東京大学医学部 OB・OG有志、実名で要望
亀田総合病院(千葉県鴨川市)の副院長を務めていた小松秀樹氏が、同病院を経営する医療法人鉄蕉会から懲戒解雇処分を受けた問題で(『小松氏に懲戒解雇処分、「到底納得できず」を参照)、小松氏の出身大学である東京大学医学部の同期医師ら4人が10月26日、実名で、懲戒解雇処分の撤回を求める声明を公表した。その全文は以下の通り。
小松秀樹氏は、これまでにも医療崩壊・医療の限界・慈恵医大青戸病院事件等の著作を通じて医療界の現状に大きな警鐘を鳴らし、日本の医療をよい方向に牽引してきた実績がある。その氏が乞われて亀田総合病院に活動の場を移したとき、我々は亀田総合病院が氏の業績・名声・叡智という大きな付加価値を手にして、一回りも二回りも輝いたと感じた。その後の氏の活躍、東日本大震災での透析患者緊急受け入れ、老健疎開作戦、知的障害者施設利用者300名の受け入れ、南相馬総合病院との連携、安房10万人計画などの実績は我々の期待を超えるものであった。そしてこのことこそが、多くの若い医師たちを亀田総合病院に引き付けてきた引力であった。その氏の功績を一顧だにせず懲戒解雇するということは常識ではあり得ない。
懲戒解雇の理由たるや、権力に異論を唱えることが補助金をもらう立場にある民間医療法人の利益を損なう懸念があるということ以外には何もない。懲戒権者は医療法人の利害に対する懸念が、憲法で保障された個人の権利を上回ると考えているとしか思えない。小松秀樹氏が公開した処分通知書によれば、懲戒理由の(1)は「本会の名誉を損なった」とのことであるが、行政の違法行為を糾弾することは、医療法人鉄蕉会の名誉を高めこそすれ、損なうことにはならない。(2)行政の非難を慎めとの厳命に反し、行政を非難したことは、行政の不当に対して行うことのできる当然の言論行使であり、この懲戒解雇が正当化されるならば勤務医の言論と批判の自由に対するあからさまな制限につながる。(3)「個人名を挙げて非難することは不当である」との理由に関しては、行政に携わる者も医療に携わる者も、等しく名札等で実名を明らかにしながら、業務を行っているのであり、不適切なことがあれば、実名をもって対応し、批判には誠意をもって応えることが、社会に常識化しているわけであるから、不適切な行為に対しては実名を明らかにして抗議することには何ら問題がなく、これを懲戒理由にすることが出来る筈がない。
このような根拠のない不当な理由の懲戒解雇は、これまでの小松秀樹氏の亀田総合病院における真摯な努力、その結果としての功績に対して、当然の礼を失するのみでなく、その反作用として医療界における亀田総合病院の名誉と信頼を大きく傷つけ、若い医師たちをひきつけてきた中核的存在を失うことによって、かつての輝きが幻想に過ぎなかったことを医療界に知らしめるものである。
我々はここに双方の名誉のため、小松秀樹氏の懲戒解雇が速やかに撤回されることを求めるものである。
2015年10月26日 東京大学医学部 OB・OG有志