目の見えない女性が他人の手を借りずに化粧をする方法「ブラインドメイク」を海外に広めようと、視覚障害のある女性らが活動を進めている。10月には中国・天津でイベントを開く予定で、「メード・イン・ジャパンの技術を海外に伝えたい」と意気込む。
「化粧をすると気持ちが明るくなる」
7月、大阪市で開かれた実演会で、3人の視覚障害者の女性はポーチから化粧品を出して並べると、慣れた手つきで化粧を始めた。化粧品は市販のもの。しかし、彼女たちの前に鏡はない。
ファンデーションを手のひらに広げ、顔の左側は左手、右側は右手を使い、むらができないようゆっくり動かす。マスカラはマスキングテープを目の上下に貼って保護してから。指を使いはみださないように口紅を塗った後、チークを3本の指で頬からこめかみへ優雅に滑らせ、華やかなフルメークが完成した。
実演した鈴木加奈子さん(39)は「『どうせ見えない』と思っていたが、化粧をすると気持ちが明るくなり、自信を持って外出できるようになった。周りの接し方も変わった」と話す。
中国・天津で10月にイベント
ブラインドメイクは障害者を支援する一般社団法人「日本ケアメイク協会」(大阪市)の大石華法さんが平成22年に考案。これまで約200人にこの方法を教えてきた。個別レッスンでは一人一人に応じた化粧品の適量やメークの仕上がりを伝える「しゃべる鏡」となり、寄り添ってきた。今では技術を身に付けた視覚障害の女性たちが、自ら実演会を主催するなどの活動をしている。
女性らは今年2月に「ブラインドメイクを世界に広げよう!プロジェクト」を立ち上げ、10月10日に中国・天津でイベントを開くことを決定。クラウドファンディングで活動費を集めるなど準備を進めてきた。天津では実演をしたり、現地の人たちと交流したりする予定だ。
同じスタートラインに
「化粧を通して他の女性と同じスタートラインに立てる」。リーダーの松下恵さん(58)は14年に網膜剥離で視力を失った。落ち込んだ時期もあったが、ブラインドメイクを習い、少しずつ前向きになっていった。「きれいになりたい気持ちは障害者も健常者も一緒。特別な道具も要らず、元気になれるこの技術を海外の人にも知ってもらいたい」と話した。
2018.9.30 産経ニュース