1993年上半期第109回直木賞受賞作。
早川書房刊、2段組み441頁の大作、累計100万部を越えるベストセラー。
昭和51年に南アルプスで蒔かれた犯罪の種子は、16年後の東京で連続殺人事件として開花する。
精神に暗い山(マークス)を抱える犯人を追い詰める刑事たちの迫真の物語。
久しぶりに、本当に久しぶりに本物の受賞作と呼べる作品を読んだ。
それは、単に話が面白いというだけでなく、事件の謎解きに自らも参加できる楽しさである。
加えて、刑事たちの思考方法や立ち居振る舞い、犯人を取り巻く人間ドラマに共感するところ大であった。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
選者評~藤沢周平氏
「この小説を推理小説史上に残る傑作と断定したくなるのは、話のおもしろさに加えて人間が書けているからである。物語に厚みがあり、描かれている警察機構と刑事たちに迫真のリアリティがあった。これほど欠点が目立ちながらこれほどためらいなく推せた受賞作もめずらしいと言わねばならない。」