ゴエモンのつぶやき

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障害者の性、男性不妊の研究・開発に取り組む「TENGAヘルスケア」の挑戦

2017年06月03日 01時59分11秒 | 障害者の自立

■TENGAを使って"障害者の性"を豊かに

 アダルト雑貨のメーカー「TENGA」が、医療・福祉分野に本格的に進出しようと、新会社「TENGAヘルスケア」を設立した。まだ社員数は数名の規模だが、代表取締役の佐藤雅信さんは『「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というTENGAのコンセプトの"誰もが"の通りに、障害のある・なしや、年齢、性別問わず、性を変えていきたい」と意気込む。

 同社の事業の柱のひとつとなっているのが"障害者の性"だ。障害者の60%以上が年収100万円以下であり、男性の障害者が風俗店を利用するのは容易ではない。そこで佐藤さんたちはTENGA製品をその解決に使えないかと考え、障害者が豊かな性生活が送れるよう活動するNPO法人の熊篠慶彦さんの協力も得ながら、製品改良を進めている。手が不自由な人がTENGAを使えるようなストラップも開発した。

 都内の障害者施設で利用者たちにアンケートを実施、製品の感想を尋ねた。評価は決して良いと言えるものではなく、問題点も数多く見つかったが、意見や感想はどれも改良のための貴重なデータだ。

 同社の中野有沙さんは「障害者の方々と関わっていく中で、よく挙げられるのが家族内での性的介助の問題です。家族同士でも話し合うのが難しい、すごくプライベートな問題なので、誰に相談すればいいのかもわからず、蓋をされがちです」と話す。

 ■自身の「膣内射精障害」の経験を糧に

 TENGAヘルスケアのもうひとつの柱が"医療分野"だ。がんや男性不妊の当事者のために、リハビリ用の製品を研究・開発している。

  厚生労働省の調査によれば、男性不妊の原因の1割近くが射精の障害で、その多くは「膣内射精障害」だと言われている。性行為の刺激では射精が出来ず、自然な形での妊娠が難しくなってしまうのだ。

 同社に協力、TENGAを用いたリハビリにも取り組んでいる獨協医科大学越谷病院の小堀善友医師は、膣内射精障害の原因について「一番多いのは俗にいう『床オナ』。勃起はしないまま性器を床などにギュって押し付けて射精してしまうことに慣れてしまっている方が多い。ただ、受診に来るのは、どうしようもなくて困っているという人が多く、氷山の一角ではないか」と話す。

 実は佐藤さん自身も、男性不妊の当事者だった。"膣内射精障害"と呼ばれる症状で、幼い頃に知ってしまった、水流による強い刺激を用いた誤ったマスターベーションのために、女性との性行為で射精に至ることが難しくなってしまったという。

 「初めて自覚したのは初体験の時。快感を感じられない感じで、"あれっ"と。いくら腰を振っても射精に到達することは出来ませんでした。終わりのない戦いの中で、痛くなって続けられないことも何度もありました。妻もよく我慢して対応してくれたなと思います」と振り返る。

  そこで佐藤さんは、射精寸前までTENGA製品を使用、すぐに挿入するという方法で妻との間に生命を授かった。完治するのは難しいと言われる膣内射精障害だが、TENGAの刺激の強いものから弱いものへ段階的に慣らしていくという方法で、完治したケースもあり、研究論文も発表されている。

 佐藤氏さんは「正しい情報を当時知っていれば、こんなことにならなかったという後悔もあるので、若い人にはそういう思いをさせたくない。自分の経験も活かしていきたい」と話す。

 ■2020年には世界へ向けて発信

 TENGAヘルスケアは羽田空港に近い東京・大田区の廃校跡にオフィスを移す予定だ。親会社から離れるのには意味があるという。

 「会社の一部門というよりは、新会社を設立して注力していくんだっていうのを対外的にも見せていきたい」(佐藤さん)

  医療機器としての認可も目指し、2020年には売上10億円を目標にしている。

  さらに2020年には「世界性機能学会」の大会が、日本で行われるという。同社はそのメインスポンサーのひとつになっている。オリンピック・パラリンピックが東京で開催される年を皮切りに、TENGAは世界へ向けて発信し始める。

(AbemaTV/AbemaPrimeより)


障害者差別解消へ 静岡に窓口開所 当事者双方と面談も

2017年06月03日 01時47分09秒 | 障害者の自立

 静岡県は1日、障害を理由にした差別に関する相談窓口を静岡市葵区の県総合社会福祉会館シズウエルに開いた。障害特性に精通した社会福祉士が電話相談だけでなく、双方の当事者と面談して事案解決に当たるのが特徴。民間事業者からの合理的配慮に関する相談も受け付け、差別の未然防止も進める。
 県によると、2016年度、県と市町の職員が対応する既存の相談窓口に寄せられた相談は計103件。山口重則県健康福祉部長は開所式で「相談に至らない分を含めて、相当数の差別事案がある」と指摘した。運営を受託した社会福祉士会の山本たつ子会長は「一口に差別解消といっても難しいが、(新たな)窓口開設が社会全体で考えるきっかけになれば良い」と話した。
 複数の障害者団体が事務所を置くシズウエルには、障害のある人が日常的に訪れる。県担当者は「相談に対するハードルが下がり、多くの障害者の声が聞けるかもしれない」と期待する。
 4月に施行した県障害者差別解消推進条例では、障害を理由にした差別的な取り扱いを禁止する。行政機関や民間事業者などに、負担にならない範囲で障害者に必要な便宜を図る合理的配慮の提供も求めている。
 窓口の開設日時は毎週火、木、金曜の午前10時~午後4時。電話は<電054(252)9800>、ファクスは<電054(252)0016>へ。

相談窓口の看板を除幕する山本たつ子会長(左)と山口重則健康福祉部長

2017/6/2    @S[アットエス] by 静岡新聞


一般社団法人ペガサス 障害者雇用を全面サポート

2017年06月03日 01時40分25秒 | 障害者の自立

企業と連携 実習先が充実

 精神障害・発達障害者の就労支援を行う市内唯一の事業所「ペガサス」。日の出町に開設してから約2年で20人超の利用者を社会復帰させてきた。

 同事業所の最大の特徴は主に市内を中心とした企業と連携を密にして、実習先が豊富にある点だ。訪問介護や調理補助、農作業まで多くの職種が体験できるよう幅広いネットワークを築き上げている。これにより利用者一人ひとりが目指す業界に近い企業とマッチングを図り、効率的な就労体験が可能となっている。

 また実習前には体系だった施設内トレーニングを実施。基本的なビジネスマナーや電話応対訓練に加え、ストレス対処プログラムなど独自の授業を用意して、社会のあらゆる状況に対応できる力を身に着けている。

現在就職している元利用者のほとんどが継続的に働いていることもあり、担当者は「2年間の積み重ねが形になってきている」と手応えを感じている。

就活セミナー実施

 同法人では6月22日(木)、7月20日(木)に精神障害者・発達障害者の就職をテーマにした無料セミナーをペガサス横須賀センターで開催する。業界の一線で15年携わってきた代表理事の木村志義氏が障害者雇用の現状説明に加え、同事業所のこの2年の実績や企業、行政など他機関との連携事業などについて話す。「当事者の方はもちろん、家族や支援機関、障害者雇用に関心のある企業の方に来てもらえれば」と木村氏。

 各回時間は午後6時半から8時まで(内容は同じ)。申込みは左記電話から。

■ペガサス横須賀センター 日の出町1の12 小林ビル2F 【電話】046・854・9061

2017年6月2日    タウンニュース


障がい者をチャットボットとBeaconで救う「&HAND」--助け合いの“ジレンマ”を解消

2017年06月03日 01時27分23秒 | 障害者の自立

 「イノベーションを生み出して社会課題を解決し、世の中を変える」ーー言葉で書くと驚くほど簡単だが、これを本当に実現しようとすると、途方もなく難しい。なぜならば、世の中を変えるためには、テクノロジによって便利なツールを生み出したり仕組みを変えたりするだけでは十分ではなく、そのツールや仕組みを世の中に浸透させ、私たち一人ひとりの意識や日常的な習慣が変わらなければならないからだ。

 LINEが3月に開催した「LINE BOT AWARDS」においてグランプリを獲得したプロジェクト「&HAND(アンドハンド)」も、障がい者、高齢者といった社会的弱者が安心して暮らせる世の中を目指して、社会課題を解決するさまざまなツールを開発し、社会に実装しようとしている。有志が集まって結成されたこのプロジェクトは、どのような思いや考えで社会の変革を目指そうとしているのか。プロジェクトメンバーであるタキザワケイタ氏、松尾佳菜子氏、池之上智子氏、久樂英範氏に話を聞いた。

「&HAND」
「&HAND」

ワークショップから誕生した有志プロジェクト

 &HANDのメンバーは、ワークショップデザイナー、サービスデザイナー、UI・UXデザイナー、グラフィックレコーダー、エンジニアなどそれぞれ全く異なるバックグラウンドを持つが、いずれのメンバーも業界を代表する大手企業でそれぞれの仕事に従事しながらプロジェクトに参加している。集まったきっかけは、タキザワ氏が1年前に主宰したワークショップ。そのときに作ったチームが、のちにGoogleが主催したアイデアイベント「Android Experiments OBJECT」において、2作品でグランプリを獲得することになる。その1つの作品「スマートマタニティマーク」を考案したことが、&HANDのプロジェクト立ち上げの原点にあるという。

プロジェクトリーダーであるタキザワ氏
プロジェクトリーダーであるタキザワ氏

 スマートマタニティマークは、妊娠中の女性が電車内でスイッチを押すと、対応するスマートフォンアプリを導入している近くのユーザーにBeaconによってプッシュ通知が届き、スムーズに席を譲ることができるというコンセプトで考案された。“席を譲ってあげたい”と思っても車内でなかなか声を上げにくい状況を、このツールによって解決することを目指しているという。「この発想を、聴覚障がい者や視覚障がい者、ヘルプマークを所持している方をサポートするツールにも拡張しようと考え、&HANDのプロジェクトを立ち上げた」と、タキザワ氏は語る。

 現在開発を進めている&HANDは、聴覚障がい者や視覚障がい者をはじめ、身体的な困難や精神的な不安を抱えている人がLINE Beaconに対応する端末を携帯し、手助けが必要な状況でBeaconをONにすると、周辺にいる“サポーター”と呼ばれる&HANDのアカウントを友だち登録しているユーザーにメッセージが届きサポートを促すという、チャットボットを活用した人助けの仕組みだ。たとえば、視覚障害者が移動の際に持っている白杖(前方の路面を確認するために持っている杖)にBeaconを取り付けることで、周辺のサポーターが視覚障害者の存在を認知し、スムーズに手助けができるという発想だ。

 プロジェクトではタキザワ氏がリーダーを務め、松尾氏は実証実験の企画や社会ニーズの調査、池之上氏はスマートフォンアプリのデザインや製品全体のコミュニケーションデザイン、久樂氏は企画した製品プロトタイプについて技術的な検証をしたり、開発協力してくれる企業への制作ディレクションをしたりするなど、それぞれのバックグラウンドを活かしてプロジェクトに貢献しているという。プロジェクトにはこの4名のほかに、エンジニアである竹尾梓氏、デザイナーである村越悟氏が参加している。

 特にタキザワ氏は、対外的な窓口を担いパートナーシップの拡大に注力したという。「このようなプロジェクトは、チームの中だけで形にするのには限界があると感じていた。いかにして外部の企業や人を巻き込めるかが大きなテーマ。ワークショップを通じて、JR東日本や富士通といった大手企業やUXデザインを専門とする研究者と交流しながら自分たちにできないことを可能にし、多くの方々を巻き込みながらプロジェクトを大きくしていくことができた」(タキザワ氏)。

“助け合い”を巡るジレンマをデバイスによって解消する

&HANDが制作した製品のプロトタイプ。中央の杖が視覚障害者の使用する白杖で、Beacon発信機を杖の柄の上部に取り付ける
&HANDが制作した製品のプロトタイプ。中央の杖が視覚障害者の使用する白杖で、Beacon発信機を杖の柄の上部に取り付ける

 これまで書いてきた通り、&HANDが目指しているものは、助けを必要としている人と手助けをしたい人がつながるインフラを作り、助け合いが日常的に生まれる社会を生み出すことだ。「やさしさからやさしさが生まれる社会へ」という&HANDが掲げるビジョンには、多くの人が行き交う社会の中で、助けを必要としている人に対して手を差し伸べたいと考えている人が、なかなか一歩が踏み出せないという社会課題がある。そうしたジレンマをテクノロジによって解消し、助け合いが自然と生まれる社会を生み出そうというのが、&HANDのゴールだ。「2020年までのインフラ整備を目標に、パートナー企業との提携などを検討しているところだ」(タキザワ氏)。

 タキザワ氏によると、スマートマタニティマークや白杖用Beaconなどをはじめ、助けを必要としている人のニーズに合わせてデバイスの機能や形を複数考案しているという。たとえば、白杖用Beaconについては、実際に視覚障害者に話を伺った上で形やボタンを置く位置などを検討しているのだそうだ。また、手助けをする側に対しても、アプリを通じてどのように障害者をサポートするのが良いかなどのアドバイスを提供しているという。「通知を受けたがどのようにサポートすべきかわからないというシーンが想定され、サポートする人に心の準備をしてもらい、自分の周りに助けを必要としている人が数多くいるということに気づいてもらえるようなUXを設計している」(池之上氏)。

 そして、これらのデバイスで大きな役割を果たすのが、Beaconだ。一般的に、Beaconの位置情報送受信機は店舗などの施設で使用されることが多く屋内位置情報サービスとして活用されている。しかし&HANDは、手助けを必要とする人が直接Beaconを所持して自分自身を発信する手段として利用する。“Beacon発信機を持ち歩く”という発想が、&HANDが手掛けるデバイスの心臓部であると言える。

持ち歩きBeaconを発想した経緯を説明する久樂氏
持ち歩きBeaconを発想した経緯を説明する久樂氏

 この点について、久樂氏は「世の中には“忘れ物防止Beacon”という持ち歩くタイプのBeaconがあるが、それだけでは個人の問題解決に留まりサービスに広がりがないと感じ、持ち歩きBeaconの可能性を模索していた。最初に誕生したスマートマタニティマークはこうした模索の中から生まれたものだ」と説明。技術的なハードルで最も大きかったのは電池持ちだったそうで、スマートマタニティマークであれば妊娠初期と妊娠後期が最も必要とされることから、妊娠中に常に必要とされるものではないという仮説のもと、電池持ちを計算したのだそうだ。

世の中から、新たな悲しみをなくすために

 タキザワ氏によると、プロトタイプが完成しているスマートマタニティマークや白杖用Beaconについて、実証実験を繰り返しながらUXの質を高めることを目指しているという。池之上氏は、「鉄道会社からは、(スマートマタニティマークよりも)まずは視覚障がい者へのサポートだという声をもらっている」と説明。白杖用Beaconの実用化にかける思いについて、次のように語る。

白杖用Beaconへの思いを語る池之上氏
白杖用Beaconへの思いを語る池之上氏

 「LINE BOT AWARDSの審査員の方に聞いた話では、視覚障がい者は年に数回とてもブルーになるときがあるという。それは、障がい者コミュニティにいる方が転落事故で亡くなったとき。そういう方が身近にいると、自分も視覚障がい者のために何かしたいという衝動が生まれるが、実際のところ何もできないもどかしさがある。そういう思いを抱えている人がいるということが、白杖用Beaconを広めたい背景にある。鉄道会社にとって、視覚障がい者へのサポートは命に関わることであり、最優先に考えている」(池之上氏)。

 記憶に新しいところでは、1月にJR蕨駅(埼玉県)で盲導犬を連れた視覚障がい者の男性がホームから転落し、電車と接触して死亡するという事故が発生し、鉄道各社は視覚障がい者へのサポートや声掛けの啓発に力を入れている。しかし、駅員だけでのサポートには限界があるとも、池之上氏は指摘する。

 「実は大きい駅などでよく観察すると、駅員は乗客が改札を通過する際に視覚障がい者であることを確認して、構内で連携して見守るようにしている。ただ、すべての駅が潤沢に駅員を配置しているわけではないし、現実には対応に限界がある。白杖用Beaconはまずは鉄道会社から導入を目指しているが、今後は一般の方にも協力してもらえるような仕組みにしていかなければならない」(池之上氏)。

関心の低い健常者の意識を、少しずつ変えていく

 池之上氏が語る通り、このような仕組みは社会に理解してもらい、参加してもらわなければその価値は発揮されない。今後どのように世の中に広めようとしているのだろうか。このような仕組みは、健常者の中でも特にこうした課題への意識が高くなければ、なかなか興味を持ちづらい。

 この点について、池之上氏は「これは(デバイスの普及にとって)一番大きな壁であり難しい課題だが、まずは駅員のように職業としてサポートできる立場の人に協力をしてもらう。また、ボランティア団体や障がい者が身近にいる方など、障がい者のサポートに対して関心の高い一般の方に参加してもらうことで、周囲を巻き込んでいきたい」と説明。全く障がい者との関わりがなく関心もない人に対して、いきなり障がい者を支援するサポーターになることを呼びかけるのは難しく、「そういう方々には、まず(&HANDの)存在を知ってもらうことが大切」と語る。

 こうした啓蒙・プロモーションについてはLINEも協力を表明している。池之上氏は「(LINEを通じて)少しでも&HANDの活動に触れていただき視覚障がい者の存在に気付いてくれれば、彼らの日常生活(の困難さ)に関心を持つようになる。そうすれば、その中からサポートしたいという意識を持つ人が現れて、ちょっと社会は良いほうに変わるかもしれない」と期待を寄せる。ほんの少しの意識の変化が積み重なることで、社会全体の意識変化を実現する可能性を生み出すのだ。

 日本は、自ら“おもてなしの国”と自負するように、助け合い・支えあいが当たり前のようなイメージがあるが、実際に自分が街中で困難に直面したときにどれだけの人が助けくれるだろうか。松尾氏は実体験をもって次のように説明する。

「&HANDのデバイスは自分たちのためのツールでもある」と松尾氏
「&HANDのデバイスは自分たちのためのツールでもある」と松尾氏

 「たとえば、電車に乗っていて突然貧血に襲われてめまいを感じ座り込んでしまったとき、周りにいる大勢の人は“この人、どうしたんだろう?”という眼で見ていてもなかなか助けてくれない。ランキングなどのデータで見ても、日本は世界の中で決して“優しい国”とは評価されていない。イメージとは裏腹だが、実は自分に照らしても、あかの他人に対して少しドライな部分はあるのかもしれない。&HANDのデバイスは、身近な他人に対して日常的に手助けができる人間になりたいという自分たちの願望の表れでもある」(松尾氏)。

 つまり、&HANDは障がい者のためのツールという側面以上に、健常者が障がい者に対して当たり前のように身近なサポートができるように、日常の意識や行動を変えていくことが重要なテーマなのだ。「まずは問題提起が大事だが、そこから世の中の意識を変え、行動を変えるところまでがプロジェクトの大きな使命」(タキザワ氏)。

ゴールは「プロジェクトが必要なくなること」

 池之上氏によると、LINE BOT AWARDSでグランプリを受賞したことを受けて、障がい者と向き合っている団体や障がい者自身からも多数の問い合わせが寄せられ、反響の大きさや関心の高さを実感しているという。一方、&HANDに対して障がい者のコミュニティからは厳しい眼も向けられている。「“また(過去の障がい者支援の試みと)同じようなものが出てきた”という反応も少なくない。『中途半端にやって辞めるのならば、やめてくれ』という声もいただく。厳しい意見だが、プロジェクトをやりきれという叱咤激励だと受け止めている」(池之上氏)。

 今後はLINEに技術協力を受けながら、スマートマタニティマークと白杖用Beaconの実証実験を通じてプロトタイプの仕様を煮詰め、製品化に向けてプロジェクトを進めていくという。久樂氏は「電池持ちの設計や使い勝手のデザインを煮詰めていけば、デバイスの製品化に向けたハードルは高くない。どちらかというとハードウェアよりも、知識がなくても障がい者のサポートができるよう、健常者をナビゲートする方法をブラッシュアップしていくことが大きなテーマになる」と説明する。

 なお、サポートする健常者向けのアプリでは、自分自身がどのような人にサポートができるか/したいかを選べるような機能を検討しているという。また、将来的には東京都が推進して全国へと拡大しているヘルプマークに統合するという計画もあるそうだ。商品価格については、必要としている人が買い求めやすく、ビジネスモデルとしても成立する価格設計を目指しているという。「スマートマタニティマークについては、保証金程度で貸し出す仕組みや、企業の福利厚生で提供できるようなスキームも検討している」(タキザワ氏)。

「&HAND」のメンバーである(左から)松尾佳菜子氏、タキザワケイタ氏、池之上智子氏、久樂英範氏
「&HAND」のメンバーである(左から)松尾佳菜子氏、タキザワケイタ氏、池之上智子氏、久樂英範氏

 そして、この&HANDが最終的に目指すところ、それは「このプロジェクトが必要なくなること」だと池之上氏は語る。「私たちのプロジェクトは、いまモノづくりの入口に立っているが、完全な出口はないと思っている。あえて言うならば、このプロジェクトが啓発しなくても“手助けし合うことが当たり前だよね”と世の中が考えてくれることが目指す理想であり、デバイスが必要なくなることがゴール。そのために、世の中の意見を踏まえながらデバイスの改良を積み重ね、少しずつ世の中の意識を変えていきたい」(池之上氏)。

 世の中に、困っている人の手助けをするのが嫌だという人は、そう多くはない。むしろ、できるものなら手助けをしたいと感じている人のほうが圧倒的に多いはずだ。しかし、思ってはいてもなかなか行動に移せない。タキザワ氏は最後に、このプロジェクトを通じて“一歩が踏み出せない”多くの人の背中を押したいと抱負を語った。

 「&HANDは、行動を変えるための“最初のひと押し”ができればいいと思っている。もし、そこで行動に移した結果、相手が喜んでくれたら、自分が人の役に立てたという実感を得ることができる。そうした経験が、次の行動を変えていく。そして、成功体験を積み重ねていけば、いつか&HANDのツールがなくても自ら行動に移せるようになるはずだ」

2017年06月02日   CNET Japan


障害者雇用企業 市内に新設

2017年06月03日 01時21分22秒 | 障害者の自立

ドコモ子会社がYRPに

 障害者雇用の促進を目的とするNTTドコモの特例子会社「ドコモ・プラスハーティ」が、横須賀リサーチパーク(YRP)に進出することが決まった。横須賀市が用意している企業誘致の支援補助金を活用して、9月をめどに事業を開始する。障害者雇用の新たな受け皿として期待される。

 同社は重度障害者雇用を積極的に進めるために2015年に設立された新会社。ドコモ社屋の清掃作業や印刷業務を行っている。

 市では、障害者を雇用する特例子会社の設立・誘致を進めており、支援補助金制度が進出を後押しした。同社では今年度は、5〜6人の採用を予定しており、将来的に20人程度まで規模を拡大していく方向。

 障害者雇用を促進する特例子会社の市内進出は6年ぶりとなる。11年には、佐原に新設された大手飲食店チェーン、コロワイドグループの関連会社「ココット」が事業を行っている。

 今回の企業誘致実現の背景には、市が提供する障害者雇用の促進と安定を目的とした「特例子会社等設立支援補助金」制度の存在が大きい。市内に事業所を設立する際に、建物の整備費や備品購入費、事務費などに上限540万円を補助する市独自の取り組みだ。従業員1人当たりに月額3万円を支給する雇用奨励金も用意し、企業進出を促す環境を整えてきた。ドコモ・プラスハーティの担当者は「補助金制度は、横須賀進出に踏み切った大きな要因の一つ」と話している。 

 自立支援法の改正などもあり市では、12年度に1・87%だった障害者の雇用率が16年度に2・11%にまで上昇。今回の事業所新設で市は、雇用拡大を期待している。

2017年6月2日     タウンニュース