美味しくても独り
例年そうだが、南の島の沖縄の冬は短い。ただでさえ短いのに今年は寒くなるのが随分遅れた。一昨日からやっと冬らしい気温(最低が15度ほど)となった。
今住んでいる私の住まいは広いので、独りでいるという心の寂しさも加わってか、さらに、腰痛が治らないという将来不安も加わってか、元気だった頃に比べると寒い日は寒さをより強く感じる。であるが、寒くなると飲兵衛の私には楽しみがいっぱいある。
酒好きの私は酒なら何でも持ってこいなのだが、そんな中でも最も好む日本酒が、寒くなるとより旨くなる。「今宵の晩酌は日本酒だ」となると、その肴も楽しみとなる。漬物とか刺身とか、豆腐と野菜が主体で魚介が少々の鍋料理、移動販売をしている豆腐屋さんの生湯葉(とても旨い)など。どれも手間がかからないという利点もある。
腰痛になる前、畑仕事に追われる前までは心にも時間にも余裕があったので、いくらか手間のかかる肴も自作していた。手間がかかる肴は概ねパン、シチューなどのワイン用だったかもしれないが、日本酒用で手間がかかるのも作っている、例えばシメサバ。
シメサバとは、明鏡国語辞典によると、「締め鯖」と漢字表記し、「新鮮なサバを3枚におろして塩を振り、よく身を締めてから酢に浸したもの」のこと。手間はかかるのだが寒くなって、「日本酒飲みたいなぁ」と思った時はよく作った。
よく作っていたので写真もあるだろうと探したらあった。2008年11月に作ったものと2012年2月に作ったもの。2008年というと首里石嶺に住んでいて、まだ会社勤めをしていてバリバリの肉体労働者。前年に母が亡くなっており、週末は実家へ行って1人暮らしの父にパソコンを教えている頃。母の一年忌が済んで気持ちものんびりしているある日、シメサバを作って独り日本酒を飲んだみたいである。
2012年というと、前年に宜野湾市のワンルームアパートに越していて、勤めている会社が時短で週休5日となり、空いている日は親戚の土地(30坪ほど)で農作業をしている頃、2年前に父が亡くなり誰も住まなくなった実家の整理処分に動き回っている頃。そんなある寒い日に、心身の疲れを癒すためにシメサバを、2008年の時よりもずっと丁寧に作って、独り日本酒を飲んだみたいである。・・・いつも独りだなぁ。
こんなこと書いて「今宵は日本酒」となりそうだが、今日は休肝日、残念。しかし、明日は市販のシメサバを買って日本酒にしよう、と考えただけで幸せになる。・・・独りだけど。
記:2019.1.23 ガジ丸 →沖縄の飲食目次