横須賀うわまち病院心臓血管外科

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感染性心内膜炎の診断・治療③

2018-03-24 09:06:27 | 心臓病の治療
 感染性心内膜炎の治療は
①抗菌薬の投与
②手術治療
の二つ。

以前は7割は抗菌薬治療で3割が手術が必要になる、と言われてきましたが、近年は手術治療の成績も向上したため、手術治療と抗菌薬治療の成績(死亡率)がほぼ同等で、手術治療のほうが脳梗塞などの細菌塊による塞栓症が少ない為、成績が結果的に良好との報告があり、積極的に手術を行う傾向にあります。

基本的に抗菌薬の投与が基本治療になりますが、
①弁の破壊による逆流などによる心不全
②塞栓症の危険
③抗菌薬の効果が不十分
などの場合は手術適応となります。

多くの手術は、人工弁置換です。大動脈弁置換や僧帽弁置換、感染して破壊された弁尖を切除し、そこに人工弁を移植することになります。
まれに、細菌塊(疣贅(ゆうぜい))のみを切除するだけのこともあります。

手術治療で問題になるのは、人工弁置換をした後に、感染組織が残っていて局所の感染が再燃・再発することです。人工弁置換した後に、局所で再燃を起こしてしまうと、人工弁の縫着部位の組織が崩れて人工弁が外れてしまう、という危険性があります。その徴候としては、超音波検査で人工弁の弁座が動揺したり、弁周囲の逆流が出現するので、術後の超音波検査でこうした検査所見がある場合は要注意です。術後に炎症所見が遷延した場合はどこかに感染巣が残存している可能性があり、それが人工弁の周囲に膿瘍を形成していないか、細菌塊が塞栓をおこし、その末梢組織に膿瘍を作っていることもあるので、全身の造影CTなどで検索が必要です。

また、感染が弁尖だけでなく、弁尖の付着部、いわゆる弁輪まで達している、もしくは弁輪を越えて広がり、その周囲に膿瘍を作っている場合は、手術自体が非常に困難になります。膿瘍の開放、その部位の修復(自己心膜や牛心膜などで修復)したり、人工血管であらたな弁輪を形成(Manouguian法=筆者は一昨年の胸部外科学会のビデオシンポジウムで手術ビデオでの症例報告しました)などして、人工弁を縫い付ける場所を新たに作成する必要があります。学会でも感染性心内膜炎の症例をいかに手術するかは毎回議論になるので、かならずそのセッションが設けられているほどです。

大動脈弁では困難ですが、僧帽弁の感染性心内膜炎の場合は、近年はできるだけ自己弁を温存する僧帽弁形成術が積極的に行われるようになってきました。筆者も、10年前はほとんど弁置換の術式を行っており、上級医師からもそのように指導を受けて来ましたが、僧帽弁形成の技術が蓄積されてきたここ数年はほとんどの症例で僧帽弁形成術で対応しています。

術後は4~6週間の抗生物質の継続が必要です。
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