横須賀総合医療センター心臓血管外科

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鎖骨下動脈盗血症候群:名医の診断

2021-07-27 07:16:00 | 心臓病の治療
 鎖骨下動脈盗血症候群(Subclavian steal syndrome)は鎖骨下動脈が起始部で閉塞した場合、椎骨動脈を介して上肢の血流が環流されるため、脳に行く血流が低下して脳虚血症状が出るという病態です。鎖骨下動脈が閉塞しているとすべての患者さんに治療が必要という訳ではありませんが、閉塞側の脳還流低下が脳血流シンチグラフィーで証明されたり、(閉塞側の)脳MRIでラクナ梗塞が多い場合、手を動かすと脳虚血症状が出る、または手を動かすとだるくなる場合などが血行再建の適応となります。
 血行再建術は、カテーテル治療で成功する場合もありますが、鎖骨下動脈の閉塞は非常に硬い石灰化を伴うこともあり、万が一カテーテル治療で血管の解離や破裂が起きた場合は救命できないリスクが高いことからバイパス手術が最初から選択される場合もあります。
 バイパス手術としては、腋窩ー腋窩動脈バイパス術が開胸する必要がないため最も低侵襲で、長期成績も良好であるため多く採用されます。この血行再建のためだけに開胸して上行大動脈から腋窩動脈にバイパスすることは通常ありませんが、他の開胸が必要な病態がある場合はその同時手術として開胸での血行再建術が行われることがあります。非常にまれですが、大動脈炎症候群やShaggy aorta syndromeで腋窩ー腋窩動脈バイパスが出来ない場合に、大腿ー腋窩動脈バイパスが検討されることがあります。

 鎖骨下動脈盗血症候群の診断は、血圧の上肢の左右差で気づかれることが多いのですが、造影CTやMRAで偶然見つかるという場合もあります。先日は開業医の先生から、頸動脈エコーを行った際に椎骨動脈が逆行性に流れているので疑ったといって紹介されてきた患者さんがいて、まさに神業的な診断能力と思い、感動しました。この名医は、小磯診療所の磯崎院長先生です。
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オリンピックテレビ視聴による人流抑制・心に刻むオリンピックシーンで外出制限

2021-07-27 06:55:14 | その他
 連日のメダルラッシュ、テレビから目を離せません。日本がオリンピック期間中に金メダル取得数で世界一になることは、筆者が生まれてから今まで一瞬たりともなかったので、誰もがテレビの前で興奮しているのではないでしょうか。今までニュースでのダイジェストでしか見たことない、という人も、柔道の準々決勝、準決勝、決勝とシリーズで応援したり、卓球混合ダブルスの大逆転を連発してるまさにその瞬間をはらはらしながらテレビの前で応援することは人生における一生の思い出になるのではないでしょうか。
 筆者が最も心に残るオリンピックシーンの一つは、かつてロサンゼルスオリンピックで柔道の山下泰裕さんが、準決勝で足のけがを負いながら決勝まで勝ち上がり、決勝でインドの代表のモハメド・ラシュワンに足をひきずりながら勝利して金メダルを獲得した場面です。その試合、対戦者のラシュワンは山下の痛めた足を最後まで攻撃せず、健常なほうの足に勝負を挑んで負けたことに後悔はない、という正々堂々さにもさらに感動したことを忘れません。今でもそのシーンを思い出すと涙があふれそうになります。
 そうした感動を心に刻むシーンが無数にあるのが、オリンピックだと思います。
 皆さんの心に刻まれている思い出のシーンはどんな場面でしょうか。

 こうしたテレビの前に人をくぎ付けさせるオリンピックですが、これを新型コロナウィルスパンデミック下で無観客で決行することは、外出抑制、人流抑制によって感染を食い止める効果を期待してのことかと思います。今までリアルタイムでオリンピックをテレビで見たことがない、そうした感動を味わったことがない、という可哀そうな若者が多いようですので、是非この機会にオリンピック視聴の素晴らしさを知ってほしいです。
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