福岡県や北九州市の第3セクターで、衛生陶器メーカー「TOTO」の特例子会社「サンアクアTOTO」(北九州市小倉南区)は26日、障害者雇用を目的に発足して20年を迎えた。
障害者が働きやすい職場環境を整備するほか、実際に働く姿を見てもらうことで雇用促進につなげようと、会社見学にも力を注いでいる。
同社は1993年に設立。トイレのバルブやシャワーの部品の組み立て、TOTO商品の取扱説明書やパンフレットのデータ制作などを手掛ける。従業員81人のうち44人が知的や精神、身体障害者で、35人は重度障害を抱えている。
社内は、車椅子でも楽にすれ違うことができる広い通路や、いすに座ったまま作業できるように作業台が低く設計されている。電源やコードが天井に取り付けられているため、床は完全なバリアフリーで、聴覚障害者に点滅灯で始業や終業時間を知らせるパトライトもある。
筋ジストロフィーで手足が不自由な柴田あゆみさん(41)は「障害者の社員が多く、肩身の狭い思いをしなくて済む。こういう職場がもっと増えてほしい」と話した。
「障害者雇用について理解してもらうには、実際に見てもらうのが一番」と、2008年から積極的に見学者の受け入れも始めた。工場内の説明や案内を行うのは障害を持つ社員で、手話を使って説明することも。当時、年間約800人だった見学者数は、12年度は約1900人にまで増える見込みだ。
特例子会社は、雇用した障害者を親会社が雇ったとみなし、障害者雇用率に合算できる。厚生労働省によると、特例子会社は全国で349社、うち県内では12社(いずれも昨年5月末現在)。
また、障害者雇用促進法では、従業員数56人以上の民間企業に1・8%以上の障害者雇用を義務づけているが、現在は平均1・69%で、達成企業は半数以下にとどまっているという。
4月からは法改正により従業員数50人以上の企業に対し、2・0%以上の雇用が義務化され、障害者の雇用促進が期待されている。
サンアクアTOTOは13年度、これまで働いていなかった視覚障害者1人を含む5、6人を採用する予定。西村和芳社長は「障害者が企業の戦力になっていることを多くの人に知ってもらいたい。少しでも雇用促進の役に立てれば」と話している。
車椅子でも作業しやすいように工夫された社内
(2013年2月27日 読売新聞)