博多女性殺害、かばんの中の110番通報装置使わず…突然襲われたか
2023/01/19 12:33
(読売新聞)
福岡市博多区のJR博多駅近くの路上で16日、福岡県那珂川市の会社員川野美樹さん(当時38歳)が刺殺された事件で、川野さんが事件当時、福岡県警から貸与された110番通報装置を使っていなかったことが、県警への取材でわかった。県警は殺人容疑で逮捕した元交際相手の飲食店従業員、T容疑者(31)(福岡市博多区)に突然、刺されたために使えなかった可能性があるとみて調べている。
県警などによると、通報装置は事件後、川野さんのかばんの中から見つかった。スマホの半分程度の大きさで、ボタンを押すと、警備会社を通じて110番され、位置や使用者の情報が警察に提供される仕組み。しかし川野さんは使っておらず、警察官は目撃者の110番で現場に駆けつけた。
T容疑者と川野さんは、福岡・中洲で飲食店を展開するグループ内の別々の店で働いていて知り合ったという。昨春から交際を始めたが、川野さんは昨年10月以降、「別れたい」「職場があるビルに来られた」などと、何度も県警に相談していた。
県警は昨年11月26日、T容疑者に対し、ストーカー規制法に基づき、つきまとい行為などを禁じる禁止命令を出した。この頃から川野さんに通報装置を貸与していた。
現場付近の防犯カメラには、事件当日の16日午後6時過ぎ、川野さんとT容疑者とみられる男が博多駅方面に向かって並んで歩いている姿が映っていた。2人はコンビニエンスストア付近で立ち止まって話をしている様子だったが、男は突然、川野さんを路上に押し倒し、刃物を振り上げた。その後、倒れたままの川野さんを残し、現場を立ち去った。
T容疑者は調べに対し、「刃物で刺したことは間違いない」と容疑を認めている。県警は事件直前の川野さんとのやり取りについて、詳しく事情を聞く。