「感染力は最強」、コロナXBB.1.5について今わかっていること
2023/01/11 18:00
「感染力は最強」、コロナXBB.1.5について今わかっていること
(ナショナル ジオグラフィック日本版)
極めて感染力の強いオミクロン株の亜系統「XBB.1.5」は現在、米国で支配的な株となっている。初期のデータは、以前に獲得した免疫をXBB.1.5がほかの変異株より効果的に逃れていることを示しており、公衆衛生当局者の間では、冬の間に感染の波が起こるのではないかとの懸念が高まっている。
2022年12月から2023年1月の第一週までに、XBB.1.5の割合は、米国全土で確認された新型コロナウイルス感染症の陽性例の約1%から40%以上にまで急増した。北東部の州では、12月25日からの1週間における全症例の75%以上をXBB.1.5が占めた。一方で、この株がより重症化するかどうかを示すデータはまだ存在しない。
「XBB.1.5はこれまでに見つかった中でもっとも感染力の強い変異株です」。世界保健機関(WHO)の新型コロナ感染症対応技術責任者であるマリア・バン・ケルクホーブ氏は記者会見でそう述べている。科学者らの推測によると、XBB.1.5はその親系統やそれまで急速に増えていたBQ.1系統より、感染者を60%多く発生させる可能性があるという。
XBB.1.5は2022年10月末に米国のニューヨーク州とコネチカット州で初めて検出されたが、それ以降、少なくとも29カ国で見つかっている。現在の全世界の症例でみると5%に満たないものの、おそらくは8〜15日間で倍増しており、これまででもっとも拡大の早い亜系統となると見られている(編注:1月10日の時点で日本でも4件確認されたと松野官房長官が11日の記者会見で発表した)
実際のところ、XBB.1.5はこれよりもはるかに広い範囲に蔓延している可能性があると、ケルクホーブ氏は言う。なぜなら、新型コロナウイルスを監視するゲノム解析の取り組みが世界中で減少しており、状況を判断するのが難しいからだ。
XBB.1.5はどこから来たのか
XBB.1.5は、XBB株(オミクロンBA.2の異なる系統が融合したもの)から派生したXBB.1株に由来する。XBBとXBB.1(2022年10〜11月にかけてアジア各地で患者を急増させた株)は、過去の感染によって得られた免疫や、オミクロン株対応ワクチンをうまく回避できたと、2022年12月19日付けで学術誌「Nature」誌に発表された報告にはある。XBBはシンガポールにおいて、入院率こそ低くとどまったものの、多数のブレイクスルー感染と再感染を引き起こした。
XBB.1.5はどこが違うのか
XBB.1.5変異株は、ウイルスがヒトの細胞と結びつく際に使うスパイクタンパク質の486という位置に新たな変異をもつ。数学的モデルは以前から、この位置に変異が起こると過去の抗体を回避できるようになると示唆していた。どうやらその予想は正しかったようだ。
「この変異は、XBB.1の極めて高い免疫回避能力を維持しつつ、より高いACE2結合能をもたらします」。中国北京大学の曹雲龍(カオ・ユンロン)氏は、査読前の論文を投稿するサイト「bioRxiv」に発表したXBB.1.5の感染力に関する自身の予備的研究に基づいてそう述べている。
曹氏の予備的研究ではまた、エバシェルドやベブテロビマブといった一部のモノクローナル抗体薬はXBB.1.5をブロックできない一方で、ソトロビマブは弱い防御効果を発揮することが示されている。