北京冬季五輪対応「国益考え判断」 首相インタビュー要旨
2021/11/19 19:53
(産経新聞)
岸田文雄首相は19日、官邸で産経新聞などのインタビューに応じた。要旨は次の通り。
冒頭発言
「新しい資本主義」の実現に向けたさまざまな仕掛けも本格的に動き始め、これからスピード感をもって政策の実行に取り組む。(新型コロナウイルスの)感染は足元では落ち着いているが、最悪を想定して備えなければならない。新型コロナ対応に万全を期していく。
一方で、1日も早く通常に近い経済社会活動を取り戻すことが重要だ。経済対策で一刻も早く、新型コロナで困っている方々を支えるとともに大きく傷ついたわが国の経済を回復軌道にもっていきたい。今回の経済対策は事業規模で79兆円規模、そのうち「真水」で56兆円の財政支出を行う。
対策は、新型コロナの感染防止、ウィズコロナの社会経済活動の再開、未来を切り開く新しい資本主義の起動、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の推進の4本柱でまとめた。
子育て世帯、住民税非課税世帯、学生など、状況に応じてきめ細かくさまざまな支援メニューを用意した。新型コロナで苦しんでいる子育て世帯には児童手当の仕組みを活用し、可能な限り迅速に支援を行うため、世帯の主たる稼ぎ手の年収が960万円以上の世帯を除き、10万円相当の支援を行う。
新しい資本主義の起動では成長を実現するための大胆な投資と改革に加え、分配戦略の具体化も目指す。成長戦略では、科学技術立国の実現、デジタル田園都市国家構想、経済安全保障が3本柱だ。分配戦略では賃上げを行う企業への支援に加え、人への投資の強化も打ち出す。民間企業に賃上げを求めるためにも国が率先し、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入を3%程度引き上げる。月内に行う次回の「新しい資本主義実現会議」で来年の春闘に向けた民間に賃上げ議論もスタートする。
12月初旬には臨時国会を召集する方向で調整を始めている。われわれの政策について国民に理解してもらえるようにしっかりと説明し、丁寧な議論を行いたい。
質疑
−−経済対策は財源の多くが赤字国債で将来世代の負担を懸念する声もある
「今は緊急時だ。国民の命や暮らしを守るために、必要なものをしっかりと用意しなければならない。補正予算の議論はこれからだが、財源は赤字国債をはじめ、あらゆるものを動員する。その後経済再生を行い、財政について考えるというのが順番だ」
−−消費税増税や金融所得課税への考えは
「消費税については触ることは考えていない。従来とは変わっていない。金融所得課税は、税制全体の中で議論すべき課題だ」
−−憲法改正にのスケジュールは。自民党がまとめた改憲4項目のうち、特に優先的に考えている項目は
「憲法改正は『しっかりやるんだ』という決意や覚悟を示していかなければならない。党組織でも、推進本部を実現本部に切り替えた。(改憲の)主戦場は国会での議論だ。関係者にはしっかりと汗をかき、努力をしてもらう。また、広く国民に改憲について考えてもらうため、世論への働きかけも重要だ。改憲の機運を盛り上げていくことを特にお願いしている。
スケジュールを私の立場で申し上げるべきではない。私は4項目とも現代社会で必要な改正だと思っており、それぞれ国会で議論してもらいたい。ただ、結果としてその中の一部の議論が進むのであれば、4項目同時の改正にはこだわらない。ぜひ国会での議論を注視したい」
−−来年2月の北京冬季五輪に政府代表を派遣するか
「現状、何も決まっていない。これからいろんな動きも生じるだろうから、総合的に判断をしたい。日本の国益などもしっかり考えながら判断をすることに尽きる」
−−韓国との関係改善に向けての考えは
「韓国との関係を安定させることは大事だが、国際的な条約や約束は守られるべきだ。韓国側の前向きな対応を期待したい」
−−安定的な皇位継承に関する法改正などの考え方は
「(皇位継承策は)有識者会議で議論が行われている。今後の進め方は有識者の方々の考えで決まってくると思う。私の立場で申し上げることは控えるべきだ」