もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

中国の「新」万里の長城を知る

2021年01月15日 | 中国

 中国の「新」万里の長城建設を知った。

 新長城は、ミャンマーとの国境(雲南省)に建設中で、2100㎞の国境線のうち既に600㎞が完成しているとされる。新長城は高さ3mの有刺鉄線で構築され、中国は「コロナ対策(入境者阻止)」としているがミャンマー側は「中国反体制者の逃亡防止(出境者阻止)」と逆の見方をしているとされている。
 アメリカがメキシコ国境をフェンスで遮断しようとした背景は、アメリカの富と生活を求めて流入する不法移民とコカインの密輸ルート遮断であることは知られているが、中国の主張するコロナ対策としての入境者阻止については、全体主義の中国を慕い・憧れて越境する者はそう多くは無いだろうことから考えられないものに思える。
 また、キューバ、ベトナムに見られたように社会主義国が反体制分子の国外脱出を黙認若しくは奨励した歴史を見れば、ミャンマーの見方も疑問である。
 中國・ミャンマー国境一帯は、黄金の三角地帯と呼ばれるヘロインの一大産地であり、麻薬業者は警備の厳しい南方ルートを避けて雲南省経由ルートで輸送するのが常態化しており、貧しかった中国も麻薬ビジネスを外貨獲得の貴重な手段として先進国からの取り締まり要請に頬被りを続けてきた歴史を持っている。
 今、中国がコロナ対策を名分として一帯一路構想の起点で、かつ重要なパートナーであるミャンマーに無断で国境を封鎖しようとするのは、功成り名を挙げた人が過去の悪行を消そうとする行為に似ているように感じられる。更に穿った見方をするならば、中国国内の麻薬汚染が手を付けられない状態にまで悪化しているのかも知れない。

 対イラン政策を契機としたサウジアラビア、UAE、エジプトとカタールの断交では、カタール・サウジ国境に運河を掘ってカタールを島にする計画が2018年に浮上したが、外交関係の修復に伴って計画は白紙に戻ったものと思われる(着工したか否かも不明)。アメリカ・メキシコ国境を完全遮断するとしたトランプ大統領の壁(国境線3100Kmのうち(峡谷・砂漠などを除く1600Km)も予算不足で頓挫した。人工物で国境を守ることは万里の長城、ベルリンの壁など古来から行われたが、時代の変遷につれて或いは無用の長物とされ、或いは崩壊した。現在機能しているのは南北朝鮮停戦ライン(国境)しか思いつかないが、構造物を以てでも国境を閉ざさなければならないということは、どのような理由からにせよ深刻な背景を持っているものと思うので、新長城構築にも重大な理由があるのだろう。