LGBTの家族と友人をつなぐ会ブログ

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの家族や友人による会のブログです。

第37回神戸ミーティングのご報告

2010年12月25日 | ミーティング

平成221219日(日)つなぐ会ミーティング報告

 

今回は宝塚大学看護学部の日高庸晴先生に講師として来ていただき、「セクシャルマイノリティのメンタルヘルス」について講演していただきました。日高先生はご存知のようにセクシャルマイノリティに関する実証的な研究をされておられます。当日はアンケート調査に基づく客観的なデータから、主にゲイ男性のメンタルヘルスについてのお話をしていただきました。

この中でゲイ男性のメンタルヘルスを悪くしている要因にはいろいろなものが絡んでおり、なかなか難しい問題が多い事、その中で特に自殺未遂経験が多いことは深刻な問題であるとのお話は、セクシャルマイノリティの置かれている状況の厳しさを改めて感じさせるものでした。また児童期からの様々な傷つき体験がその後のメンタルヘルスに強く影響を及ぼしている事から、小学校の時からセクシャルマイノリティに対する正確な知識を教えていくことが必要とのことでした。このような早期からの対応は、その後の深刻な事態を防止する上で重要なことであることがよく理解できました。さらに心理カウンセリングのニーズが高い事からカウンセラーなど援助者のあり方についてのお話もありました。またHIV感染については特にゲイ男性の問題であるとも言え、依然として感染者が増加している中でそのような認識を持つことが必要と思われるが、保健所など行政機関での理解や対応は十分でない事などのお話もありました。

参加者からは、客観的なデータが示されているので説得力があること、今後はまだ調査の少ないレズビアン女性への研究を希望する意見などがありました。日高先生からはセクシャルマイノリティ全体に対する横断的な研究をより大規模に行うことがこれからは必要であるとのご意見をいただきました。

当日は参加者28名と多く、また初めて参加された方もおられました。講演後のミーティングではつなぐ会の活動の近況や石原都知事の差別発言に対して抗議文を送付したことなどが報告されました。また日高先生のお話に対する感想もたくさん話され予定時間を少しオーバーしたほどでした。

 

 


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プライドそれは私の〈からだ〉と〈こころ〉 (パート2)

2010年12月25日 | Weblog

☆オードリー・ヘップバーンは私も大好きな女優さんですが、彼女の人生にこれほど多くの難題があったとは知る由もありませんでした。でもそれは当たり前のことなのかもしれませんね。どんな人の人生にもそれぞれにドラマがある。華やかな部分、影の部分、触られたくない部分、知られたくない部分・・・みんなそんなものを抱えながら生きているのですね。オードリーのように華やかな人であっても、やっぱりいろいろな部分があったということです。

自分の「こころ」と「からだ」は他の誰かと取り換えることが出来ない人生そのものであり、プライドである・・』ほんとうに桑島さんのおっしゃる通りだと思いました。

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オードリーがもしオランダではなくイギリスを選んでいたら彼女はナチスドイツの空襲を受けて大怪我や大火傷を負っていたかもしれません。
「からだ」のどこかが無いオードリーや包帯を巻いたオードリーを見ればもうこれ以上彼女を傷つけまいとマイノリティとしてを見てくれたでしょう。
ヘレン・ケラーの三重苦も自分がそうでなくても分かる気がします。「からだ」のことなので想像が出来るのです。目隠しをして部屋を歩いてみれば椅子にぶつかって痛い思いをします。耳栓をして外出すれば後から来た自動車に気がつかず恐い思いをします。
そして言葉が全く通じない外国に行けば自分をわかってもらえない辛い思いをするでしょう。
オードリーは「こころ」のヘレン・ケラーなのです。「からだ」の見た目ではわからずオードリーがカミングアウトをしなければ彼女の「こころ」の怪我や火傷がわからないのです。
オードリーは何ヵ国語も話せます。羨む人もいるかもしれませんが、彼女がイギリスではオランダ人といじめられてオランダではイギリス人といじめられたことを知りません。またイギリス人でもオランダ人でもなくユダヤ人だと知られたら収容所に送られてアンネ・フランクの様に帰って来なかったことをもし知っていればオードリーの美貌や才能や特技を単純に羨むことは出来ないと僕は思うのです。
虹色の皆さん、オードリー・ヘップバーンは皆さんに近いところにいます。彼女の体験したことは虹色の皆さんも体験したはずです。「あなたは男性なのか女性なのか?どちらですか?」この質問を形を変えて何度も受けたことがあると思います。そして自問自答したことも。更衣室に入る時に。書類を書く時に。ホテルを予約する時に。家族の前で。友人の中で。学校で病院で食堂で街路で。数え切れないぐらい何度も何度も。
オードリー・ヘップバーンの「わかってもらえなさ」も虹色の皆さんは共感と共有と共生が出来るはずです。なぜなら虹色の皆さんも「有名だ」「金持ちだ」「才能がある」「健康だ」「個性的だ」何も問題は無いのでは?そう誰かから言われたことは無いでしょうか?
もし自分のIDが知られたらどうなるのかとクローゼットを続ける孤独や不安や恐怖は外から見えません。共感や共有は難しい中で共生への希望の灯を消さないためにも僕はオードリー・ヘップバーンを忘れないことが大切だと思うのです。オードリーは彼女の運命を引き受けて自分を愛したと思います。自分の「こころ」と「からだ」は他の誰かと取り換えることが出来ない人生そのものであり、プライドだからです。
虹色の皆さん、次回はもう一度「左利き」のお話に戻って社会の中にある様々な〈区別〉=〈差別〉?を探してその意味を考えたいと思います。


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プライドそれは私の〈からだ〉と〈こころ〉 (パート1)

2010年12月25日 | Weblog

☆桑島さんのエッセイ、今回でオードリーのお話も最後のようです。2回に分けてお届けします。

 

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虹色の皆さん、オードリー・ヘップバーンのお話も今回が最後になります。彼女をセクシャルマイノリティのイコン(聖画)にしようという僕のもくろみが上手く行ったのかは心もとないのですが、オードリーの映画と彼女人生を虹色の皆さんと少し共有そして共生が出来たとしたら幸いです。
オードリーは新時代の女性のモデルでした。美しさと強さの。彼女の黒髪は当時は美しさの評価の外側にあったことは前回お話しました(日本の少女漫画も長らくなぜか黒髪が悪役で主人公は金髪でした)。
彼女の人気作品『パリの恋人』の原題は『Funny Face』で「おかしな顔」とでも訳すのでしょうか?オードリーのあの「猫顔」も美の規範の外側にあったのです。彼女は「みにくいアヒルの子」として扱われたことになります。もちろん「白鳥」であることをオードリーは証明したのですが。オードリーが彼女以前のあるいは同時代の女優と違っていたのは髪の色や顔の形だけでは無くあの細身の「からだ」です。
多くの女性がオードリーに憧れるのも彼女の「からだ」のゆえだと思うのです。気品のあって強い意志も感じられる「からだ」です。ダイエットブームの始まりはもしかしたら彼女からかもしれません。確かにオードリーは最初は女優ではなくバレリーナを目指していました。小さい頃からバレエで鍛えていたので、スリムでエレガントな「からだ」なのだと彼女のことを知らない人たちは思うでしょう。
でも彼女の「からだ」は避けられない運命によって生まれたとも言えるのです。小さな頃はむしろ太めだったそうです。オードリーのからだが細身になったのは彼女が被災者で被害者だったからです。
オードリーの少女時代には戦争がありました。彼女は父の国イギリスではなく母の国オランダを選びました。ところがナチスドイツに占領されてしまったのです。5年間の長きに渡って。
オードリーは確かに貴族の血を引くお嬢様です。お城にも住んでいました。でも占領のために慢性的な食糧不足だったのです。
オードリーは球根を食べて飢えをしのいだこともあったそうです。この飢餓体験が彼女の「からだ」に大きな影響を与えました。オードリーは摂食障害になったのです。彼女はその後巨食症と拒食症を繰り返したと伝えられています。
『アンネの日記』のアンネ・フランクはもしかしたらオードリー自身だったのかもしれませんでした。彼女もユダヤ人だったからです。収容所に入れられなかったのは偶然=幸運だったのです。
オードリーは絶えざる緊張と不安そして死の恐怖の中で「こころ」を痛め傷つけたのだと思います。悲鳴を上げた「こころ」が彼女の「からだ」を作り出したとも言えるでしょう。
全世界の女性がオードリーの「からだ」に憧れて自分も同じ様になりたいと思ってもそれは無理なのです。なぜならオードリーの「からだ」がバレエによる努力の報酬だけではないからです。また生まれながらの天賦の賜物だけでもないからです。一族の悲劇とヨーロッパの歴史と社会の「差別」が彼女の「こころ」と「からだ」を生み出したのです。運命が与えた「からだ」なのです。


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