浮世絵の制作技術を高度に継承した職人をかかえる唯一の版元として、アダチ版画研究所というところがあるが、そこが今年は北斎・広重が浮世絵に描いた桜の名所を紹介してくれている。浮世絵に描かれた桜の絵を見ると、桜が江戸の人々の心を捉えてきたことがよく分かる。今年はあまり天候に恵まれなかったので、浮世絵に描かれた桜を楽しむことにした。
アダチ版画研究所が紹介する名所は以下の通りである。
1 上野の桜
歌川広重が「名所江戸百景」で描いた上野の山は春爛漫。桜に彩られた「上野清水堂不忍ノ池」の風景は、今でもほぼ変わらない景色を楽しむことが可能である。
2 御殿山の桜
葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景」の中の「東海道品川御殿山ノ不二」という作品にお花見の様子が描かれている。青い空、青い海、そして富士山に桜の絶景。浮世絵の中に描かれた人々も、かなり浮かれている。御殿山は家からも徒歩15分位のところにあるので親しみがある。江戸時代は桜の名所として有名であったが、ペリー来航にからみ、台場を建設するために、御殿山の土がかなり切り崩されたという話を聞く。今では本数は減っているが、御殿山庭園の桜をライトアップ中心として楽しむことができる。
3 飛鳥山の桜
北斎の「新板浮絵王子稲荷飛鳥山之図」と題した作品には、飛鳥山の桜が描かれている。飛鳥山全体が桜色に染まる春の雰囲気をよく伝えている。飛鳥山の桜の花見には何年か前に行ったことがあるが、宴会をやっている人がいっぱいいた。
4 小金井の桜
歌川広重の「江戸近郊八景 小金井橋夕照」の中で、小金井の桜が描かれている。いつの時代も「人出の多い場所の花見はちょっと……」という方は一定数いたようで。そんな心静かに花を愛でたい人々が好んだのが郊外の桜で、広重は「小金井」の桜がお気に入りだったようである。
35年位前、フランクフルトに駐在していた時に、縁があって、浮世絵の酒井コレクションと協賛で浮世絵展を開催したことがあり、その時から浮世絵の魅力を実感している。その時は、1枚数千万円もする貴重な浮世絵を展示したり、ドイツで初めての浮世絵の摺りの実演を行なったり、貴重な経験をすることができた。我が家の壁にもいただいた浮世絵が何枚か飾られている。江戸時代に発達した浮世絵という芸術は、ゴッホはじめ海外の画家にも強い影響を与えているほど素晴らしいものである。満開の桜の花を見るたびに絵に描くのは難しいだろうといつも感じていたが、浮世絵に描かれた桜を見ると妙に納得する。
見出し画像: 御殿山の桜
(上野の桜)
(飛鳥山の桜)
(小金井の桜)
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