1995年にBBCが放映したダイアナ妃のインタビューにおける不正取材の顛末が報じられた。
放映された内容は隠された真実であったが、取材交渉の過程でBBC記者が偽造した銀行明細書によってダイアナ妃周辺を信用させたものである。当初BBCは内部調査によって不正は無かったとしていたが、昨年になって篭絡されたダイアナ妃の弟(スペンサー伯爵)からの告発を受けて「真の第三者」による調査で取材交渉は不正と結論され、BBCは「全面的に、無条件で謝罪する」事態となった。
秘密警察や密告制度で「有無を言わさず」「罪状の開示もしない」強権国家を除いて、日本を含む民主国家では不正な手段で採取された証拠や脅迫による証言は法廷に於いて効力を持たないとされていることを考えれば、BBCの報道は法的には真実であってもフェイクと扱われるのかも知れない。
今回の一連を考えると、取材手段についての正邪判断基準が「BBCの内部調査」と「真の第三者調査」で異なることが重要であると思う。閑話休題。
取材手段に対する報道機関と良識の乖離について些かの小物感は拭えないが、自衛隊の大規模接種予約が偽の接種番号でも可能であることを、朝・毎新聞社が実証的に行ったことに対して防衛大臣が不快感を表明したことにも見て取れる。
自衛隊が行う大規模接種予約システムについては、当初から自治体の住民管理システムとリンクされていないために偽番号が通用することは予め指摘されていたもので、実証しなくても周辺取材で明らかにできるものであった。自衛隊予約システムが自治体とリンクしていないことについては、システム構築の技術的・時間的な制約よりも「一時的であっても自衛隊が個人情報にアクセス(共有)することに対する朝野の反対・忌避感の回避を優先」した結果であると思う。もし、自衛隊と自治体がリンクしたシステムを構築した場合の反応は「マイナンバーを徴兵法と呼んだ勢力がいた」ことを思えば、現状の比ではないだろう。それとも、時代の進展とコロナ対応の前には「徴兵法の急先鋒」であった朝・毎新聞社はマイ・ナンバー制度に対する姿勢を転換させたのだろうか。さらには、立民の安住淳国対委員長は「防衛相もシステムの不備を明らかにしてもらったと感謝すべき」と新聞社の違法取材(威力業務妨害罪)を擁護しているが《全ての反日行動は手段を問わずに許される》とする韓国世情を彷彿されるもので、法治国選良としての品性を著しく欠くものと思える。
ダイアナ妃の取材に不正があったと結論した「真の第三者」と完全謝罪した「BBCトップ」についても英断を評価するものである。日本では、朝日新聞の慰安婦報道や日大ラグビー部問題を始めとする第三者委員会、自治体の100条委員会ではトップに弁護士を置くことが一般的であるが、選任された弁護士の多くが調査される側と何らかの利害を共有するとの疑惑が取り沙汰されることも一般的である。そのためもあってか、疑惑の解明や是正も徹底を欠き、朝日新聞は以前のままに「教科書検定での連行・強制」を主張し続け、日大ラグビー部監督は何食わぬ体で復権している。
朝・毎新聞は、今回のダイアナ妃に関する一連をどのように報じたのであろうか。よもや「編集の自由」や「報道しない自由」で没にしているとは思いたくないが。