起伏なきヒロイン、吉田羊氏の凛とした佇まいは

美しくもあり、

強くもあり、か細くはかなげでもあり。

 

ある意味、もたいまさこさんのような、

ざっかけない「おばさん」ふうでもあり。

 

見たことのない、吉田羊がたしかに写っていたと思う。

 

ハワイの空気と、彼女のいる浜が

ずっと心に、残って心地いい。

 

村上春樹氏の原作を、映画のあとに読みましたが

うん、驚くほど世界はそのままに

でも、きっちり咀嚼して、描いてある。

てか、もうヒロイン=吉田羊の映像しか浮かびませんでした(笑)。

 

今週発売の「AERA」10/22号で

松永監督と、佐野玲於さんの対談記事、書きました。

 

佐野さんのあの、自然な「居かた」の理由も

ちょっとわかったような。

ぜひ映画と併せてご一読ください~

 

★10/19(金)から全国で公開。

「ハナレイ・ベイ」公式サイト

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