もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

枝野政権の安保構想

2021年05月26日 | 野党

 立憲民主党が離島防衛を念頭に置いた「領域警備・海上保安体制強化法案」を纏めて、次期国会に提出することが報じられた。

 法案の骨子は、海上保安庁の装備を5年ごと区切って計画することと、自衛隊が海保の活動を補完する「海上警備準備行動」の新設とされている。
 法案は、立民政権における国防不安を打ち消すために作成されたものであるが、不安を助長するだけのものに思える。
 海上保安庁の装備新計画については自衛力整備に採られている中期防衛力整備計画(中期防)構想と同等の制度であり、特に反対する理由は見当たらないが、「海上警備準備行動(以下、準備行動)」の新設については疑問視せざるを得ない。
 準備行動は、海上警備行動発令の前段階として保安庁を主・自衛隊を従とした警察行動を目途としていると思われるが、現在、中国が領海内での警察任務に充たる海警部(=保安庁)を人民解放軍の1部局として傘下に置き、軍事行動を警察行動と強弁するための布石を打ったことと軌を一にするものであるように思える。中国の処置に対して列国が反対しているのは、行政の一環として行われるべき警察行動が3権を超越(注)する軍事行動と区別できないことに対する不安からであり、枝野政権の準備行動発令も警察行動と軍事行動の境界を曖昧にしてしまう危険性が有る。枝野政権が準備行動を発令して自衛艦が紛争海域に出動すれば、中国は即座に海軍を投入して済し崩し的に武力行使に踏み切るであろうことは想像に難くない。その意味から、準備行動はみすみす中国の仕掛けた罠に嵌まることで、紛争の激化にしか寄与しないように思える。

 立民への安保不安視解消を目指す取り組み事態は一歩前進と捉えるべきかもしれないが、立憲民主党の国会行動を観る限り国防に関するグランドデザインは「見えない」以上に「無い」と感じられる。
 重要インフラ周辺の土地利用監視を骨抜きにして中国の入手・敵性利用の途を残し、不法滞在する敵対外国人であっても拘留期間を短縮あるいは難民認定して滞在を認め、テロ特措法を骨抜きにして公安活動を妨げ、日米同盟を基軸とする一方で集団的自衛権の限定行使を「立憲主義に反する」と拒否し、・・・と安全保障音痴ぶりを如何なく発揮している。
 そして今度の準備行動法案である。枝野代表率いる立憲民主党の主張を横並びにすれば、中国覇権に手を貸す思惑が浮かび上がると見るのは思い過ごしだろうか。

(注)憲法9条にも「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は・・・」と規定することで、軍事行動は憲法諸規定を貫く3権と区別するために「国権」と記述されている。