NO=一酸化窒素は、血管平滑筋に作用してCyclic GMTを介して血管平滑筋を弛緩させ、血管拡張を起こす作用があるといわれています。NO吸入療法の場合、肺胞に到達したNOは、肺胞に存在する肺血管を拡張させることにより、肺動脈圧を低下させ、肺血流を改善します。もし、無気肺があったりすると、肺胞にこのNOが無気肺部分に到達できないため、酸素交換が実際に行われる、開いている肺胞にのみ到達し、ガス交換が行われている肺胞の血管がより拡張して、酸素化高率がより改善します。肺血流と換気の不均衡をこの作用によって改善=VQミスマッチの改善作用によって、より低酸素血症が改善されます。
肺塞栓症においても、肺胞レベルの肺血管が拡張して、肺高血圧が低下して、酸素化能の改善も期待できることから、NO吸入療法の適応は理論上納得のいくところですが、病態の首座が、肺血管の閉塞によるため、最終的にはこの肺動脈血栓を除去するか溶解するかで器質的閉塞を解除しない限り有効な治療手段とならない可能性があります。あくまでも肺塞栓症に対するNO吸入療法は補助的な治療といえます。
心臓血管外科領域では、大動脈解離に伴うSIRSによる急性肺障害による呼吸不全に対して効果がある、と経験されることがあります。今回の心臓血管外科学会のランチョンセミナーでも、NO吸入療法に関する講義がありましたが、実際のところ、効果が認められる症例と、認められない症例があります。大動脈解離時に発生する炎症性サイトカインが肺胞組織を攻撃して肺の間質浮腫を起こし、または肺胞への浸出液を増加させて、微小な無気肺を発生させることが病態の首座と考えられますが、この微小無気肺の蓄積が起こす低酸素血症に対して限定的な効果があるとも言えますが、どの症例に効果がありどの症例に効果がないか、というのはもう少し症例の蓄積が必要です。この炎症に対する治療として、以前は炎症性サイトカインの発生を防止するエラセターゼ阻害薬であるシベレスタット(エラスポール®)の効果が期待されていたことがありましたが、こちらも効果としては限定的でした。急性大動脈解離による急性肺障害の報告は少ないらしく、筆者が以前投稿した論文がこのランチョンセミナーに使用されたスライドの中に引用されていたのをみて、懐かしく思いました。
この領域の治療、まだまだ課題が多いといえます。
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも、NO吸入療法は県内でも一般病院としては最も早い段階で導入しており、重症の低酸素血症を呈する心臓術後症例には積極的に使用していますが、効果がみられる症例とみられない症例があるのを臨床的に感じております。稀なメトホルミン血症以外、ほとんど副作用がないことが、比較的安心して使用できる特徴でもあります。
肺塞栓症においても、肺胞レベルの肺血管が拡張して、肺高血圧が低下して、酸素化能の改善も期待できることから、NO吸入療法の適応は理論上納得のいくところですが、病態の首座が、肺血管の閉塞によるため、最終的にはこの肺動脈血栓を除去するか溶解するかで器質的閉塞を解除しない限り有効な治療手段とならない可能性があります。あくまでも肺塞栓症に対するNO吸入療法は補助的な治療といえます。
心臓血管外科領域では、大動脈解離に伴うSIRSによる急性肺障害による呼吸不全に対して効果がある、と経験されることがあります。今回の心臓血管外科学会のランチョンセミナーでも、NO吸入療法に関する講義がありましたが、実際のところ、効果が認められる症例と、認められない症例があります。大動脈解離時に発生する炎症性サイトカインが肺胞組織を攻撃して肺の間質浮腫を起こし、または肺胞への浸出液を増加させて、微小な無気肺を発生させることが病態の首座と考えられますが、この微小無気肺の蓄積が起こす低酸素血症に対して限定的な効果があるとも言えますが、どの症例に効果がありどの症例に効果がないか、というのはもう少し症例の蓄積が必要です。この炎症に対する治療として、以前は炎症性サイトカインの発生を防止するエラセターゼ阻害薬であるシベレスタット(エラスポール®)の効果が期待されていたことがありましたが、こちらも効果としては限定的でした。急性大動脈解離による急性肺障害の報告は少ないらしく、筆者が以前投稿した論文がこのランチョンセミナーに使用されたスライドの中に引用されていたのをみて、懐かしく思いました。
この領域の治療、まだまだ課題が多いといえます。
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも、NO吸入療法は県内でも一般病院としては最も早い段階で導入しており、重症の低酸素血症を呈する心臓術後症例には積極的に使用していますが、効果がみられる症例とみられない症例があるのを臨床的に感じております。稀なメトホルミン血症以外、ほとんど副作用がないことが、比較的安心して使用できる特徴でもあります。