横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

心不全の最新治療=Impella

2019-06-24 19:58:54 | 心臓病の治療


 重症心不全に対する新しい治療として、Impellaという補助循環装置があります。これは末梢動脈から大動脈に挿入したカテーテルの先端に軸流ポンプが内挿されており、形態はピッグテイル型。先端を左心室内に留置し、この軸流ポンプを作動すると毎分2.5リットルの血液を左室から大動脈内にくみ出すことができる、心臓に対する輔助ポンプ装置です。大きなタイプでは5リットルの流量が出るカテーテルもあります。従来使用されていたPCPS(経皮的心肺補助装置)に比較して、左室の後負荷がないので、左室を休ませる効果が高いと考えられます。
 より重症の左心不全でPCPSだけでは回復が困難と考えられる重症の左心不全に対しては、救命の可能性が高まると考えられます。横須賀市立うわまち病院でも導入を検討中で、これには施設基準がありますが、うわまち病院では、体外式補助人工心臓治療の実施施設であり、植え込み型補助人工心臓実施医が常勤で在籍し、またPCPS治療が過去3年間で20例以上と、施設基準を満たしているため、装置購入のための初期コストの問題が解決すれば導入可能です。神奈川県では近隣では、横浜市立大学が実施しせつになったので、初期の外科治療を終えて、心不全が遷延する場合は、現時点では医療連携して治療をお願いすることになります。
 初期の導入コストが、発売当初にメーカーに打診したときと比較してこの一年で三分の一になったときうことで導入が現実的になってきました。

 心不全パンデミック対策を重視している横須賀地区としては一日も早く導入したいしたいです。
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この4.0倍のルーペ、ちょ~かっこよくないすか?

2019-06-24 19:46:51 | その他




百貨店で食器などを見ているときに、偶然見つけたルーペ。筆者が手術中に使用している、カールツァイスのルーペと同じく4.0倍の倍率。しかも写真のラグジュアリーバージョン「雲錦」はルーペのシリンダーが24k金箔、フレームは本漆塗りという、しかも加賀の蒔絵師の吉田華正が描いた逸品。これをつけてOPEしたら、最高にかっこよくないすか?

残念ながらカールツァイスの焦点距離45cmと違って、この4.0倍は焦点距離15m以上という冠動脈を縫うにはちょっと難しくしてしまう可能性があります。


職場の同僚がこのスペシャルなルーペを購入して、ライブに参戦したところ、シリンダーが揺れて非常に不具合を感じたそうです。やはり、文字通り、オペラや歌舞伎など座って優雅に干渉する芸術には適しているのでしょうけど、ももクロには不向きのようです。
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僧帽弁後尖のオーグメンテーション

2019-06-24 05:21:54 | 弁膜症


オーグメンテーションとは、増強する、とか、増やすというような意味がありますが、僧帽弁手術におけるオーグメンテーション(Augumentation)とは、自己心膜を使用して、僧帽弁の弁尖の面積を増やすことによって前尖と後尖の接合をしやすくして、僧帽弁逆流を停止させる手術手技です。弁尖には異常がなく、左室拡大によって発生するTetheringの症例で、特に弁輪縫縮だけでは、後尖の左室方向に牽引される角度がより大きくなってしまい逆流が制御できない症例に特に適用されます。

このオーグメンテーション、一般には後尖の高さが低い症例に、その高さを増強するというコンセプトで実施されますが、そもそも僧帽弁後尖とは必要なのか、という議論があり、大きな前尖があれば僧帽弁の後尖は不要という考えもあります。すなわち、後尖にオーグメンテーションするよりも、前尖にオーグメンテーションするようが、確実にTetherinによる僧帽弁逆流は制御しやすいらしいです。学会でのレクチャーや書物には後尖のオーグメンテーションばかり紹介されている印象があり、まだ前尖のオーグメンテーションに関しては、認知度は低いと思います。
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