障害者だけのパフォーマンス集団「劇団態変」(大阪市東淀川区西淡路)が3月11~13日、東京都杉並区の座・高円寺1で「ルンタ(風の馬)~いい風よ吹け~」を上演する。12年ぶりの東京公演。主宰の金満里さんは「戦争に向かおうとするなど、弱者を排除しようとする空気が鮮明になりつつあるが、そんな時代だからこそ、文明批判でもあるこの作品を(障害者である)私たちが、日本の中心でやることに意味がある。発展や経済的な豊かさとは違う価値観があることを発信できれば」と話している。
劇団態変は1983年に旗揚げ。芸術監督も務める金さんの「身体障害者の障害自体を表現力に転じることで、未到の美を創り出すことができる」という着想に基づき、障害者自らが演じるパフォーマンス集団として大阪を中心に活動してきた。国内はもとより、ケニア、イギリス、スイス、ドイツ、韓国などにも招かれて公演。せりふのない、身体だけの抽象表現は、ダンスや舞踊とも違う態変ならではの表現として高い評価を得ている。
上演する「ルンタ-」は自然の摂理に基づいて生きるチベットの人たちの生活や文化をモチーフに金さんが創作。14年に大阪で初演した。
2年ぶりの再演となる今回は、態変のメンバーを舞台上で介助する黒子やエキストラも東京で募集。現地の人たちも巻き込みながら、より広範囲への発信を目指している。
「ルンタ-」の初演でも、音楽を担当したミュージシャンの山本公成さんが、今公演のために新たなバンドを結成。チベット出身の仏画師ウゲン・ナムゲンさんの絵も舞台を彩る。
2012年の厚生労働省の方針変更で福祉制度の補助金が受けられなくなり、財政状況が悪化。定期出版物の発行や賛助会員を募るなどして運営を続けており、大阪以外での公演も簡単には行えなくなった。
今回も、有志による「態変in東京応援団」を募って実現させた“満を持して”の公演。金さんは「人間や文明のるつぼのような東京は華やかに見える半面、非常に疲弊しているようにも見える。人々が心の中で本当に求めているものは何か。人と人が緩やかにつながりあった大阪の土壌で育まれた態変の作品を、思い切りぶつけてみたい」と意気込んでいる。
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チケットは一般4千円、シルバー3500円、学生3千円。12日には、作家の田口ランディさんと金さんによるアフタートークも予定されている。問い合わせは電話06(6320)0344、態変officeイマージュ。