視覚障害者が書いた小説を、朗読劇や舞台上で絵を描くライブアートで表現する舞台が、10日に一宮市尾西市民会館で開催される「西尾張ブロックボランティアフェスティバル」で上演される。作者の経験をもとにした作品で、「障害者についてより知ってもらう機会になれば」と話している。
小説「ぬくもり」は、同フェスティバルのプロジェクトメンバーを務める視覚障害者の加藤一秀さん(56)=江南市在住=が書き下ろした。視覚障害者の父を介護している男子高校生が、周囲のボランティアや障害者と関わりながら、サッカーを続けるかどうか悩むストーリーだ。
加藤さんは会社員だった34歳の時に「網膜色素変性症」と診断され、今では両目がほとんど見えない。音声読み上げソフトなどを使って、数年前から小説をブログなどで書き始め、将来はプロの小説家を目指している。
「ボランティアなど支えてくれる人々の存在の大切さ、若くして介護を担って苦悩するヤングケアラー問題を伝えたかった」と加藤さん。作品には、加藤さんが通う一宮市の障害者向けのパソコン教室をモデルにした人々も登場する。「視覚障害者の生活やパソコンがコミュニケーションツールになっていることなども知ってもらえれば」
舞台では、障害者のために本や新聞などを音訳している同市の朗読グループ「ききょう」が小説を読み聞かせる。さらに、作中に登場する役で、主人公を導く画家のモデルとなった画家キクチユミさん(57)=一宮市在住=がライブアートを披露。ストーリーに合わせて、舞台上で縦1・8メートル、横1・5メートルの巨大なキャンバスに絵を描き、作品を完成させる。
キクチさんは脳性まひの障害がある。独自の技法で活躍するキクチさんは「障害はマイナスではなく個性。私の描く曲がった線も個性であり、その作品や姿を見てほしい」。加藤さんは「障害者として声を発することで、障害者への誤解や距離をなくしていきたい」と話している。
ボランティアフェスティバルは、西尾張14市町村の団体が活動紹介などをするイベント。「ぬくもり」の舞台は、10日午後1時45分から同市尾西市民会館大ホールである。入場無料。問い合わせは、市社会福祉協議会(0586・85・7024)へ。
2017年12月6日 asahi.com