もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

中東紛争とアメリカに思う

2021年05月15日 | アメリカ

 イスラエルとハマスの衝突に対してヨルダンのヒズボラも加担するなど、中東全域の紛争にまで拡大するかの情勢に思われる。

 衝突は、エルサレムにあるイスラム教のモスクで起きたイスラエル警察とパレスチナ人信者との衝突を発端とし、パレスチナ自治区であるガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエルに向けてロケット弾を発射し、イスラエル軍は報復としてガザ地区を空爆したものと理解している。
 今回、ハマスが発射したロケット弾は2000発超、イスラエル軍の空爆箇所も500箇所超とされているが、ハマスが即座に2000発ものロケット弾を発射し得たことに驚くとともに、パレスチナ問題の根深さが実感できる。ハマスの発射したロケット弾がどのような物かは伝えられていないが、イスラエルが「その殆どを迎撃した」と発表していることから、迎撃が可能な大きさと飛行距離を持った兵器である可能性が高いと思う。
 日本に置き換えると、一地域に対して集中的に・即座に2000発のロケット弾を発射することは不可能である以上に、時間をかけて国内備蓄の陸上発射型ロケット兵器を集積しても2000発はどうだろうかと思うので、それほどの量の兵器を一軍事組織に過ぎないハマスがガザ地区に常備していたことは、他国の支援なしには起こり得ないように思える。
 ユダヤ人とアラブ人の民族的・宗教的な確執は4000年に及ぶもので、米英が第二次大戦協力の恩賞として流浪の民であったユダヤ人にイスラエルの地を与えたことで決定的になったと思っている。
 それまで流浪していたユダヤ人は何をして生き延びたかと考えれば、世界中に散在するユダヤ人ネットワークを利用して各国の経済・金融に絶大な影響力を獲得したためと思っている。試しに、アメリカにおけるユダヤ人・ユダヤ系アメリカ人の合計は、イスラエルの総人口700万人に匹敵するとされている。更には、世界的な企業の創業者や経営者、アインシュタインを始めとする学者・知識人、キッシンジャー等の政治家、ハリソン・フォードなどの文化人、等々アメリカを代表する若しくはアメリカに大きな影響力を持つ人も少なくない。トランプ大統領の長女も夫の影響を受けてユダヤ教に改宗したことは良く知られている。
 今回の衝突拡大は、バイデン大統領の外交力の欠如と軍事オプション選択に及び腰であることを、イスラエル・ハマス(支援国)の双方が見切った結果であると思っている。トランプ氏は、在イスラエル大使館のエルサレム移転やゴラン高原の占領地にイスラエルの主権を認める等イスラエル支援を明確にして「イスラエル有き」を前提にした中東和平を推進したが、ハマスもアメリカの強力な支援を得たイスラエルと事を構えることの不利から、和平交渉の席に着くとともに和平案に合意し一時的ではあろうが小康状態を維持してきた。しかしながら、バイデン大統領はイスラエル支援を表明したものの、多国間協議を重視するとして中東から一歩退く姿勢を見せるとともに5か月間もイスラエル大使を任命できないという不手際が双方の疑心暗鬼を招いたと思っている。

 トランプ氏のトップ・ダウン指揮を嫌う人々は調整型のバイデン氏登場に諸手を挙げて歓迎したが、今回の中東衝突を観る限りバイデン外交は緒線で破綻しかかっている。日本でも一部の人は同盟重視のバイデン氏登場でアメリカと対話の可能性が高まったとするが、何のことは無い「同盟重視は、敵対勢力との紛争からアメリカは一歩後退するので穴埋めは皆様でよろしく」に他ならず、中国との経済交流や尖閣諸島防衛には今まで以上の負担が要求されることになると思っている。
 今回の中東での衝突を他山の石として、力での現状変更を求める国に対して、対話による矯正・共生など空理・空論であることを、日本人も実感すべきであるように思う。
 日本も、イスラエル型「隠れ核保有国」となるべき時代を迎えつつあるのではないだろうか。


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