来年で満10歳の日曜便には、ご自身やご家族の近況を折に触れて、お寄せくださる読者の方々がいらっしゃいます。
大阪府寝屋川市の溝尾圭子さん(47)もその一人。知的発達の遅れはないものの、対人関係を築くのが苦手な「高機能自閉症」の娘さん(23)について、2010年に高校入学、12年にデザイン専門学校の合格と、母親の喜びにあふれたお便りをくださいました。
そしてこのたび、〈どうしても報告したいことがあり、連絡いたしました>と、5年ぶりのメールが届きました。<娘の就職が決まりました>とのこと。朗報です。
お便りには、専門学校に入って以降の5年間がつづられていました。〈専門学校で2年、健常者の方と共に学びました。障害のことも話し、先生や仲間に温かく見守られ、充実した学生生活でした〉
次は就職活動です。学んだ技術をいかそうと、出版社の実習に参加したのですが……。<社会人として基本のマナーや決まり事が身に付いていなかったこともあり、ご縁がありませんでした>
娘さんは、障害の特性であいさつしたり、わからないことを自分から聞いたりすることが苦手だったのです。
ただ、娘さんはくじけず、ハンデを克服しようと、卒業後、障害者向けの就労移行支援事業所に通い始め、約2年、ビジネスマナーなどの訓練を一から受けます。そして就活再挑戦。いくつかはダメでしたが、ついに今年9月、物流会社の採用が決まりました。
〈喜怒哀楽をあまり出さない娘がホッとした様子でひと言、「採用が決まってよかった」。研修中は会社から電話があり、「娘さん、頑張られてますよ」と。あいさつもし、分からないことも聞けているようです。小さい頃は会話も一方通行で、気に入らないことがあるとパニックを起こし、「この子と一生、会話ができないかも」と思ったこともありました。感慨深いです>
娘さんは現在、朝5時に起床して通勤する忙しい日々。電話で話を聞くと、「就職できるのか焦る時もありましたが、決まってすごくうれしい。重い商品を運ぶ時はきついんですけど、頑張ってます」と意欲に満ちたお返事です。溝尾さんは「大変なのはこれから。いずれは親元から自立してもらわないと……。でも課題を、その都度乗り越えていく娘なら大丈夫だと思います」と話されました。
溝尾さんから日曜便に届いたお便りはこの7年で3通です。その3通だけでも、娘さんがハンデを克服して成長していく様子や、親として支え続ける溝尾さんの思いが伝わり、胸が熱くなりました。
次は、娘さんの一人暮らしでしょうか。4通目のお便りを楽しみに待っています。
お便りは、〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「日曜便」係、ファクスは06・6361・0733、メールはnichiyobin@yomiuri.comです。ウェブサイトでも読むことができます。「日曜便」で検索を。
2017年12月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun