はせがわクリニック奮闘記

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岩田健太郎・感染症は実在しない

2014年04月09日 | 読書


不思議な本です。
さらに、読み終えた後に、作者のプロフィールを確認して驚きました。
その大人びて洗練された文章から、私よりも少しは先輩の先生の著書だろうと、疑うことなく想像して読み終えたのですが、
著者の岩田健太郎氏は私よりも20歳年下だったのです。

この作品は半分は医学書ですが、もう半分は哲学書に近いと思われます。

まずは結核という病気が例として取り上げられます。
現在世界中の人口の3分の1は、結核菌の保菌者なのだそうですが、実際に発症している人は、ごく少数です。
さて、最近のアメリカでは、保菌者にも投薬して、結核を完全に撲滅しようとする動きが出てきたそうです。
そこで保菌者と呼ぶのをやめて、潜伏結核と名付けたのです。
もともと結核は、原因も分からずに、咳が続いて、やせていき、やがては喀血して死んでいくという現象(コト)でした。
そういう症状で死に至るコトを結核と呼んだのです。
その後、結核菌が発見されます。
そこで、結核菌を持っていることが、培養やレントゲンやCTで証明された人に結核という病名が与えられたのです。
しかし保菌者では、そのような証明はなされません。
証明された瞬間に保菌者ではなく、結核患者になってしまうからです。
せいぜいツベルクリン反応の結果から推定するしかないのでしょうが、その線引きも国によってバラバラです。
つい最近まで、結核ではないとされてきた人たちが、いきなり潜伏結核という病名を頂戴することになるのです。
このようなことから、結核をモノでは無く、そのようなコトとしてとらえたほうが分かりやすいのかも知れません。

10年間で脳卒中になる人が100人中5人いたとしましょう。
ある薬を全員に10年間投与して、脳卒中患者が1人しか発生しなかったとすれば、
脳卒中になるはずであった5人のうちの4人を救ったことになりますので有効率は80%と表記されます。
しかし母数の100人から考えると脳卒中を4%しか下げていません。
また別の見方をすれば、この薬を飲まなくても、10年間で95人は脳卒中を発症しません。
しかし、この薬を10年間飲み続ければ、99人は脳卒中になりませんよということなのです。
さらに見方を変えれば、100人治療して4人が助かるわけですから、25人治療してやっと1人が恩恵を受けるという計算になります。

私が100人の中に入っていたとするならば、また何らかの症状に苦しんでいなかったとすれば、
その薬を10年間も飲み続ける可能性はゼロでしょう。
しかし、これは患者自身が、それぞれの異なる人生観を踏まえて決定するべき事柄でしょう。


実は、この読書感想文を書き始めてすでに3日間が経過しております。
作品自体がとりとめのない話の連続で、この逸話が特に面白いという物も見当たりません。
しかし、医師にとってはとても読み応えのある作品です。
読後感はとても良いのですが、その良さをうまく説明することは非常に困難です。
申し訳ありませんが、ギブアップさせていただきます!スミマセン....