4月に改正障害者雇用促進法が施行されるのを前に、障害者の職業訓練と就職支援を専門に行う「国立職業リハビリテーションセンター(職リハ)」(所沢市)は、同センターで初となる「企業向け 障害者雇用支援セミナー」を開いた。講演や訓練生との情報交換会を通じて、改正法のポイントや職リハの取り組みを紹介した。
■高まる関心
障害者雇用に対する企業の関心は年々高まっている。CSR(企業の社会的責任)の高揚や障害者雇用促進法の改正、少子高齢化に伴う労働力人口の減少などが背景にある。
セミナーはこうした状況を受け、埼玉労働局との共催で実施。改正法の内容と合わせ、職リハの取り組みを理解してもらい、障害者雇用の促進を図るのが狙いだ。県内や都内の企業を中心に人事担当者ら約60人が参加した。
今回の改正法では、雇用の分野で障害者に対する「差別禁止」や「合理的配慮の提供義務」を規定。〝障害者だから〟という理由で不当な扱いをすることが禁止され、企業には相互理解のもとで障害者が働きやすいよう、ハード面やソフト面で配慮する義務が課せられる。
さらに相談窓口の設置など、障害者からの相談に適切に対応するのに必要な体制の整備が求められ、苦情に対しては自主的に解決することが努力義務とされている。
基調講演では、中央障害者雇用情報センターの礒辺豊司・総括障害者雇用エキスパートが「障害者雇用の促進と就労支援機器の活用」をテーマに、改正法のポイントや支援機器の有効性を語った。
礒辺氏は視覚障害者向けの拡大読書器や聴覚障害者用の音声認識ソフトを紹介し、「支援機器を活用することで、企業戦力として能力を発揮できる人は多い」と説明。障害者に対しても健常者に対しても「配慮の心は同じ」とし、「心のバリアフリーこそが最も大事」と強調した。
■企業と訓練生が交流
続いて参加者は4グループに分かれて施設内を見学。訓練生との情報交換会では、配慮してほしい点や希望職種について代表の訓練生から話を聞き、質疑応答も行われた。
聴覚障害のある電子機器科の浦田成幸さん(44)は手話通訳者を通じて、「回路設計や電子CADに関わる仕事に就きたいです」などと説明。発表後は「企業の方と交流ができ、大変貴重な経験をした」と笑顔を見せた。
分科会では、訓練生を採用した総合印刷会社「光邦」(新座市)の三谷純男執行役員からの報告や、職リハの担当者による個別相談もあった。
■高い就職率
職リハは1979年の開所以来、企業ニーズに合った職業訓練を実施している。期間は原則1年間。現在は「メカトロ系」「建築系」「ビジネス情報系」「職域開発系」の4訓練系で計20コースを設け、全国から受け入れている。2014年度は171人が職に就き、就職率は92・9%に上るなど、高い実績を誇る。
セミナーに参加した松屋フーズの特例子会社「エム・エル・エス」(東松山市)の宮腰智裕常務は「これほど専門的に職業訓練を行っているとは驚いた。訓練生が夢と希望を持ち、熱心に取り組んでいることも分かった」と感想を話した。
職リハの上市貞満所長は「企業の方との交流は訓練生の自信にもつながる。今後もこうした機会を設け、障害者雇用の促進に貢献したい」としている。個別の見学や障害者雇用に関する相談も、随時受け付けている。
問い合わせは同センター(04・2995・1207)へ。
企業の人事担当者らに対して熱心に説明する訓練生(右)
2016年3月17日 埼玉新聞