秋空になほ伸びたしと見えたれば
葉透き公孫樹のいとしかるべき 悠山人
○短歌写真、詠む。
○晩秋から初冬。頭を詰められた公孫樹が、懸命に枝を伸ばしている。
□短写259 あきぞらに なほのびたしと みえたれば
はすきいてふの いとしかるべき
【写真】自動補正に、多少の色調補正を加えた。先日、見本園で。
2006-1126-yhs026 blueberry
葉裏まで
赤く染まりし
沼酢之木 悠山人
○俳句写真、詠む。
○「沼酢之木」は通称ブルーベリー、が鑑賞の入口。
□俳写026 はうらまで あかくそまりし ぬますのき
【写真】晩秋の午後の日差しが、強い。葉裏からの透過光で撮影。色調の自動補正を1回。先日、植栽センターで。
2006-1125-yis025
待っているあの方がいまお見えでも
庭雪だけは踏みつけないでね? 悠山人
○和泉式部集、詠む。
○「庭の雪」。いいわぁ、庭の雪景色って。でも、いまこうしている間にも、心待ちにしているあの方がお見えになったら、どうしましょう。雪を踏まないで、ってこと、出来ないものかしら。
¶まく=「(上代語)未来の推量を表す。…だろうこと。…であろうようなこと。[…]推量の助動詞<む>のク語法。活用語の未然形に付く。」(古語辞典) 用例に万葉集05-0824の「梅の花散らまく惜しみ」。つまり「踏ままく惜しき」は、「踏むだろうことが惜しい(雪だ)」。
□和025:まつひとの いまもきたらば いかがせむ
ふままくをしき にはのゆきかな
□悠025:まっている あのかたがいま おみえでも
にわゆきだけは ふみつけないでね?
2006-1124-yis024
冬の日は眺め暮らすに限るわね
春数日と同じですもの 悠山人
○和泉式部集、詠む。
○「つれづれのながめ」。冬の毎日は、することもなくぼんやりと、物思いにふけったり。のどかな春の何日かと同じくらい、たっぷりと時間が過ごせるの。意外よね。
¶つれづれ(徒然)=「<つれづれ>は和泉式部の愛用語。単なる退屈ではなく、時の空虚さへの焦燥感を表す。」(新潮版)
¶つれづれ(徒然)=「①何もすることがなく、手持ちぶさたなさま。退屈なさま。②どうしようもなくひとり物思いに沈むさま。[下略]」(古語辞典)
¶日=「ひ」「か」「にち」の読み分けは、古語辞典・広辞苑、ともに記載なし。
□和024:つれづれと ながめくらせば ふゆのひも
はるのいくかに おとらざりけり
□悠024:ふゆのひは ながめくらすに かぎるわね
はるすうじつと おなじですもの
2006-1123-yis023
年の暮れ数えるほどに悲しいわ
だって老いが迫るんですもの 悠山人
○和泉式部集、詠む。
○もうことしも、数えるほどの日日になったのね。正月を楽しみに待つ、という年齢はとうに過ぎて、今はただ老いへと追い込まれるだけ。こんなに悲しいことって、他にあるかしら? 煌びやかな世界に生活しているだけに、老醜が恐怖の現実になってくる。紫の述懐句と、この点では全く軌を一にする。
□和023:かぞふれば としののこりも なかりけり
おいぬるばかり かなしきはなし
□悠023:としのくれ かぞえるほどに かなしいわ
だっておいが せまるんですもの
2006-1123-yts258
遥かなる山並越えて彷徨へば
われは聞きたりさきはひの声 悠山人
○短歌写真、詠む。本歌はK.ブッセの詩「山のあなた」、第一文。
○上田敏の名訳で、余りにも有名。ドイツ本国ではほとんど忘れられているのに、遠い日本では古典的落語にもなってしまったくらい、愛されている。しかし短歌に移した人はいない(たぶん)。また、独語を疎んじていたのに気が付いて、という理由もある。私の詠みと写真は、原詩との隔たりがあり、「さきはひ」に「西方浄土」「にらいかない」を意識した。
□短写258 はるかなる やまなみこえて さまよへば
われはききたり さきはひのこゑ
【写真】複数写真(借用)をコラージュ。
【memo】検索中に、「ブッセの原詩が出てこない」という文章に出合った。たしかに日本語からは、なかなかヒットしない。ドイツ人・語と分かっているから、Yahoo! のドイツ版を開いてから検索してみた。そこで意外な事実も分かった。(変母音の関係で、原詩紹介は保留)
http://www.litlinks.it/b/busse_c.htm(イタリア籍!)
http://www.recmusic.org/lieder/
Karl Busse=geb. 1872 in Lindenstadt (bei Birnbaum)
gest. 1918 in Berlin
作曲①by Alban Berg (1885-1935) , "Über den Bergen" , 1905-09, from Jugendlieder.
②by Othmar Schoeck (1886-1957) , "Über den Bergen" , WoO. 11 (1903).
③by Ernest Vietor (fl. 1905-1930) , "Über den Bergen" , op. 4 no. 2 (1907?) .
2006-1122-yhs025
夾竹桃
灰の都に
赤く映え 悠山人
○俳句写真、詠む。
○「灰の都」はポンペイ。「赤く」は「明く」。
□俳写025 けふちくたう はひのみやこに あかくはえ
【写真】35mmフィルムをスキャニング。ULは初。画質は粗い。