横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

心筋梗塞後のDouble Rupture

2019-06-22 12:31:20 | 心臓病の治療
急性心筋梗塞における三大機械的合併症として
①心室中隔穿孔
②乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症
③左室破裂

 これらは緊急手術が必要になる病態がほとんどで、多くの場合はそのまま経過を看ていると急速に循環動態が悪化することが多い。病態が悪化する前に手術した方が術後の回復が速いことが多く、循環が破たんしてからの手術では術後の多臓器不全に苦しむことになることが多い。
 未だ、これらの心筋梗塞後機械的合併症の救命率は50%前後と全国の統計で言われています。

 なかでもDouble Ruptureといわれている病態があり、これは上記の機械的合併症が同時に二つ以上存在する場合を指し、より重症度が高いものと考えられます。①と③、または②と③の合併がほとんどで、①と②が同時に発生する、もしくは①②③がすべて起こるというものは見たことがありませんが、より重症度が高くなると思われます。
 このDouble Ruptureは、今まで数十例の機械的合併症を診てきましたが、今まで2例でしか見たことがないので、比較的まれな病態ではないかと思います。
 それぞれの合併症に対して適切に外科的処置を行い、術後管理を行う以外に治療法はありません。

一般に心筋梗塞の死亡原因は、昔は心室細動などの不整脈が多かったのが循環器の専門施設で、特にCCU(Coronary Care Unit)でモニター管理をするようになって不整脈死は激減し、現在は心不全死がほとんどといわれています。これら機械的合併症の術後の心不全も救命が困難な場合は多々あり、また、こうした機械的合併症がない状態でも心機能が著しく低下する広範囲な心筋梗塞の場合は、未だに救命が困難な症例も存在するのは確かです。

こうした重症の症例には、IABP PCPSなどの機械的補助を積極的に導入して急性期を乗り切り、慢性期まで持っていければ救命の望みも見えてくるため、それまで「頑張る」ことが重要です。
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タバコの好ましい効果

2019-06-22 07:57:25 | その他
チェコ共和国が喫煙者による医療費の増加に歯止めをかけるためにタバコにたいする増税を検討しているのに対抗して、フィリップモリスがその国のタバコによる国家予算への影響を調査したところ、喫煙者は早死にするので、医療費や年金などの老後の社会保障費の支出が減少することになり、年間150億円もの支出が抑制できるので、結果的に国家財政に貢献しているという試算を発表したことがあるそうです。

だからタバコへの増税はする必要がない、という主旨を言いたいのでしょうけど、国民に早死にしてもらいたい、とういようなことは、誰もが受け入れられず相当な批判が起こり、その後、謝罪撤回したそうです。

現実としてタバコが多くの病気を作り出しているのは事実ですから、医療費の抑制に繋がるのは本当だと思うので、日本も他の先進国並みの値段になるまで増税して買える本数を少なくすることは社会に貢献できると思います。
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心臓外科医の手術器具を持つ角度

2019-06-22 07:47:26 | 心臓病の治療



昨今の心臓外科手術においては、より小さい創から長い特殊な器具を使用して操作することも多いため、こうした手術の手技には写真のように器具をほぼ平行に持って操作する必要があります。狭いところに、限局されたワーキングスペースのなかで、三次元的な動きで操作する、しかも、動きが加わることも多く、まさに、四次元の手術とも言えます。

最近の若手ドクターは、そうした術野をシミュレーションしたようなフィールドを作ってバーチャルに練習していることもおおく、そうした一定時間以上のoffTHEjobトレーニングも専門医取得に必要になっています。

大事なのは脇を閉めて手を左右に出来るだけ開かずに構える。まさに、武道に通じる構えです。構えを見ればどのくらいの猛者かわかる、これは、外科医にも共通するところだと思います。いわゆる、持針器の持ち方をみれば、出来る外科医かどうかわかるものです。
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