京都府京田辺市で児童デイサービスなどの事業を行っている福祉事業所が設立した知的障害者のサッカーチーム「QCバロンタン」が活動を広げている。健常者と一緒のチームでは萎縮して活動しにくいケースがあるといい、スポーツを通じた心身の成長や居場所作り、就労サポートに期待が高まっている。
事業所は有限会社ライフ・アシスト(井山信久代表)。8年ほど前に始めた運動教室が利用者に好評で、2014年春に府内2番目となるチームを設立した。現在、市内外から高校生から社会人までの20人が参加する。
練習は、ラダー(はしご)を使ったウオーミングアップや、5対5のミニゲームなど本格的なメニュー。社会人サッカー関西リーグ1部「FC TIAMO」(枚方市)の村島孝史代表(37)や選手らが指導している。
当初はルールが分からない選手も多かったというが、今年4月の全国障害者スポーツ大会京都代表決定戦で、日本代表を擁する「FCアスカ」を破った。中学でサッカー部だった城陽支援学校高等部3年の前田翔汰さんと翼さんの双子兄弟=ともに17歳、京田辺市=は「このチームでサッカーできて楽しいし、うれしい」と声を合わせる。
府によると、府内の支援学校にはソフトボール部や卓球部、球技部などがあるが、サッカー部はない。場所や人数の確保、ルールの難しさなどが背景にあるとみられる。一方で日本知的障がい者サッカー連盟によると全国の競技人口は5800人おり、府県の連盟参加も増えているという。
今年4月、中学生以下のジュニアチームも立ち上げた。年上の選手に憧れる子もおり、井山代表(50)は「これまで支えられていた選手が、年下を教えて支える側になる」と期待する。南山城支援学校中等部3年の木佐貫修司さん(14)の母・亜希さん(44)=京田辺市東=は「いろんなことができるようになり、子どもの世界が広がった」と喜ぶ。
就労にもつなげようと、毎夏、関西の知的障害者チームを集めて大会も開き、協賛企業に見てもらっている。
ライフ・アシストは、サッカーに続いて陸上部も設立した。将来は総合スポーツクラブとして企業や住民とつながる理想を描いている。井山代表は「スポーツを通じて、彼らにはこれだけできることがあるんだ、ということを伝えたい」と話した。
5対5のミニゲームでボールを追う選手たち
2017年06月11日 京都新聞