「鶴丸式製図法」を開発し障害者向けの服のデザイン、普及に努めたとして、服飾デザイナーの鶴丸礼子さん(59)=大分市=が、3日発表された第50回吉川英治文化賞(吉川英治国民文化振興会主催)に決まった。県内からは故中村裕さん(1975年)、故浅田隆子さん(92年)に続き24年ぶり3人目。鶴丸さんは「道半ばでの受賞で恐縮しているが、障害者の服作りをしていることを知ってもらう機会になれば」と話している。
鶴丸さんは、高齢者や体にハンディがある人でも着られる服作りを20年以上続け、本紙生活面で「幸福の服」を連載している。46カ所の採寸で補正せず体にフィットした服を作り上げる鶴丸式製図法を考案。衣服に悩む人たちにおしゃれを楽しむ喜びを届けている。
鹿児島市生まれ。仏ブランド「ジバンシー」のオートクチュールのアトリエに入社後、80年に独立。両親が暮らす大分市でオリジナルブランドを立ち上げた。藍染めの創作服を手掛け、建設会社のコンサルタントとしてバリアフリーの家造りにも携わる中、相談を受けて始めたのが障害者の服作りだった。
最初は全てボランティア。合う服がないことに悩む障害者は多く、細やかな仕事が喜ばれた。「難病を抱えた人が再びおしゃれを楽しむようになり、寝たきりの男性は亡くなる際、作った衣服をひつぎに納めてくれた」という。
2011年に市内府内町にオーダーメードの店「服は着る薬」をオープン。今年4月からは竹田市に新たな拠点を設け、技術者の育成や、衣服が人体に及ぼす影響の調査など活動を拡大する予定。障害者のためにあつらえた服への保険適用に向けた環境整備や、体にハンディがある人も学べる洋裁学校の開設といった目標も見据える。
鶴丸さんは「まだ目標への階段を上り始めたばかり。応援してくれる人のためにも実現させたい」と意欲を新たにしていた。
贈呈式は4月上旬、東京都内のホテルで開かれる。
※この記事は、3月4日大分合同新聞朝刊21ページに掲載されています。