寒椿 (新潮文庫) | |
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新潮社 |
この前は有吉佐和子作品を読んでいましたが、その前に読んだ宮尾登美子に戻り芸妓ものを。
高知の芸妓子方屋「松崎」で、揃って修業を積んだ澄子、民江、貞子、妙子。姉妹のように睦みあって育った娘たちも、花柳界に身を投じる時を迎える。男と金が相手の鉄火な稼業を、自らの才覚と意地で凌いでゆく四人に、さらに襲いかかる戦争の嵐――。運命の荒波に揉まれ、いつか明暗を分けてゆくそれぞれの人生を、「松崎」の娘・悦子の目から愛惜をこめて描き、生きることへの瑞々しい希望を呼び起こす傑作連作集。 amazonより
芸妓・娼妓と苦海に沈められた少女たち、芸妓子方屋に育った妙子の視点を絡めながら過去、現在と描かれていきます。作者が育った環境に近く、その姿は妙子に重ねられているようです。
身を売る、現在では犯罪行為ですが、少し前までは必ずしもそうではありませんでした。
貧しさゆえに売られてくる少女たちがやがて芸妓になり、しかし、その後に歩む道は様々で。
愛人となって生きているもの、
また芸妓に戻ったもの、
若くして亡くなったもの、
社長夫人となっているもの、
それぞれの人生が描かれていきます。
やっぱり体を売っていること自体は読んでいて胸が痛いのですが、それでも生きるために一生懸命な姿に簡単な善悪でものを片付けられませんでした。
晩年、無気力なままに亡くなった貞子が戦争が激しくなりものがないなか、妙子に嫁入りの着物を持ってきた場面がなぜだか心に残っています。