横須賀うわまち病院心臓血管外科

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Central ECMO

2019-06-28 16:30:53 | 心臓病の治療
Central ECMOとは、いわゆる静脈脱血して人工肺で酸素化した血液を動脈系に送血する循環回路において、通常は大腿静脈経由の下大静脈~右房脱血、大腿動脈送血しているのに対して、開胸して右房脱血し、上行大動脈送血する循環補助の方式をいいます。
 右房脱血することで、脱血が非常に良くなり、流量が通常の2倍以上出て、より循環補助が強力に行われることになり、また、大腿送血の場合はMixing Pointといって、酸素化された血液と、肺で酸素化が不十分なまま送血される血液が合流するポイントが、心機能が良ければ下行大動脈などになり、冠動脈や脳には酸素化不十分な血液が灌流されることになってしまう灌流不均衡の現象が起きてしまうのが、上行大動脈送血することによって冠動脈も脳も十分に酸素化された血液が灌流されるので、多臓器不全や心不全がより強力に治療されることになります。

 人工心肺とまったく同じ方式の、このCentral ECMOは開胸しての送脱血操作が必要になり、開心術後は比較的移行しやすいとはいっても、出血や感染のリスクがつきまといます。また開心術後ではない場合は新たに開胸の侵襲が加わることになります。
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膿胸術後のMID-CAB・癒着が予想される症例の左開胸低侵襲冠動脈バイパス術

2019-06-28 06:00:50 | 虚血性心疾患
 膿胸の術後といえば、石灰化した胸膜を持つ結核性胸膜炎の次に最も胸膜が肺に癒着していることが予想される状態です。これに対して、再開胸してMID-CAB(左小開胸低侵襲冠動脈バイパス術)が可能かどうか。
 実は、MID-CABは、左第5肋間で開胸し、その直下が心臓であるため、最初に肺とコンタクトするのは、心膜表面を少し剥離してからということになります。心膜をあけるだけであれば、肺が癒着していても左開胸で十分到達可能です。あとは左内胸動脈の剥離ができるかどうかです。左内胸動脈は胸郭の前面に走行しているため、その走行に沿った前面が肺と胸膜の癒着がはがせれば、採取可能です。
 経験した症例は、膿胸に対して3回の手術歴があり、肋骨も一部切除されていて、肋骨弓が離断されたままの状態となっていたため、開胸器をかけることができない症例でした。このため、通常のMedtronicの開胸器が使用できず、工夫として、胸壁にたくさんの1号絹糸をかけて、この糸を前方に牽引することで胸壁全体を釣り上げて視野を確保、不足分は腹部大動脈瘤の手術時に使用しているKondorのリトラクターを駆使して視野を確保しました。Kondor以外の、Omnitractなどのリトラクターでもいいと思います。スタビライザーにも装着部位に工夫が必要でした。
 しかし、そうした工夫が奏功すれば十分可能な手術と実感しました。
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