アンプティサッカー日本代表に初選出、GKでも武器は足技 奄美の東さん
城彰二さんや遠藤保仁選手などサッカーのワールドカップ(W杯)日本代表選手を数多く輩出してきた鹿児島実高から、新たなW杯選手が誕生する。片脚や片腕が先天的にないか病気や事故で失った人たちがプレーする「アンプティサッカー」のW杯メキシコ大会(27日~11月4日)代表に、鹿児島県奄美市の東幸弘さん(36)が初選出された。強豪サッカー部では1軍昇格を果たせなかったが、地道に練習を重ねチャンスをつかんだ。
東さんは生まれつき左肘から先がなく、手や足の指も短い障害がある。幼い頃は友達と同じ遊びができず引け目があったが、小学3年生になり鹿児島市内のサッカー少年団に入団。元アルゼンチン代表FWでW杯も制したディエゴ・マラドーナさんに憧れてドリブルを猛練習し、中学では県選抜に選ばれた。上達とともに引け目もなくなった。
だが、推薦で入った鹿児島実高サッカー部は全国大会優勝経験もある名門で、1学年上には後に日本代表としてW杯南アフリカ大会に出場する松井大輔選手がいた。1年生も競争が激しく、2軍昇格がやっと。それでもサッカーへの情熱は尽きなかった。2年生でフットサルに転向したが、進学や就職後も社会人チームなどでプレーを続けた。
アンプティサッカーとの出合いは3年前。テレビで競技を見た当時小学3年生の長女が教えてくれたのをきっかけに、九州在住・出身者のクラブ「FC九州バイラオール」に加入した。
ルールでは片脚の選手がフィールドプレーヤー、片腕の選手がGKを務めるため、東さんはGKとなり初めてセービングに挑戦。当初は向かってくるボールに下半身から反応してしまい大量失点も経験したが、公園の壁にボールを蹴って跳ね返りを止める練習を何度も繰り返し、徐々に腕から反応できるようになった。
ただ、東さんが代表に選ばれた大きな評価ポイントは磨いてきた足技だった。元Jリーガーで日本代表臨時コーチの矢島卓郎さん(34)は「アンプティで唯一、両脚でプレーできるGKのキープ力やパスは重要。東選手は足元の技術がしっかりしていて、代表の武器になる」と太鼓判を押す。
同サッカーは1980年代に米国で誕生し、日本は2010年に導入。W杯には10、12、14年と3大会連続で出場した。24カ国が参加するメキシコ大会で、過去最高の4強入りを目指す。「試合に出てチームに貢献したい」。東さんは周囲も認める「足技の優れたGK」として大舞台での活躍を誓う。
試合形式の練習で低いボールに腕で反応してセーブする東幸弘さん(左から2人目)
=2018/10/14付 西日本新聞朝刊=