横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

MICS勉強会

2021-07-09 03:45:23 | 心臓病の治療
 自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科医局では定期的に医局内での勉強会を行っています。最近はZoomを利用したオンライン勉強会が主流となり、今年に入ってからは、EVAR/TEVAR勉強会、TAVI勉強会が行われ、毎回胸部外科学会地方会の後のタイミングで実施されたため、次回も11月6日の予定で行う予定です。筆者が幹事を仰せつかっているテーマは、MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)です。
 内容としては、医局内で主に指導的な立場で実際に臨床で行っているエキスパートに講演してもらいディスカッションするという内容で
①MICS-MVP/MVR
②MICS-AVR
③MICS-CABG
④Partial SternotomyによるMICS-AVR
⑤新規のMICS導入について
⑥MICSの施設実施状況
についてをそれぞれ15分ずつレクチャーしてもらい、それぞれについて議論するという内容を考えています。
 入局予定者等にも門戸を広げて参加者を募ることも検討したいと思っています。
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左内胸動脈と大伏在静脈で行うMICS-CABG:冠動脈外科学会2021

2021-07-09 03:43:43 | 心臓病の治療
冠動脈外科学会は今年は山口県山口市で行われる予定です。この冠動脈外科学会に横須賀市立うわまち病院心臓血管外科から演題応募したのが「左内胸動脈と大伏在静脈で行うMICS-CABG」という内容です。

 左小開胸アプローチによる多枝再建冠動脈バイパス術(MICS-CABG)は、左内胸動脈以外のグラフトをどうするか、技術的な課題が多いため普及が進まず、実施施設が限られているのが実情ですが、このMICS-CABGにおいて左内胸動脈―左前下行枝以外の血行再建における左大伏在静脈使用が確立されれば標準術式として確立できると考えられます。
 CABGにおける多枝再建症例は左内胸動脈と上行大動脈に部分遮断鉗子をかけて中枢側吻合した大伏在静脈を基本的に使用しており、右内胸動脈、右胃大網動脈の使用は症例によって検討している。当院でMICS-CABGを導入した2017年10月から2021年2月までの間に実施した冠動脈バイパス術80例のうち、MICS-CABG症例は30例(38%)で、うち、1枝バイパスが18例(60%)を占め、2枝以上の多枝バイパスが12例(40%)。多枝再建症例のうち、2枝再建7例、3枝3例、4枝1例、5枝1例。経皮的カテーテルインターベンションとのHybrid治療は2例。平均枝数は1.7枝で、同時期に行われた正中アプローチ50例の平均枝数3.3に比較して有意に少なく、術式の術中変更症例は3例。目的とするターゲットへの血行再建は全て完遂。

 この、大伏在静脈を使用したMICS-CABGの最も手技的に難しいのは中枢側吻合であり、これが安全、確実に実施できれば今後普及していく可能性が高い。もし、手技的に困難な場合の術式の変更について十分検討しておくことが重要。

以下、次週発表の抄録です。

左内胸動脈と大伏在静脈で行うMICS-CABG

【背景】左小開胸アプローチによる冠動脈バイパス術(MICS-CABG)は、左内胸動脈以外のグラフトをどうするか、技術的な課題が多いため普及が進まず、実施施設が限られている。左内胸動脈―左前下行枝以外の血行再建における左大伏在静脈使用が確立されれば標準術式として確立できる。
【目的】当施設のMICS-CABGにおける大伏在静脈グラフト使用症例について検討する。
【症例】多枝再建のグラフトは左内胸動脈と上行大動脈に部分遮断鉗子をかけて中枢側吻合した大伏在静脈を基本的とし、右内胸動脈、右胃大網動脈の使用は症例によって検討している。MICS-CABGを導入した2017年10月から2021年2月までの間に実施した冠動脈バイパス術80例のうち、MICS-CABG症例は30例(38%)であった。1枝バイパスが18例(60%)を占め、2枝以上の多枝バイパスが12例(40%)で、うち、2枝再建7例、3枝3例、4枝1例、5枝1例で、多枝再建症例の83%(10/12)で大伏在静脈を使用し、Sequential吻合で複数個所を1本のGraftで再建した症例が4例。経皮的カテーテルインターベンションとのHybrid治療は2例。平均枝数は1.7枝で、術後造影ではすべて開存が確認された。術中のConversion症例が3例あったが、目的とするターゲットへの血行再建は全て完遂した。合併症としてPafに伴う脳梗塞1例、NOMI1例、敗血症による遠隔死亡が1例あった。
【考察】大伏在静脈を使用したMICS-CABGの最も手技的に難しいのは中枢側吻合であり、これが安全、確実に実施できれば今後普及していく可能性が高い。手技的に困難な場合の創拡大やHybrid治療など方針変更について検討しておくことが重要である。
【結語】左小開胸アプローチから静脈グラフトの中枢側吻合が確立すれば血行再建のバリエーションが増えて普及が進む。

One of the limitation for the indication of CABG through left mini-thoracotomy, MICS-CABG, is the difficulty of preparation of second graft, addition to the left internal mammary artery. If the anastomosis of a great saphenous vein to the ascending aorta is safely established, MICS-CABG will be widely applied. Our facility conceive the lateral thoracotomy is a standard approach and more than 30% (30/80) of the CABG cases were operated with this approach in these three years. 60%(18/30) were single revasculization with left internal mammary artery to left anterior descending artery, and the other 40%(12/30) were multiple with the saphenous vein grafts, the right internal mammary, and the right gatroepiploic artery, which were all patent in postoperative study. Although the anastomosis to the ascending aorta through mini-thoracotomy is technically difficult, it is crucial to expand the indication for less invasive coronary surgery. The separation of the left costal arch gives an improved working space in case of poor surgical view for both of the proximal and distal anastomosis and enables the complete revasculization. This kind of inta-operative conversion should be considered in the preoperative heart team conference especially in case of the hybrid therapy with percutaneous endovascular intervention.
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MICSアプローチによるスーチャレス弁移植(Intuity)

2021-07-09 03:27:18 | 弁膜症
 縫わなくても移植できるスーチャレス弁が大動脈弁移植用に昨年から発売されていますが、これは縫合糸を大動脈弁輪にかけ、その糸の一端を人工弁の弁座にかけ、弁を弁輪の位置まで落とし込んだ後に一針一針手で、もしくはKnot pusherで結紮するという人工弁移植の一連の操作を省略できるという意味で、約15-30分の時間短縮、および一針一針の操作におけるリスクの軽減が期待できる画期的な人工弁です。
 新しい技術でもあるので、最初の症例はプロクターと言われる技術指導者からの指導のもとに実施する必要があり、エドワーズ社のIntuityは1例目、LivaNova社のPercevalは5例のプロクター指導が必要です。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科ではこの両方のスーチャレス弁をすでに実施済ですが、最近はIntuityのほうが若干多く使用しています。
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、右小開胸アプローチによるいわゆる低侵襲心臓手術を弁膜症の多くの症例、特に大動脈弁置換においては55%の症例で実施していますが、最新の手術方法としてこのスーチャレス弁によるMICS-AVR(低侵襲大動脈弁置換術)も実施しています。操作性が悪い右小開胸アプローチによる弁手術も、このスーチャレス弁を使用することで低侵襲アプローチの弱点を克服できます。このスーチャレス弁によって約30分の手術時間短縮が可能で、正中切開とそれほど時間的な差がなく人工弁置換術が可能となっています。
 このIntuityは大動脈弁輪下の左室流出路に位置するカフが広がって人工弁を固定すると同時に、印象としては左室流出路お広げる印象があり、今まで使用していたMagna弁やInspiris弁よりも弁口面積が術中の超音波画像上は広がって見え、実際に人工弁通過血流速度を測定すると、従来弁よりも低下し圧格差が少ない症例が多くなっています。人工弁の弁尖に対する負担も小さくなれば、より長期間の使用が可能になるとも考えられます。より長期の耐久性が期待できるResilia牛心膜を乗せたIntuityが一日も早く使用できるようになることを期待しています。
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