番組
・舞囃子 『松風』戯之舞 観世銕之丞
・狂言 『月見座頭』 座頭:茂山千之丞 上京の男:茂山千五郎
・舞囃子 『頼政』 片山幽雪
・小舞 『通円』 野村萬
・一調 『鐘之段』 謡:近藤乾之助 小鼓:曽和博朗
・一調 『土蜘蛛』 謡:福王茂十郎 太鼓:三島元太郎
・語り 『文蔵』 野村万作
・能 古演出による『鵜飼』 鵜使の老人:大槻文蔵 地獄の鬼:梅若玄祥
僧:宝生閑 従僧:宝生欣哉
石和川辺の人:茂山あきら
今日も35℃を超えていたのではなかろうか。夏雲があって風も時折吹くけれど陽射しは強烈だった。正面席は指定席だけれど、それ以外は自由席なので、早めに出かけた。開場まで1時間余りあったがすでに20人近く外で待っていた。日陰でも暑い。汗が背中を流れるのが分かる。時間近くなると館のスタッフの方々が手際よくさばいて入館できた。館内はさすが快適。ホッとした。
ひととおり観終わって思ったのだが、演者の方々にご高齢のかたが多かった。なので舞台から伝わってくる印象がいつもとちょっと違うし見所の方々の反応も落ち着いたもののように思った。入館の折に手渡された「能楽座」のパンフで調べたら、87歳の茂山千之丞さんを筆頭に1920年代生まれの方が3人、1930年代が8人、1940年代で4人数えることができた。人間国宝の認定を受けておられる方は6人もいるのだ。また中堅として活躍されている方もほどほどにおられてバランスよい演者構成ではなかったかと思う。
「松風」。もう堂々たる舞という印象。行平を想い狂う松風という風ではない。舞囃子はかくあるべしというか、重量感・存在感たっぷりの舞台でした。「月見座頭」。座頭に扮した千之丞さん。良かった。独白も演技も自然体という印象で、演技しているという風でなかったように思う。「頼政」舞った幽雪翁は殆ど腰かけて舞った。これは初めてだった。なるほどこのようにして舞台を務める事が出来るのかという想いで、伝統芸能とは奥が深いと思った。「通円」萬さんも最初腰かけて小舞を務めたのだけれど、これはもともと腰かけて演技するのかもしれない。足腰しっかりされているし、この日も手の仕草がとても素敵に感じましたね。一調「鐘の段」「土蜘蛛」ともに名人が謡われたのです。かしこまって聞きました。語り「文蔵」。実はこれが聞きたくて来たのです。聞いたことがなかったので。和泉流の語りは、狂言的な響きを持ち、また今風で判り易い感じの語り口なので好きなのです。万作さんの少しハイトーンがかった語り口を十分に堪能できました。どこかテレビで放映してほしいと思います。能「鵜飼」ひた面の閑さんの声が良く通っておりました。文蔵さんも、玄祥さんも面を付け橋懸りから本舞台を縦横に動いて頂き楽しめました。