◎決定取り消し 市を提訴/橋本の男性
障害者自立支援法に基づく電動型車いすの購入費の支給決定を橋本市が取り消したのは違法だとして、全身まひの障害がある橋本市の上田新(あらた)さん(24)が20日、決定の取り消しを市に求める訴えを和歌山地裁に起こした。代理人の長岡健太郎弁護士によると、車いすの費用の支給を求める訴訟は全国初。
訴状などによると、上田さんは5歳の時に池に転落。後遺症で全身にまひなど重度の障害が残り、手動や電動型の車いすで生活をしている。
昨年9月、古くなった手動の車いすをつくり変える際に、市職員から新たにリクライニングの機能が付いた電動型にするようアドバイスを受け、市に購入費の支給を申請した。
上田さんの電動車いすの操作能力の判定について、市から依頼を受けた県身体障害者更生相談所は同12月、「操作能力が不十分」と判断。これを踏まえ市は、上田さんが通う障害者支援施設の敷地内で使用することを条件に、いったん支給を決定した。だが今年3月になって、「(車いすで)他者に危害を加えた場合、市への責任追及から免れることはできない」として決定を取り消した。5月に上田さんは市に異議を申し立てたが、7月に却下された。
上田さんは、同相談所の判定が覆された訳ではないのに市が支給決定を取り消したのは「裁量権の逸脱濫用(らんよう)があり違法」と主張している。
20日に会見した上田さんの母・圭美(たまみ)さん(54)は、「市は支給すると決定したのに、起こすはずのない事故の被害を恐れ、私の現状を取り上げた市の責任は大きい」と、上田さんが裁判を起こした理由を代読した。
提訴について市福祉課の櫻井誠課長は「訴状を見ていないので、コメントは差し控えたい」としている。
朝日新聞- 2012年09月21日