CM総合研究所が発表する11月度の銘柄別CM好感度ランキングで、アマゾンジャパンの有料会員サービス「Amazonプライム」が3位にランクインした。1人暮らしをする祖母と、その家を訪れた孫の青年のふれあいを描く心温まるストーリー。「おばあちゃんに会いたくなった」という感想が多く寄せられた。高齢化社会という社会的なテーマを情感をもって描く短編映画のような味わいが、幅広い世代の共感を呼んだ。
Amazonプライム「モーターバイク」篇 Amazon.co.jp提供
Amazonプライム「モーターバイク」篇のCMは、セリフが一切なく、バックに流れるピアノの音色と出演者の表情による演技で、こんなストーリーが語られる。
1人暮らしをしている祖母の家を訪ねた孫の青年が、若い頃の祖母の写真を見つける。そこにはオートバイのヘルメットを小脇に抱えて、祖父に寄り添っている祖母が写っていた。青年は何かを思い立ったようにスマートフォンを取り出し、Amazonプライムで品物を注文。翌日、届いたのはヘルメット。それをかぶった祖母が、青年の運転するオートバイの後ろに乗り、幸せそうな笑みを浮かべている…。
CMの前半は、祖母の孤独感が伝わる暗いトーンだが、孫のオートバイの後ろに乗って走る後半は一転して幸せ感にあふれた明るい画面になり、バックの菜の花畑の美しい黄色が目に鮮やかだ。その撮影は、3日間をかけて菜の花畑の名所でロケを実施。菜の花が満開になるタイミングとあわせるのが一番難しかったという。2人乗りのシーンは実際にオートバイに乗ってもらい、カメラカーで併走して撮影した。
CM好感度調査の得票では、20~50代の女性を中心に幅広い支持を獲得。好感要因は「心がなごむ」が最も高く、「ストーリー展開」「映像・画像」が続く。8月7日のオンエア開始から4カ月目での月間3位というロングヒットだ。
AmazonプライムのCMは、2016年3月に始まった赤ちゃんと犬の交流を描く「ライオン」篇、同年12月から始まった障害物を飛べないポニーと調教師を描く「ポニー」篇に続き3作目。前2作もセリフがなく、映像と音楽でストーリーを表現して、いずれも好感度ランキングでトップ10入りするヒットCMとなっている。
■老人の孤独を客観的な視点で
CM総合研究所の関根心太郎代表は、「大ヒットした作品に続く2作目、3作目を当てるは難しいのですが、上手にバトンをつないでいます。祖母と孫のふれあいというエモーショナルなストーリーを、うまく商品に結びつけた秀作。思いついたらすぐ注文できて、翌日届くというAmazonプライムの配送サービスが、自然に表現されています」と表現手法を高く評価する。
アマゾンジャパンの桑田淳氏によると、今回は社会問題を取り上げたのが前2作との違い。「現代日本での大きな社会問題である高齢化社会、老人の孤独をテーマにし、それを押しつけがましくなく、説教くさくならないように、客観的な視点で淡々と描きました。6週間のCMオンエアの後にある『敬老の日』に向けて、CMをご覧になった皆様が自分の祖母のことを思い、何らかのアクションを起こしていただければ、と考えました」と言う。
実際、好感度調査に答えたモニターのコメントでも、多かったのが「おばあちゃんに会いたくなった」「おばあちゃんがどうしているか気になった」という声。
社会的なテーマを描きながら、見た人は自分のこととして感じ、リアリティーをもって受け止めている。その優れた短編映画を見るような味わいが、多くの人々の心をつかんだようだ。
(日経エンタテインメント! 2017/12/28)