キャラヴァンは日本で人気のプログレ・バンドです。
特に、当ブログですでに特集した「in the Land of Grey(グレイとピンクの地)」と「For Girls Who Grow Plump in the NIght(夜ごと太る女のために)」、「Cunting Stunts(ロッキン・コンチェルト)」は名作として有名。
プログレ好きでなくとも、「Cunting Stunts」で聴けるビートルズを思わせる超甘いポップメロディに中毒的なものがあり、一般のポップス・ファンもはまってしまったりします。
まあ、多くの人は上記3作を聴いて、満足し、それ以外の作品は聴かないというのが一般的なパターンでしょう。だって、いろんなところで代表作として書かれている3作品ですから。
でも、日本であまり聴かれていない1972年発表の本作品「Waterloo Lily」も実は名作なのです。
ポップな作品とは言えないので、ポップさを求める人にはお勧めできません(特に、歌なしのフュージョンやジャズ・ロックが苦手だと言う人には勧めません。)が、演奏パートにおける職人技に圧倒されたい人には聴きごたえがあると思われますので、ぜひ聴いていただきたいと思います。
ちなみに、この作品はマッチング・モウルのセカンド・アルバム、ソフト・マシーンの5枚目のアルバムと同時期です。メンバーはデイブ・シンクレアが脱退しており、スティーブ・ミラーがキーボード担当として加入しています。ゲストとして、リーダー兼ギター、ヴォーカルのパイ・ヘイスティングの実兄のジミー・ヘイスティング、そして、ロル・コックスヒルが参加しています。
大作を2曲紹介しましょう。
まずは「Nothing At All」
Nothing At All
この曲はロックというよりフュージョン(当時の言葉で言えば、ジャズ・ロック)という感じが強いかもしれません。ワウワウを効かせたギターがかっこいい。ベースはパンチがある。ピアノはジャジーでオシャレ。前作に比べ、クールでかつ激しさを感じる演奏です。このクールさは新加入したスティーム・ミラーの力が大きいのかも。この曲だけ聴くと、キャラヴァンってわからない(笑)。ベースの迫力、サックスの演奏、そして展開力。うーん、魅力的な曲です。いったん静かになったあと、またにぎやかになるのもいいですね。最後の方は実にかっこいい。
そして、もう一曲、このアルバムでハイライトになる作品「The Love in Your eye(瞳の中の愛)」
The Love In Your Eye
この曲も緊張感のあるインスト部分が飽きないんですねー。やはり展開力があるのがいい。曲調が劇的に変化するところには圧倒されます。キャラヴァンらしい、ふわっとしたポップな歌部分と楽器のバトルと言えそうな力強いインスト部分の対比が面白い。ジミー・ヘイスティングのフルートの部分なんてかっこいいですよ。
シングルヒットしそうな聴きやすい曲はありませんが、聴きごたえ十分のプログレッシブ・ロック・アルバムであることには間違いありません。
デイブ・シンクレアがいる時のキャラヴァンとはちょっと違った雰囲気を楽しめるのもいいと思います。
演奏力の高さは間違いありません。各人のテクニックとアンサンブルが絶妙で、その職人技に聞き入ってしまいます。
やはり、このアルバムは名作なのです。
次のカンタベリー・ロック特集は1月予定です。