障害者の雇用が伸び悩むなか、自ら働く場を生み出そうと奮闘するNPO法人(特定非営利活動法人)や小規模事業者がある。障害者だからこそできる強みや個性を生かした独自アイデアを、障害者らが事業化して「雇用の受け皿」を作ろうとしている。
事業安定化に向けたハードルは高いが、新しいビジネスモデルとして定着することが期待される。
上り旗などを車イスに掲げて街を動き回り、店舗やイベントなどの宣伝を行う広告事業を立ち上げたのは、NPO法人「自立支援センターおおいた」(大分県別府市)だ。
今年2月から「車椅子泉伝志団」というグループ名で本格的に事業を開始。車イスに乗ることができれば、重い障害を持つ人でも仕事ができる。地元飲食店のイベントやマラソン行事のPRなどを手がけた。
事業計画立案に携わり、自らも車イス生活を送る福田浩範さんは「ライバルはチンドン屋」と需要拡大に意欲を示す。「大分で足場を固め、重度障害者に働く場所をしっかりと提供できるように事業を広げていきたい」
ただ、地方景気の低迷で、各企業は広告を控える傾向にあり、宣伝料金の低価格志向などが事業運営の重しになりつつあるという。
IT(情報技術)を活用した各種支援サービスを行うミームス(京都府長岡京市)は、発達障害児童向けのマルチメディア教材・図書の作成、支援事業を手がけている。
自閉症や統合失調症など心に障害がある人にスタッフとして活躍の場を提供する。「彼らはいい意味でこだわりを持ち、ITの仕事に向いている」と同社代表の高松崇さんは認める。いまや古株となった人は、新人スタッフに業務を教えられるまでになっているという。
高松さんは「ジワジワと事業を大きく育てていければいいと思っている。障害を『強み』として生かせるビジネスを生み出していきたい」と意気込む。
目白大学人間学部で障害者雇用に詳しい松矢勝宏教授は、「いろいろな分野で障害者を雇用する試みが広がっていくのは社会的にも有意義なことだ」と話している。
◇
【予報図】
■中小での拡大 法改正で促す
大企業を中心に障害者雇用への意識は高まっているが、中小企業では対応が困難な実態が浮き彫りになっている。
厚生労働省によると、障害者雇用が義務付けられている企業の障害者雇用率は、昨年6月1日現在で前年比0.04ポイント増の1.63%となり、4年連続で過去最高を更新した。
従業員1000人以上の大企業では、平均雇用率が1.83%と法定の1.8%を超えたが、中小企業では雇用率が低迷。同100人以上300人未満の企業は平均1.35%にとどまる。
企業の雇用義務拡大を促すため、改正障害者雇用促進法の一部が7月1日から施行された。パートやアルバイトなど短期時間労働者が雇用率の計算対象に加わり、法定雇用率の未達成企業に課せられる給付金の支払い対象も拡大して201人以上の企業にも適用される。
中小企業は障害者雇用対策の強化が求められる。
SankeiBiz -
事業安定化に向けたハードルは高いが、新しいビジネスモデルとして定着することが期待される。
上り旗などを車イスに掲げて街を動き回り、店舗やイベントなどの宣伝を行う広告事業を立ち上げたのは、NPO法人「自立支援センターおおいた」(大分県別府市)だ。
今年2月から「車椅子泉伝志団」というグループ名で本格的に事業を開始。車イスに乗ることができれば、重い障害を持つ人でも仕事ができる。地元飲食店のイベントやマラソン行事のPRなどを手がけた。
事業計画立案に携わり、自らも車イス生活を送る福田浩範さんは「ライバルはチンドン屋」と需要拡大に意欲を示す。「大分で足場を固め、重度障害者に働く場所をしっかりと提供できるように事業を広げていきたい」
ただ、地方景気の低迷で、各企業は広告を控える傾向にあり、宣伝料金の低価格志向などが事業運営の重しになりつつあるという。
IT(情報技術)を活用した各種支援サービスを行うミームス(京都府長岡京市)は、発達障害児童向けのマルチメディア教材・図書の作成、支援事業を手がけている。
自閉症や統合失調症など心に障害がある人にスタッフとして活躍の場を提供する。「彼らはいい意味でこだわりを持ち、ITの仕事に向いている」と同社代表の高松崇さんは認める。いまや古株となった人は、新人スタッフに業務を教えられるまでになっているという。
高松さんは「ジワジワと事業を大きく育てていければいいと思っている。障害を『強み』として生かせるビジネスを生み出していきたい」と意気込む。
目白大学人間学部で障害者雇用に詳しい松矢勝宏教授は、「いろいろな分野で障害者を雇用する試みが広がっていくのは社会的にも有意義なことだ」と話している。
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【予報図】
■中小での拡大 法改正で促す
大企業を中心に障害者雇用への意識は高まっているが、中小企業では対応が困難な実態が浮き彫りになっている。
厚生労働省によると、障害者雇用が義務付けられている企業の障害者雇用率は、昨年6月1日現在で前年比0.04ポイント増の1.63%となり、4年連続で過去最高を更新した。
従業員1000人以上の大企業では、平均雇用率が1.83%と法定の1.8%を超えたが、中小企業では雇用率が低迷。同100人以上300人未満の企業は平均1.35%にとどまる。
企業の雇用義務拡大を促すため、改正障害者雇用促進法の一部が7月1日から施行された。パートやアルバイトなど短期時間労働者が雇用率の計算対象に加わり、法定雇用率の未達成企業に課せられる給付金の支払い対象も拡大して201人以上の企業にも適用される。
中小企業は障害者雇用対策の強化が求められる。
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