アメリカ社会の分断に関する「施 光恒」九大教授の主張を読んだ。
教授は、アメリカ社会の分断は、グローバル経済が生んだ階層分化であるとしている。米国経済を牛耳る多国籍企業の経営陣は、国家経済という視点を失って利潤を追求するために、これら富裕層は国民と乖離して、1990年代後半にはエリート層と庶民層の分断が顕著になったとしている。
確かに、トランプ大統領がキャッチフレーズに使用した「アメリカファースト」は、これら富裕層からアメリカを取り戻すことを意味したもので、当選後に中国を世界市場のサプライチェーンから切り離す政策を採ったことで半ば達成しかかっていたように思える。しかしながら多国籍企業の巻き返しは熾烈で、特にGAFAに代表される情報企業は大統領選でトランプ支持者の発言機会を遮断するという暴挙を行って中国寄りのバイデン候補を当選させた。このことでアメリカファースト階層と富裕層の対立はより根深いものになったと思っている。
また、富裕層がアメリカを忘れた風潮はアンティファの活動に追い風となり、彼等が建国の象徴的なシンボルを次々と破壊する行為が大きな反対もなく全国に蔓延している。
ここでアンティファについて再確認してみた。
《,ANTIFA(アンティファ)は反ファシストを意味するドイツ語や英語の短縮形で、1930年代のワイマル共和政下のドイツに存在した組織の「反ファシスト行動」が原点とされるが、現在の活動は1960~70年代のドイツに再興された思想がアメリカ合衆国など他国へも広がった》とされていた。
このように、戦前は独裁体制に反対する民主化運動であったが、戦後の思考・活動はアメリカのアンティファの旗にアナキズムを示す”A”が描かれているように、国家そのものを否定するアナキズムに変質しているように思われる。しかしながら、流石のアンティファも無政府国家が存在できないことを知っているので、統制力の弱い国家を目指しているものと思われる。統制力の弱い国家は多国籍企業にとっても望むところであり、トランプ氏の追い落としには共同歩調を採ったものと見ているが、アンティファ幹部が「我々は訓練されたコミュニスト」と公言していることから、両者はいずれ袂を分かつことになるのではないだろうか。
自分は、1月9日に「アメリカ社会の分断は白人によるアメリカ支配を至上とする階層VS左傾勢力VSマイノリティの複雑な対立に拡大変化する可能性が有るように思える。」と書いたが、施教授の論を読んで改めて考えると「白人によるアメリカ支配を至上とする階層VS左傾勢力VSアナキスト的富裕層VSマイノリティの複雑な対立」と訂正すべきであると思う。今回の大統領選挙においてトランプ氏が共和党史上最多の得票数を得たことを考えれば、アメリカファースト階層はまだアメリカ人(肌の色に関わらず)の多数を占めているように思えるが、バイデン氏若しくはカマラ・ハリス氏による空白・衰退の4年間には更なる分断が進んで、日本の民主党政権の空白の3年間などは及びもつかない変化をアメリカ社会は経験することになるのではないだろうか。