安部公房スタジオ

2013-10-16 15:56:48 | 日記
朧げになっていた、記憶が突然蘇った。
セピア色の連絡リールが回り出した。

何故?高校生の私が安部公房スタジオの事務所のソファに座っていたのか。
当時、安部公房スタジオは会員制だった。
お小遣いやりくりして、親には内緒で、会員になっていたのだ。
数回届いたスタジオ通信。
安部公房スタジオ公演の案内だ。
渋谷山の手教会、渋谷ジャンジャンの裏。ジャンジャンの名前は知っていた。
とにかく行きたい、東京に!渋谷に!安部公房スタジオに!
高校の先輩と行くということにして、私は決行した。
狭いスタジオ公演、会員制、満員になれば入れない。
一回目は、とにかく公演時間が夜だというのに昼にはスタジオに辿り着いていた。

スタジオのドアをノックして、顔を出した誰かに、

今夜の公演のチケット下さい!

と言った。

奥でゲラゲラ笑い声がした。

チケットなんて、無いよ( ̄▽ ̄)

えぇ~?じや、私、観られないのですか?

何処から来たの!

滋賀県…

また笑声。意気消沈して、すごすご帰るしか無いのかと落胆した私。

まあ、中に入りなさいよ。

と、促され、事務所の中に入った。

ソファに座らせてもらって、周りをキョロキョロ見まわして夢のようだった。
安部公房の気配があちこちにある。

若い綺麗なお姉さんがやってきて、

あのね、チケットは無いのよ。
開演時間にいらっしゃいなさい。

え?チケット無いのですか?

そう、チケットは無いのよ、スタジオの会員さん?

はい。

だったら、開演時間にいらっしゃい、その時に会費を払えば良いのよ。

演劇を観にきたのにチケットは無い。
そんな安部公房スタジオのシステムも調べずに、問い合わせもせずに、早い者勝ちだと思い込んで田舎から早起きしてやってきた私。

まだよく理解できないのに、
そうですか、わかりましたと引き揚げた。

何をして時間を潰したか記憶に全くない。
その日の演目は
ハロルド ピンターの

ダムウェイター

狭い会場、小さなステージに、出演者は2人。

ダムウェイターとトイレの水洗の音、
何かを乗せる為にあれやこれや苦悩する2人の演技
終演後、スタッフが通路に並んで客一人一人に挨拶をしてくれた。
その中に一際美しい人、山口果林だった。
何処かで登場していたのか?

今思い出せるのはそれだけ。
安部公房には出会えなかった。

もう一回はいつ行ったのだっただろう?学生時代だろう。
安部公房にも、出会った。
安部公房と話したのはこの時は二回目。先に西武デパートのオープニング公演で、ふらふら歩いている安部公房を発見して声をかけてサインまでもらっている。

スタジオ公演のこの時の演目は
人命救助法
経緯を、これまた忘れたが、安部公房のサイン入り台本がある。







神様のように思っていた安部公房と出会うと、記憶が無くなるのかな。

幽霊はここにいる、イメージの展覧会、水中都市、仔象は死んだ
などなど、
公演会場が大きくなり、いつしかスタジオ通信も来なくなり、もう、安部公房に会えるとは思わなくなった。
自身、結婚や出産、育児で、安部公房作品に没頭する余裕も無くなっていたころに、突然の訃報。

漸く母親としては、あまり必要とされなくなり、自分の時間が持てるようになってきたこの頃である。
そんな時に出版された果林の自伝。

私が安部公房を見つけた公演の時のことも書かれていた。
舞台芸術担当の真知夫人との同行公演。
私が話し掛けたその時、安部公房は無防備に歩いていた。
何を考えていたのだろうなぁ。

果林さんの自伝のおかげで、人間安部公房を想像できるようになった。

逃げまわる作品が多いことを思う。


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泣ける(u_u)

2013-10-16 00:00:19 | 日記
実は台風の中、お醤油を買いに行っただけではなかった。
娘が骨折騒ぎを起こす前に、本屋から入荷の連絡があった本をずっと忘れていたからそれも受け取りに行きたかったのだ。

山口果林の
安部公房と私

早くから知っていたのにグズグズしていたから、本屋に行った時には完売で在庫無く、既に第4刷となっていた。
安部公房の本は古本屋廻ってまでして初版で買っていたのに。
そんなに早く売り切れるとはΣ(゜д゜lll)失敗した。

同じく安部公房の好きなギターの師匠に話したら、私が注文したあとに、なんと!小さな本屋で初版を見つけて買ったという( ̄Д ̄)ノその手があったか…>_<…

え~!え~!
センセ!私が安部公房の本は初版ばっかり持ってるといっても、初版本に興味無い、こだわらないって言ってましたよね?
私みたいなミーハーではないと!
交換して下さいよ~( ̄Д ̄)ノ

師曰く

嫌だね~( *`ω´)

けっ!けっ!ふんだふんだ(-_-#)

暫くしたら古本屋に行こう。

泣けたのはそのせいじゃない。

果林さんの話に泣けたのだ。以下、多少ネタばれあり。
私が安部公房の箱男にはまったのが15歳、果林さんが安部公房と知りあったのが18歳。

私が思い描いていた安部公房とは全く違う安部公房との秘話。
安部の死後20年経過してようやく真実が世に出たのだ。
よくぞ書いて下さった。

あまりに早い、突然の死、そこに何があったのか、
それから、私が見た果林さんのあの美しさの意味、

今夜はもったいないから、ざっと読んだだけ。それでも泣けた。
私が安部公房を最後に見た箱根の別荘、あの場所で、穏やかに語っていた安部のこころの傍らには、果林さんがいたのだ。

ほろりほろり、

クールでブラックな安部でない、賢くて美しい果林に惚れきっていた安部を知った。
薄々感じていたけれど、いつも真知夫人がいたし、そこまで想像するのはやめておこうと思っていた。
ノーベル賞取るにはスキャンダルは御法度だったのか。

天才に愛された果林の、なんで?と思う苦労。

安部公房を卒業した新たな山口果林に逢いたい。
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