6月24日のNHKEテレで、「こころの時代〜宗教・人生〜その言葉が道をひらく」という番組で、昨年亡くなったドイツ文学者・小塩節さんによる「神との対話-ゴート語訳聖書の世界」という2004年の番組を追悼シリーズとして放送してくれた。
小塩さんは、ドイツ文学者として、また、NHKのドイツ語講講座の名物講師として有名だったが、ケルンの日本文化会館館長時代、仕事上のおつきあいがあり、数年前まで親しくおつきあいさせていただいた。講演会を聞かせてもらったり、ドイツまでの航空券を手配させてもらったり、フェリス女学院のパーティでお会いしたこともあった。大病を克服された後、昔の仲間で2014年に会食の機会があったが、それがお会いした最後であった。その時は、自宅横で経営されている幼稚園や彼の書斎等も見せていただいたが、懐かしい思い出となっている。
ドイツ語等ゲルマン語群の元になっているゴート語のことやギリシャ語の聖書をゴート語に翻訳したウルフィラ(4世紀の人)という司教のことも初めて知ったが、スウェーデンのウプサラ大学図書館でのゴート語の聖書との出会いが小塩さんのその後の歩む道を形成していたこともよくわかった。ウルフィラは、翻訳のためにゴート文字を発明し、新約旧約二つの聖書のために一生を捧げた。ゴート語は,表現力豊かな強い言語だったので,古代ゲルマン諸族の共通語となり,そのためウルフィラの定めた神 (GUTH) を始めとする訳語は以後のゲルマン人たちに引き継がれて現在に至ったという。ゴシックという言葉も、ゴートが語源とのことである。
NHKは、いろいろ批判もあるが、このような教養番組やドキュメンタリー番組で見応えのあるものも多い。最近は、NHKを見直して、EテレやBS番組を見る機会も増えてきた。
画像は、番組でゴート語の聖書を紹介する小塩さん