岡山県と県教委、岡山労働局は7日、県商工会議所連合会(岡山市北区厚生町)に対し、来春卒業予定者らの積極的な正社員採用や、働きやすい職場環境づくりを要請した。
伊原木隆太知事、鍵本芳明教育次長、金田弘幸岡山労働局長が同連合会を訪問し、岡崎彬会長に要請文を提出。知事は大卒者の入社3年以内の離職率が全国平均より高いことを踏まえ「インターンシップ(就業体験)の活用などで雇用のミスマッチを防ぎ、若い人が意欲を持って働けるよう協力をお願いしたい」と述べた。岡崎会長は「労働環境を見直し、働き方改革に取り組みたい」と応じた。
要請文には、県などが8月に岡山市内で開く合同就職面接会への参加、障害者の雇用の場確保なども盛り込んだ。県内約6千の事業所に発送したほか、他の地元経済団体にも要請する。
岡山労働局によると、県内の今春卒業者の就職決定率は大学生が96・8%(前年比2・1ポイント増)、高校生は99・1%(同0・4ポイント減)。
7日午前、津久見市の住宅で信管が付いた状態の砲弾が見つかりました。県内では砲弾の発見が相次いでいて、これまでに14の市と町で計102発に上っています。7日午前10時ごろ、津久見市港町の住宅で、この家に住む男性から「庭先に砲弾がある」と警察に通報がありました。見つかった砲弾は長さおよそ44センチ、直径およそ15センチで陸上自衛隊が解析した結果、旧・日本軍のもので信管が付いていたということです。また、発射された形跡があるため不発弾の可能性が高く爆発の危険性もあるとして、このあと自衛隊が回収する予定です。県内では7日も不審物を含め砲弾が相次いで見つかっていて、県警によりますと5月24日以降、14の市と町で102発にのぼっています。警察は、不審物を見つけた際は触らずに、すぐに届け出るよう注意を呼びかけています。
OBS大分放送ニュース 6/7(水)
退院支援に向けたハードルとして、急性期から慢性期のいずれの病棟であっても「患者・家族と面会日などを調整することが難しい」点が最多となっている。しかし、独居の高齢者が入院するケースも増えてきており、そうした場合の退院支援ルールを考えておく必要があるのではないか—。
7日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、こういった議論が行われました。病院・病床の機能分化を進めるためには、「退院支援の充実」が鍵の1つであり、2018年度の次期診療報酬改定に向けた重要論点となりそうです。
遠方の家族への面会、「スマートフォンによるテレビ会議を認めては」との指摘も
お伝えしているとおり、7日に開かれた「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、2016年度の前回診療報酬改定が入院医療に及ぼした影響の調査結果(2016年度調査)速報が厚生労働省から報告されています(一般病棟についてはこちら 、地域包括ケア病棟・療養病棟についてはこちら)。今回は「退院支援」の状況を眺めてみましょう。
2016年度の前回診療報酬改定では、従前の「退院調整加算」の施設基準を厳格化し、大幅に組み替えた「退院支援加算」として整理しなおしました。より積極的に「退院困難な患者の抽出」や「地域の医療機関や介護施設との顔の見える連携」を行える体制を敷くことを求めています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。このうち新設された「退院支援加算1」(一般病棟などでは600点、療養病棟などでは1200点)を届け出るには、次のような施設基準を満たす必要があります。
(1)退院支援部門を設置し、「専従の社会福祉士1名以上+専任の看護師」または「専従の看護師1名以上+専任の社会福祉士」を配置する
(2)病棟に、「退院支援および地域連携業務に専従する看護師または社会福祉士」を専任で配置する(1人につき2病棟、120床まで)
(3)20以上の医療機関や介護サービス事業所などと連携し、(1)(2)の職員と連携先の職員が年3回以上の頻度で面会し、情報共有などを行う
(4)過去1年間の介護支援連携指導料の算定回数が、「一般病棟の病床数の15%」+「療養病棟の病床数の10%」を上回る
この退院支援加算1と加算2(従前の退院調整加算)の算定状況を、医療機関の病床規模別に見ると、「退院支援加算1を算定する医療機関では、500床以上の大病院が占める割合が大きい」ことが分かりました。上記の要件を満たすためには、やはり一定程度の体力が求められるのかもしれません。
また今般の調査では、加算届け出の有無を問わず施設横断的(▼7対1・10対1の急性期▼地域包括ケア・回復期リハなどの回復期▼療養病棟▼障害者施設—の4類型)に「退院支援に向けた課題」などを調べています。そこからは、次のような状況が明らかになりました。
▼退院困難な患者を抽出する基準は、急性期病院では7割弱で整備されているが、回復期では半数弱、療養では4分の1、障害者施設でも4割弱にとどまる
▼退院支援部門の設置は、急性期病院では8割強、回復期では7割弱にのぼるが、療養では半数弱にとどまる
▼病棟に専従・専任の退院支援職員を配置している割合は、急性期では55.2%、療養では36.8%、障害者施設では16.7%だが、回復期では71.3%にのぼる
▼病棟への専従・専任の退院支援職員配置により、いずれの施設類型でも「より早期の患者抽出・関与が可能になる」「患者・家族への説明・面会の頻度を増やせる」といった効果を感じている
▼退院支援に向けた取り組みへの障壁として、施設類型で若干の差はあるものの「担当患者数が多く、1人当たりの退院支援に十分な時間を割けない」「職員数が確保できず、十分な退院調整ができない」「患者・家族との面会日程の調整が難しい」といった事項が多い
これらの結果から「専従・専任の退院支援職員を配置できず、退院支援を行う職員が不足してしまい、結果として十分な退院調整ができない」という状況に陥っていることなどが伺えます。2016年度における「退院支援加算」創設のポイントは、「より積極的な退院困難患者の抽出」と「地域との顔の見える連携関係の構築」にあると言え、これを実現する手法の1つとして「病棟に専従・専任の退院支援職員を配置」が設けられました。次期改定に向けた重要課題の1つとなるでしょう。
一方で委員の多くは、患者・家族側に内在する退院支援への障壁を問題視しています。
例えば退院支援加算1を算定するためには、「一般病棟などでは原則7日以内、療養病棟などでは原則14日以内に『患者および家族』と病状や退院後の生活も含めた話合い」を行い、退院支援計画を作成・交付することなどが求められます。この点、筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は、「これから単身の高齢者がますます増え、家族との面会が困難なケースが増加する。単身世帯への対応を考えておく必要があるのではないか」と指摘。池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)も「家族がいても遠方に居住しているケースもある。何らかの対策が必要である」と述べ、筒井委員の指摘に賛同しています。
高齢者にとっては「一人暮らし」であることそのものが「退院を困難とさせる要素」になるため、こちらも今後の重要論点の1つとなりそうです。この点、家族が遠方にいる場合などへの対応策の1つとして田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は「スマートフォンなどを活用したテレビ会議によった場合でも、家族との面会などを認めてはどうか」と提案しています。すでに外来医療や医療・介護連携ではICTの活用が話題になっていますが、退院支援の場面でもICT活用による効率化が求められるかもしれません。
なお神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、「働き方改革で残業が問題となっている。退院支援にはソーシャルワーカーなどが関わるケースが多いが『時間外対応への評価』を検討しておく必要があるのではないか」と指摘しています。
6月7日に開催された、「平成29年度 第2回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」
2017年6月8日 メディ・ウォッチ
戦後の混乱期に義務教育を修了できなかった人たちの学びの場だった「夜間学級」が、在留外国人の増加に伴い新たな役割を求められている。現在は市民有志による「自主夜間中学」が地域の外国人を支えている状況だ。
今春、埼玉県の川口市教育委員会は、2019年4月をめどに公立夜間中学校を市内に開校する方針を明らかにした。家庭や経済的な事情、いじめなどで中学校に通うことができない人に加え、日本語の習得を目指す外国人の入学希望者が増えていることを考慮したという。
市内には、1980年代から市民有志が運営する「川口自主夜間中学」がある。この市民らとかねてから交流があり、公立の夜間中学校の設立を国や自治体に一緒に働きかけてきたのが、千葉県松戸市の「松戸自主夜間中学校」だ。全国に300カ所以上ある自主夜間中学校の草分け的な存在である。
夜間中学校の存在が改めて注目される今、松戸の自主夜間中学校を訪ねた。
増える外国籍の子どもたち
今春、埼玉県の川口市教育委員会は、2019年4月をめどに公立夜間中学校を市内に開校する方針を明らかにした。家庭や経済的な事情、いじめなどで中学校に通うことができない人に加え、日本語の習得を目指す外国人の入学希望者が増えていることを考慮したという。
市内には、1980年代から市民有志が運営する「川口自主夜間中学」がある。この市民らとかねてから交流があり、公立の夜間中学校の設立を国や自治体に一緒に働きかけてきたのが、千葉県松戸市の「松戸自主夜間中学校」だ。全国に300カ所以上ある自主夜間中学校の草分け的な存在である。
夜間中学校の存在が改めて注目される今、松戸の自主夜間中学校を訪ねた。
「1983年に開校した時は、50~60代の在日韓国人や朝鮮人、中国残留孤児の方が多かった。月日が流れ、亡くなった方もいる。最近は外国で生まれ育ち、親と一緒に来日し、市内やその周辺の小中学校・高校に通いながら、自主夜中に来る人が多い。生徒は多い時で20人前後になる。国籍は中国や韓国、ベトナム、フィリピン、ネパール、バングラディシュなど10カ国を超える」 (榎本氏)
松戸市は都心から20キロ圏内に位置し、東京のベッドタウンとして発展してきたが、近年は人口が伸び悩んでいる。それでも昨年、住民基本台帳人口では初めて49万人を超えた。その背景には、外国籍の人たちが増えていることがある。
松戸市による2016年末の調査では、外国籍の総数が14120人(15年12966人)。国籍別では中国人が5998人(5576人)、ベトナム人2039人(1828人)、フィリピン人1653人(1590人)、朝鮮・韓国人1651人(1603人)、と続く。
「特別選抜」での高校合格を目指して
自主夜中に通う外国籍の生徒の中には、日本語を流ちょうに話す者もいる。だが、小中学校の授業での教師の話や、教科書の文章を理解することは正確にはできないようだ。特に国語の現代文や社会、地理などを苦手とする。
目立つのは、高校を受験しようとする生徒だという。高校受験の前年の6~7月から増え、秋には20~25人を超える。2~3月の受験日まではほぼ毎日、自主夜中に通う。榎本氏は「最近は、毎年恒例となっている」と語る。「正月以外は毎日猛勉強をする。彼らも私たちも合格するために必死だ」
千葉県では、「外国人の特別入学者選抜」を実施している。教育委員会によると、保護者などと共に県内に居住もしくは居住予定がある入国後3年以内の外国籍の生徒を対象とした配慮だという。
この条件に当てはまれば、県の教育委員会が特別入学者選抜実施を承認した県立高校や市立高校の入学試験を受ける場合、受験科目は面接と作文(いずれも、英語もしくは日本語による)となる。日本人の中学生が県立高校を受験する際の科目(国語、数学、英語、社会、理科)は受ける必要がない。面接・作文の結果や、卒業した中学校が記入する調査書、外国人特別措置適用申請書などの書類の審査などを基に総合的に判定して、入学者の選抜を行う。
自主夜中は今や、特別入学者試験に合格するための学力を身に付ける場となりつつある。
公立夜間中学の設立を呼び掛ける
松戸の自主夜間中学は1983年、市民有志により設けられた。開校当初の主な生徒たちは、第2次世界大戦や戦後の混乱期などにさまざまな事情で中学校を卒業できなかった人たちだった。在日朝鮮人や韓国人、中国残留孤児などもいた。その後、いじめなどで不登校となった人や障害者などが増えてきた。現在までに1700人ほどが学び、巣立った。2017年5月時点での生徒は約50人。このうち、外国籍の生徒は10~15人ほどだ。
元小中学校教師や元会社員、公務員など30人ほどのスタッフがいて、常時20人程度が教室で教える。生徒が教科や学習分野などを選び、それを教えるスタッフの所へ行く。夜6時から9時まで、一斉授業、個別授業、自主学習が行われているので、それらを組み合わせて学習する。
入学試験はなく、入学金や月謝もない。多くは2~3年ほど通い、去ってゆく。運営資金は、約250人の会員からの会費や、スタッフがフリーマーケットでたこ焼きなどを作って販売した収益である。
文部科学省の調査(2014年5月1日現在)によると、全国には307カ所の自主夜間中学があり、ほとんどが市民のボランティアにより支えられている。
「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」は79年から、中学卒業資格が得られる「公立の夜間中学」の開設を市の教育委員会などに要望してきた。公立夜間中学とは、市町村が設置する中学校において、夜の時間帯に授業が行われる公立中学校の夜間学級を意味する。
「市民の会」の活動が実を結び、松戸市の教育委員会は今年2月、市立の中学校1校に夜間学級(夜間中学)を開設する方針を明らかにした。だが、2010年の国勢調査では、全国には中学校を卒業していない、いわゆる「義務教育未修了者」が12万8000人以上いるとされる。この中には、外国人も含まれる。「義務教育未修了者」への行政の対応は十分とは言えない。54年当時全国に89校あった公立の夜間中学は、今や8都府県31校だ。文部科学省は、「夜間中学を少なくとも各都道府県に1校は設置する」としているが、実際は遅々として進んでいない。
高校入学後も、自主夜中で学ぶ
取材で訪れたこの日、2組の親子が教室の隅の長い机に向かい、70代の男性スタッフから日本語を学んでいた。4人は今年2月、中国の山東省などから来た。母親と小学6年生の男の子、その隣に小学3年の女の子と母親が並ぶ。2人の子どもは、地元の小学校に通っている。
男の子の母親が日本語で語ってくれた。
「日本語を使って話すのは難しい。息子が小学校の授業で受け取るプリント(宿題のこと)を見ても、私は分からない。自主夜中に来ると、スタッフの先生から教えてもらえる。教え方は親切で、分かりやすい。子どもも日本語ができるようになって、友達をたくさんつくってほしい。小学校でも日本語を教えてくれる機会が増えるとうれしい」
夫は8年前、仕事のために単身赴任で来日し、松戸市周辺の会社で働いている。息子が小学6年生に進級する今年2月に夫が2人を呼び寄せ、今は家族3人で市内に住む。もう1人の母親も6年前から日本で働く夫と同居するため、娘を連れて移り住んだ。
別の教室では、外国籍の4人が日本語などを学んでいた。うち3人の男子生徒は千葉県の「外国人の特別入学者選抜」を経て、今年4月に県立や市立高校に入学したが、まだ自主夜中に通い続けている。
16歳のフィリピン人の生徒は3年前に両親と共に来日した。「現代社会を勉強したい。日本のことをもっと知りたい。高校の授業についていくことができない。ここで勉強して、(授業に)ついていきたい」。あとの2人は中国出身だ。1人は3年前、上海から両親と来日して市内に住む。「(高校の)理科の授業が分からない。先生の話を理解できない。今は学習塾にも通っている。自分は、勉強が足りない。頭になかなか入ってこない」。もう1人の中国人生徒は、2年前に母と来日した。父親は、以前から松戸市に住む。「高校の授業が分からない。先生の話が理解できない」
「技能実習生」の地域の受け皿に
夜間中学は、急増する「技能実習生」の日本語学習の場としての役割も果たしているようだ。2017年1月、厚生労働省が発表した外国人雇用の届出状況によると、2016年10月末時点で日本で働く外国人は約108万人となり、はじめて100万人を超えた。特に「技能実習生」が前年同月比25%増の約21万人となっている。
政府が推し進める「外国人技能実習生制度」のもとで、中国およびベトナム、フィリピン、タイ、インドネシアなどから来日した実習生たちが、製造業や農漁業、建設業など人手不足に苦しむ分野で働く。前述の川口市の公立夜間中学設立の背景にも、増える技能実習生の存在がある。
技能実習生制度は、企業からすると人件費を日本人より低く抑えることができるメリットがある。一方でトラブルが多発している。賃金やその支払い、長時間労働などで企業と労使紛争をする実習生がいる。パスポートを企業に取り上げられ、途方に暮れる実習生もいるという。全国の夜間中学校に通う技能実習生の中にも、日本語の能力が不十分なまま、こうした労働問題に直面している人たちがいるかもしれない。
夜間中学校開校の動きの裏では、国の在り方が問われる問題が静かに広がりつつある。
スタッフは元小中学校教師や元会社員、公務員などが多い
(2017年6月5日 記)
【Profile】 [2017.06.07]
戦後の混乱期に義務教育を修了できなかった人たちの学びの場だった「夜間学級」が、在留外国人の増加に伴い新たな役割を求められている。現在は市民有志による「自主夜間中学」が地域の外国人を支えている状況だ。
今春、埼玉県の川口市教育委員会は、2019年4月をめどに公立夜間中学校を市内に開校する方針を明らかにした。家庭や経済的な事情、いじめなどで中学校に通うことができない人に加え、日本語の習得を目指す外国人の入学希望者が増えていることを考慮したという。
市内には、1980年代から市民有志が運営する「川口自主夜間中学」がある。この市民らとかねてから交流があり、公立の夜間中学校の設立を国や自治体に一緒に働きかけてきたのが、千葉県松戸市の「松戸自主夜間中学校」だ。全国に300カ所以上ある自主夜間中学校の草分け的な存在である。
夜間中学校の存在が改めて注目される今、松戸の自主夜間中学校を訪ねた。
増える外国籍の子どもたち
今春、埼玉県の川口市教育委員会は、2019年4月をめどに公立夜間中学校を市内に開校する方針を明らかにした。家庭や経済的な事情、いじめなどで中学校に通うことができない人に加え、日本語の習得を目指す外国人の入学希望者が増えていることを考慮したという。
市内には、1980年代から市民有志が運営する「川口自主夜間中学」がある。この市民らとかねてから交流があり、公立の夜間中学校の設立を国や自治体に一緒に働きかけてきたのが、千葉県松戸市の「松戸自主夜間中学校」だ。全国に300カ所以上ある自主夜間中学校の草分け的な存在である。
夜間中学校の存在が改めて注目される今、松戸の自主夜間中学校を訪ねた。
「1983年に開校した時は、50~60代の在日韓国人や朝鮮人、中国残留孤児の方が多かった。月日が流れ、亡くなった方もいる。最近は外国で生まれ育ち、親と一緒に来日し、市内やその周辺の小中学校・高校に通いながら、自主夜中に来る人が多い。生徒は多い時で20人前後になる。国籍は中国や韓国、ベトナム、フィリピン、ネパール、バングラディシュなど10カ国を超える」 (榎本氏)
松戸市は都心から20キロ圏内に位置し、東京のベッドタウンとして発展してきたが、近年は人口が伸び悩んでいる。それでも昨年、住民基本台帳人口では初めて49万人を超えた。その背景には、外国籍の人たちが増えていることがある。
松戸市による2016年末の調査では、外国籍の総数が14120人(15年12966人)。国籍別では中国人が5998人(5576人)、ベトナム人2039人(1828人)、フィリピン人1653人(1590人)、朝鮮・韓国人1651人(1603人)、と続く。
「特別選抜」での高校合格を目指して
自主夜中に通う外国籍の生徒の中には、日本語を流ちょうに話す者もいる。だが、小中学校の授業での教師の話や、教科書の文章を理解することは正確にはできないようだ。特に国語の現代文や社会、地理などを苦手とする。
目立つのは、高校を受験しようとする生徒だという。高校受験の前年の6~7月から増え、秋には20~25人を超える。2~3月の受験日まではほぼ毎日、自主夜中に通う。榎本氏は「最近は、毎年恒例となっている」と語る。「正月以外は毎日猛勉強をする。彼らも私たちも合格するために必死だ」
千葉県では、「外国人の特別入学者選抜」を実施している。教育委員会によると、保護者などと共に県内に居住もしくは居住予定がある入国後3年以内の外国籍の生徒を対象とした配慮だという。
この条件に当てはまれば、県の教育委員会が特別入学者選抜実施を承認した県立高校や市立高校の入学試験を受ける場合、受験科目は面接と作文(いずれも、英語もしくは日本語による)となる。日本人の中学生が県立高校を受験する際の科目(国語、数学、英語、社会、理科)は受ける必要がない。面接・作文の結果や、卒業した中学校が記入する調査書、外国人特別措置適用申請書などの書類の審査などを基に総合的に判定して、入学者の選抜を行う。
自主夜中は今や、特別入学者試験に合格するための学力を身に付ける場となりつつある。
公立夜間中学の設立を呼び掛ける
松戸の自主夜間中学は1983年、市民有志により設けられた。開校当初の主な生徒たちは、第2次世界大戦や戦後の混乱期などにさまざまな事情で中学校を卒業できなかった人たちだった。在日朝鮮人や韓国人、中国残留孤児などもいた。その後、いじめなどで不登校となった人や障害者などが増えてきた。現在までに1700人ほどが学び、巣立った。2017年5月時点での生徒は約50人。このうち、外国籍の生徒は10~15人ほどだ。
元小中学校教師や元会社員、公務員など30人ほどのスタッフがいて、常時20人程度が教室で教える。生徒が教科や学習分野などを選び、それを教えるスタッフの所へ行く。夜6時から9時まで、一斉授業、個別授業、自主学習が行われているので、それらを組み合わせて学習する。
入学試験はなく、入学金や月謝もない。多くは2~3年ほど通い、去ってゆく。運営資金は、約250人の会員からの会費や、スタッフがフリーマーケットでたこ焼きなどを作って販売した収益である。
文部科学省の調査(2014年5月1日現在)によると、全国には307カ所の自主夜間中学があり、ほとんどが市民のボランティアにより支えられている。
「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」は79年から、中学卒業資格が得られる「公立の夜間中学」の開設を市の教育委員会などに要望してきた。公立夜間中学とは、市町村が設置する中学校において、夜の時間帯に授業が行われる公立中学校の夜間学級を意味する。
「市民の会」の活動が実を結び、松戸市の教育委員会は今年2月、市立の中学校1校に夜間学級(夜間中学)を開設する方針を明らかにした。だが、2010年の国勢調査では、全国には中学校を卒業していない、いわゆる「義務教育未修了者」が12万8000人以上いるとされる。この中には、外国人も含まれる。「義務教育未修了者」への行政の対応は十分とは言えない。54年当時全国に89校あった公立の夜間中学は、今や8都府県31校だ。文部科学省は、「夜間中学を少なくとも各都道府県に1校は設置する」としているが、実際は遅々として進んでいない。
高校入学後も、自主夜中で学ぶ
取材で訪れたこの日、2組の親子が教室の隅の長い机に向かい、70代の男性スタッフから日本語を学んでいた。4人は今年2月、中国の山東省などから来た。母親と小学6年生の男の子、その隣に小学3年の女の子と母親が並ぶ。2人の子どもは、地元の小学校に通っている。
男の子の母親が日本語で語ってくれた。
「日本語を使って話すのは難しい。息子が小学校の授業で受け取るプリント(宿題のこと)を見ても、私は分からない。自主夜中に来ると、スタッフの先生から教えてもらえる。教え方は親切で、分かりやすい。子どもも日本語ができるようになって、友達をたくさんつくってほしい。小学校でも日本語を教えてくれる機会が増えるとうれしい」
夫は8年前、仕事のために単身赴任で来日し、松戸市周辺の会社で働いている。息子が小学6年生に進級する今年2月に夫が2人を呼び寄せ、今は家族3人で市内に住む。もう1人の母親も6年前から日本で働く夫と同居するため、娘を連れて移り住んだ。
別の教室では、外国籍の4人が日本語などを学んでいた。うち3人の男子生徒は千葉県の「外国人の特別入学者選抜」を経て、今年4月に県立や市立高校に入学したが、まだ自主夜中に通い続けている。
16歳のフィリピン人の生徒は3年前に両親と共に来日した。「現代社会を勉強したい。日本のことをもっと知りたい。高校の授業についていくことができない。ここで勉強して、(授業に)ついていきたい」。あとの2人は中国出身だ。1人は3年前、上海から両親と来日して市内に住む。「(高校の)理科の授業が分からない。先生の話を理解できない。今は学習塾にも通っている。自分は、勉強が足りない。頭になかなか入ってこない」。もう1人の中国人生徒は、2年前に母と来日した。父親は、以前から松戸市に住む。「高校の授業が分からない。先生の話が理解できない」
「技能実習生」の地域の受け皿に
夜間中学は、急増する「技能実習生」の日本語学習の場としての役割も果たしているようだ。2017年1月、厚生労働省が発表した外国人雇用の届出状況によると、2016年10月末時点で日本で働く外国人は約108万人となり、はじめて100万人を超えた。特に「技能実習生」が前年同月比25%増の約21万人となっている。
政府が推し進める「外国人技能実習生制度」のもとで、中国およびベトナム、フィリピン、タイ、インドネシアなどから来日した実習生たちが、製造業や農漁業、建設業など人手不足に苦しむ分野で働く。前述の川口市の公立夜間中学設立の背景にも、増える技能実習生の存在がある。
技能実習生制度は、企業からすると人件費を日本人より低く抑えることができるメリットがある。一方でトラブルが多発している。賃金やその支払い、長時間労働などで企業と労使紛争をする実習生がいる。パスポートを企業に取り上げられ、途方に暮れる実習生もいるという。全国の夜間中学校に通う技能実習生の中にも、日本語の能力が不十分なまま、こうした労働問題に直面している人たちがいるかもしれない。
夜間中学校開校の動きの裏では、国の在り方が問われる問題が静かに広がりつつある。
スタッフは元小中学校教師や元会社員、公務員などが多い
(2017年6月5日 記)
【Profile】 [2017.06.07]