障害者用の郵便料金割引問題では、厚生労働省の障害者自立支援法制定当時の障害福祉部企画課長だった人(現在は雇用均等法・児童家庭局長)の犯行への関わりが重視されている。厚生労働省が関わっているとしても、企業が不正行為を行なったという事実は消えてなくなるものではない。企業はあらゆる手を尽くして(議員を動かし厚生労働省の現職高級官僚を動かしてまでも)不正行為を行なった。確信犯だといえる。このことについて厚生労働省の係官が逮捕される前に書いた原稿である。この文章は「国際障害者年を機に「障害」者の自立と完全参加をめざす豊中市民会議」の機関誌『夢のひきだし』(第13号、2009年06月発行、同会の総会が開かれた2009年06月20日でも会場で販売されていた)に書いたものである。大阪府豊中市の障害者を取り巻く政治情勢が端的に述べられているので、ぜひ全体を手にとってほしい。
■ 障害者用の郵便料金割引制度
2008年末からの障害者市民団体にとって大きな問題といえば、割引郵便料金だろう。かつて郵政省(現在は日本郵便事業会社)が認めた「心身障害者団体向けの郵便料金割引制度」を利用して、営利会社が不正に利益を得ていた事件が明らかになった。その影響で、障害者団体に対して認可条件を守るように厳しく対応するようになったことだろう。多くの障害者団体は、通信の発行に会員徴収を求めるようになり、事務局や責任者はかなり複雑な資料を作成する仕事に追われているという。
そのきっかけは、企業がこの制度を利用して不正に利益を得ていた事件である。広告会社や通信販売会社がこの制度を悪用して、大量にダイレクト・メールを送りつけ、購買を勧めていたという。
旧郵政省が郵便法にもとづき障害者市民団体の郵便料金割引制度を認める条件があった。それはいくつかある。(1)毎月3回以上の定期発行を行なうこと。これは各地で、障害者団体が連合して通信発行のための新たな組織をつくり、条件を整えている。(2)1回の発行部数が500部以上。これも多くの障害者団体が守っている。さらに(3)には、広告の割合が5割以下という。中には通信販売を主とする団体もあるが、多くは記事を書いて、これを守っている。問題は(4)である。発行部数に占める発売部数が8割以上となっている。どうも、有料購読者8割以上という条件を、問題になった営利企業は誤魔化していたようだ。
■ 障害者市民団体への無作法な影響
そこで、多くの各障害者市団体に「本当に有料の購読者が8割以上存在しているか」と、証拠を出すように郵便事業会社が調べている。各障害者市民団体は、それぞれの機関誌をとおして有料購読者の確保(あるいは購読料込みの会費徴収)を訴える騒ぎになっている。
私が知っている障害者市民団体に聞くと、かつてカンパをしてもらったのに対して、お礼の意味でその後も無償で機関誌類を送っている場合もあるという。あるいは、講演会の講演などでお世話にお礼として、さらには活動をなんらかの形で支援したもらったお礼という意味で、無償で機関誌類を無償で送り続けていた例もある。だから証明は難しい。
企業がその利益を産み増やすために、こうした抜け穴を模索した。その償いを乏しい資金の障害者市民団体が埋め合わせをしているように思う。こうした出来事は労働問題にも及んでいる。
■ 営利企業は「不正行為」の損害を市民に回す傾向が顕著すぎる
企業はいわゆる「雇用の弾力化」として、派遣労働者やパート労働者を大量に利用してきた。2008年の秋ごろから景気が悪くなったという理由で、雇い止めをしきりに行なっている。宿舎からそうした労働者を追い出す企業もあるという。
雇用のセーフティネットが不十分なためである。自治体は生活保護を弾力的に適用する。あるいは、住宅の手当てなどを行なう。多くの労働者が雇用の不安定性を訴えている。もちろん、そうした人々を支援することは良い。これまでにも、行政は制度を弾力的に運用する必要があったとさえ思う。
だが、そうした財源は全部、市民の税金を使っている。企業の税金は先進国と比較すると、少なくなった。中央政府も地方政府も財政は危機になっている。だから障害者市民への福祉なども縮小されてきたのだ。そのときに、緊急対策として失業者の救済にあたる必要もでてきた。政府がその人たちにも、たしかに支援を行なうことは必要だと思う。
だからといって、日本企業が派遣労働者やパート労働者などを利用できるときには利用しておいて、景気が悪くなったという理由でその人たちの雇用を切り捨てたのだ。あえていうと「企業の不正行為」にも相当するはずだ。企業の不正行為を市民の税金で補うことは、納得できない。
■ 障害者雇用にも積極的な企業であっただろうか
心身障害者市民団体むけの郵便料金割引制度を悪用した企業は、果たして障害者雇用を行なっていたのだろうか。1.8%の法定雇用率は実現していて当然だろう。それ以上に、たとえば、5%とか10%など、法定雇用率以上の高い障害者雇用を実現する社会的責任がある。記事によれば別の障害者用の団体を作っていたようであるが、自分の会社自身で障害者雇用を実現する責任があろう。あるいは、障害者市民が作成した製品を販売することに、力を入れていたのだろうか。すくなくとも、障害者市民団体が作った製品を、自社で大量に購入する義務はあると思う。
障害者市民団体は、今回の企業が行なった不正行為を黙って見逃すことを続けていると、障害者市民制度を悪用する傾向が増えると思う。この機会に障害者市民の雇用増大を実現したい。それが国連の障害者権利条約や障害者自立支援法をはじめ、現行の障害者制度の問題点を社会に明らかにする一つの方法とも考える。とくに企業にとって自分のこととして、考えてほしい。
■ 障害者用の郵便料金割引制度
2008年末からの障害者市民団体にとって大きな問題といえば、割引郵便料金だろう。かつて郵政省(現在は日本郵便事業会社)が認めた「心身障害者団体向けの郵便料金割引制度」を利用して、営利会社が不正に利益を得ていた事件が明らかになった。その影響で、障害者団体に対して認可条件を守るように厳しく対応するようになったことだろう。多くの障害者団体は、通信の発行に会員徴収を求めるようになり、事務局や責任者はかなり複雑な資料を作成する仕事に追われているという。
そのきっかけは、企業がこの制度を利用して不正に利益を得ていた事件である。広告会社や通信販売会社がこの制度を悪用して、大量にダイレクト・メールを送りつけ、購買を勧めていたという。
旧郵政省が郵便法にもとづき障害者市民団体の郵便料金割引制度を認める条件があった。それはいくつかある。(1)毎月3回以上の定期発行を行なうこと。これは各地で、障害者団体が連合して通信発行のための新たな組織をつくり、条件を整えている。(2)1回の発行部数が500部以上。これも多くの障害者団体が守っている。さらに(3)には、広告の割合が5割以下という。中には通信販売を主とする団体もあるが、多くは記事を書いて、これを守っている。問題は(4)である。発行部数に占める発売部数が8割以上となっている。どうも、有料購読者8割以上という条件を、問題になった営利企業は誤魔化していたようだ。
■ 障害者市民団体への無作法な影響
そこで、多くの各障害者市団体に「本当に有料の購読者が8割以上存在しているか」と、証拠を出すように郵便事業会社が調べている。各障害者市民団体は、それぞれの機関誌をとおして有料購読者の確保(あるいは購読料込みの会費徴収)を訴える騒ぎになっている。
私が知っている障害者市民団体に聞くと、かつてカンパをしてもらったのに対して、お礼の意味でその後も無償で機関誌類を送っている場合もあるという。あるいは、講演会の講演などでお世話にお礼として、さらには活動をなんらかの形で支援したもらったお礼という意味で、無償で機関誌類を無償で送り続けていた例もある。だから証明は難しい。
企業がその利益を産み増やすために、こうした抜け穴を模索した。その償いを乏しい資金の障害者市民団体が埋め合わせをしているように思う。こうした出来事は労働問題にも及んでいる。
■ 営利企業は「不正行為」の損害を市民に回す傾向が顕著すぎる
企業はいわゆる「雇用の弾力化」として、派遣労働者やパート労働者を大量に利用してきた。2008年の秋ごろから景気が悪くなったという理由で、雇い止めをしきりに行なっている。宿舎からそうした労働者を追い出す企業もあるという。
雇用のセーフティネットが不十分なためである。自治体は生活保護を弾力的に適用する。あるいは、住宅の手当てなどを行なう。多くの労働者が雇用の不安定性を訴えている。もちろん、そうした人々を支援することは良い。これまでにも、行政は制度を弾力的に運用する必要があったとさえ思う。
だが、そうした財源は全部、市民の税金を使っている。企業の税金は先進国と比較すると、少なくなった。中央政府も地方政府も財政は危機になっている。だから障害者市民への福祉なども縮小されてきたのだ。そのときに、緊急対策として失業者の救済にあたる必要もでてきた。政府がその人たちにも、たしかに支援を行なうことは必要だと思う。
だからといって、日本企業が派遣労働者やパート労働者などを利用できるときには利用しておいて、景気が悪くなったという理由でその人たちの雇用を切り捨てたのだ。あえていうと「企業の不正行為」にも相当するはずだ。企業の不正行為を市民の税金で補うことは、納得できない。
■ 障害者雇用にも積極的な企業であっただろうか
心身障害者市民団体むけの郵便料金割引制度を悪用した企業は、果たして障害者雇用を行なっていたのだろうか。1.8%の法定雇用率は実現していて当然だろう。それ以上に、たとえば、5%とか10%など、法定雇用率以上の高い障害者雇用を実現する社会的責任がある。記事によれば別の障害者用の団体を作っていたようであるが、自分の会社自身で障害者雇用を実現する責任があろう。あるいは、障害者市民が作成した製品を販売することに、力を入れていたのだろうか。すくなくとも、障害者市民団体が作った製品を、自社で大量に購入する義務はあると思う。
障害者市民団体は、今回の企業が行なった不正行為を黙って見逃すことを続けていると、障害者市民制度を悪用する傾向が増えると思う。この機会に障害者市民の雇用増大を実現したい。それが国連の障害者権利条約や障害者自立支援法をはじめ、現行の障害者制度の問題点を社会に明らかにする一つの方法とも考える。とくに企業にとって自分のこととして、考えてほしい。