富士フイルムとパナソニックが6月11日、有機薄膜を用いた有機CMOSイメージセンサー技術を開発したと発表しました。(ニュースリリース 富士フイルム / パナソニック)
デジタルカメラの革新につながるのでしょうか。とても興味を持って読みました。
ニュースリリースによると、
『イメージセンサーの受光部に、光を電気信号に変換する機能を持つ有機薄膜を用いることで、従来のイメージセンサーを超える性能を実現する有機CMOSイメージセンサー技術を開発しました。本技術をデジタルカメラなどのイメージセンサーに使用することで、さらなるダイナミックレンジの拡大や感度アップなどを実現し、明るいところで白トビなく、暗い被写体でも鮮明で質感豊かな映像を可能にします。』
とのこと。
具体的には、
(1)業界最高の88dBのダイナミックレンジにより、白トビなく、暗い被写体も鮮明で階調豊かな映像が取得可能
(2)従来の約1.2倍の感度を実現し、暗いところでもクリアな映像が撮像可能
(3)入射光線範囲を60度へ拡大し、忠実な色再現性を実現
(4)高信頼性を実現し、幅広い用途で利用が可能
ということで、ダイナミックレンジが広がったことが大きな特長のようです。
◇ダイナミックレンジについて
ダイナミックレンジは撮影できる明るさの範囲で、フイルム写真の「ラティチュード」と同じ。最も明るい部分と最も暗い部分の比をdBという単位で表します。
人間の目のダイナミックレンジは80dBぐらい。ただ、瞳を絞ることで、100dB以上の明るさを識別できるとも言われています。
デジタルカメラのダイナミックレンジは人間より狭い、またフイルムよりも狭いとよく言われてきました。少し古いデータによると、APS-Cサイズの一眼レフで60dBぐらい。フルサイズだとそれよりも良いようです。富士フイルムとパナソニックの発表を信用すれば、今までのデジタルカメラのセンサーは最高でも88dB未満だったのでしょう。(ニコンD800はダイナミックレンジの広いカメラだと言われますが、dB値でどれぐらいなのか、知りたいところです)
今回発表された有機CMOSイメージセンサーは、ほぼ人間の目に匹敵するダイナミックレンジを達成したということになります。これは、なかなかすごいと思います。
ダイナミックレンジが広いと、明暗差が大きい被写体でも白飛び・黒ツブレせず、諧調豊かに撮れるのでありがたいですね。
風景写真の空や、花に当たる日の光などが強すぎて白飛びしてしまったというのはだれでも経験のあること。写真を撮れば撮るほど、ダイナミックレンジが広いカメラこそ良いカメラだなあ、という気持ちになってきます。
早くこのセンサーを搭載したデジタルカメラを開発してもらって、実写画像を見たいものです。
◇上には上が…
ところが、業務用カメラの中にはダイナミックレンジがもっと広いものがすでにあるのです。
アドバンスドソリューションズ(本社・東京)の「HDRCカメラ」。なんと170dBという極めてダイナミックレンジの広いCMOSイメージセンサーを搭載、人間の目では見えない暗闇から太陽の光まで撮影できるそうです。
同社のホームページを見てみましたが、監視カメラや車載カメラとしての用途が主のようです。車載カメラは、太陽の逆光や、暗いトンネル、対向車のヘッドライトなど明暗差の大きい環境で使われるので、なるほどダイナミックレンジの広さが要求されるわけです。
ただ、これだけダイナミックレンジが広いと、画像としてはコントラストが弱い、フラットな印象です。最近のデジタルカメラのHDR(ハイダイナミック)合成画像もそうなりがちですが…
通常の撮影では、もっとコントラストのある方が良いと思う向きもありそうで、この辺りのかねあいが難しいところ。有機CMOSイメージセンサーでは、どういう風に調整するのか気になります。
◇高感度なども期待
従来の約1.2倍の感度というのも大きなメリット。
また、これまで「井戸の底をのぞくような」といわれたイメージセンサーの構造面での問題が改善され、入射光線範囲が60度に拡大したのも画期的。レンズ制作での自由度が増し、カメラの小型化につながるそうですから、期待したいですね。