アメリカが人道支援として北朝鮮にコロナワクチンを提供する可能性が報じられた。
アメリカは、ワクチン提供を北朝鮮との対話再開の糸口としたい思惑があると観られているが、政権内部からも否定の声がないことから信憑性は相当に高いものと思う。
バイデン政権は、選挙期間を通じてトランプ政権の対中強硬路線を継承することを公約していたが、就任後には同盟国と連合しての対中戦略に変質し、対中包囲網の弱い部分、例えば韓国・日本を中国が個別に攻略できる余地を与えたと思っている。更には大統領報道官がクリントン・オバマ政権の失敗例とされる「戦略的忍耐」を口にする等、明らかにトーンダウンしていた。
今回のワクチン提供は、1994年にクリントン大統領主導で北朝鮮の核開発放棄の代償として軽水炉原子炉を与えたことの再現であり、クリントン・オバマ・バイデンと看板は変われど、民主党の容共姿勢は不変であるように思える。
民主党は歴史的に内政重視を党是としており、アメリカ本土が直接攻撃されない限り単独での軍事行動はとらない傾向がある。ケネディはアメリカの裏庭に核兵器が配備される懸念から対キューバ強硬政策を採った。フランクリン・ルーズベルトは、日本に真珠湾を攻撃させて開戦の大義としたものの、将兵の犠牲が余りにも大きいことからヤルタ・ポツダム会談では、対日参戦の代償としてポーランドを始めとする東欧諸国をソ連が実質的に支配することを容認した。民主党政権下で起きた朝鮮戦争やベトナムへの本格介入は、ルーズベルトの容共路線失敗経験とマッカーシーの赤狩りが国民の支持を得ていた時代背景を考えると、必然的ではあるが消極的な参戦であるように思える。
ルーズベルト大統領の容共戦略が、以後のソ連の伸長、東西冷戦と米ソ代理戦争の激化を招き、挙句の果てには米ソ双方が疲弊して世界秩序の崩壊と混乱の原因であったことは明らかである。
ソ連に代わって、ソ連以上に言葉の通じない中国が台頭している現在、アメリカの腰砕けは将来に良い結果をもたらすとは思えない。ソ連は第3国に対して軍事技術以外に供与できる資産は無かったが、中国は、窃取した先進技術とサプライチエーンの中心として欧米から流れ込む豊富な資金力があるので、米中冷戦の勝者は中国となり兼ねない。現在の状況は、自分の上に落ちて来るかも知れない「核弾頭」「長征5号B」「天和」「神舟」を西側諸国自身が中国に買い与えている構造に他ならない。
アメリカの北朝鮮支援で喜ぶのは、国連決議違反という手を汚さずに北朝鮮支援を実現した中国と、レイムダック状態の文大統領ではないだろうか。